キャッシュレス決済を複数併用すると、使いにくい
――給与デジタル払いに関する知識のテスト結果が興味深いです。自信を持って「内容を理解している」と答えた人の全問正解率が3.2%とは、かなり低い結果なのでは。知識や理解は広まっているのでしょうか。
調査担当者 たしかに、たった4問の全問正答率が3.2%と低いように感じられます。しかし、最も正答率が低い「一般的にPayPayはすでにサービスを開始している」(正答率14.9%)以外は、すべて過半数を超えた正答率なので、広まっているとみてよいと考えます。
PayPayに関しては、9月からソフトバンクグループ向けにサービスを開始しているので、まだ「一般向けサービス開始」とは言えませんが、そのニュースを目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
――まだ「利用したい」人が「利用したくない」人の3分の1以下という結果ですが、それぞれの理由については率直にどう分析しますか。
調査担当者 利用したい理由で特に目立ったのが、「キャッシュレス化が進んでいる」や「現金を引き出す必要がなくなる」など、お金の持ち歩き自体が減少していることを示唆する内容です。
一方、利用したくない理由では、トップに「セキュリティーが不安だから」が挙げられました。キャッシュレス決済比率が年々増加し、少額だから決済アプリを利用している声も多いのかもしれませんが、給与をすべてデジタル払いで受け取るにはセキュリティー面でまだ課題があることがわかります。
また、サービスを1つに絞らずに複数併用している場合は、給与デジタル払いの利用を控えることも考えられます。
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数時間単位で働く、1回限りの「スポットワーク」に使えるサービス
――なるほど。1つのサービスに給与がデジタル払いされると、ほかのサービスで使いづらくなると心配しているのですね。第1号のPayPayに続き、複数の事業者が申請中ですが、給与デジタル払いの動きは今後広がるでしょうか。
調査担当者 現在、通信各社が金融サービスを提供し、経済圏の囲い込み競争が激しくなっています。給与デジタル払いも決済サービスを1つ選べば確実に利用されるため、囲い込みしやすくなるでしょう。
また、給与デジタル払いは、近年広がりを見せている「スポットワーク」との親和性が高いと言われています。
スポットワークは若者からシニアにも人気の「数時間単位で働く、1回限りのアルバイト」です。企業や店舗は、人手がほしい時間帯にピンポイントで求人を出します。
働く人は、自分の空き時間にできる仕事をアプリ上で選び、雇用契約を結ぶ仕組みです。働いてすぐにお金がほしいという利用者に対し、24時間いつでも入金される給与デジタル払いがあるのは魅力的に思う人も多いでしょう。
――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。
調査担当者 給与デジタル払いは、キャッシュレス推進にはよいサービスとも言えますが、事業者・労働者ともに、メリット、デメリットを理解して利用することで、双方の働きやすい環境づくりにもよいサービスとなりえます。今後の動きにも注目していきます。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)