「放置年金」という言葉を聞いたことはありますか?近年、転職や早期退職が増加する中で、企業型確定拠出年金(企業型DC)などの年金資産を放置してしまう人が増えています。放置したままにしておくと、本来受け取れるはずの年金が減ってしまったり、手数料がかかってしまったり、最悪の場合60歳になっても受け取れなくなったりする可能性があります。
「まさか私が」と安心しているあなたも、放置年金の危険性を理解し適切な対策を講じる必要があります。この記事では、2800億円ともいわれる放置年金の現状や放置してしまう原因、そして放置しておくとどうなるのかなど具体的な対処法まで詳しく解説していきます。
2800億円ともいわれる放置年金の現状
問題点
【画像出典元】「stock.adobe.com/The KonG」
年金には国民年金や厚生年金とは別に、企業などが独自に運用する「企業年金」という制度があります。その中でも自分で運用方法を選択できる「企業型確定拠出年金(企業型DC)」という制度で、年金が放置されているケースが増加しています。
国民年金基金連合会によると、2023年度末時点で企業型確定拠出年金の加入者本人と連絡が取れず、放置されている年金はなんと約2800億円(2022年度末)にも上ると試算されています。
参照:国民年基金連合会「社会保障審議会企業年金・個人年金部会ヒアリング資料」
企業型確定拠出年金は、資格喪失後(退職日の翌日)何も手続きを行わなかった場合、6カ月以上経つ年金資産は自動的に国民年金基金連合会に移換されます。そして移換されてしまうと、資産運用できないばかりでなく管理手数料を負担しなければいけません。
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転職・退職時が要注意!放置年金になってしまう原因は?
なぜ、これほど多くの年金が放置されてしまうのでしょうか?主な理由は、転職や退職時に必要な手続きを忘れてしまうケースが多いからです。
従来型の企業年金である「企業型確定給付年金」や「中小企業退職金共済制度(中退共)」は金融機関や国が運用を行い、あらかじめ定められた給付額を受け取れる制度です。退職時に企業が年金の手続きを行ってくれるため、加入者が特に気にする必要はありません。
これに対し企業型確定拠出年金は、企業が拠出した掛金を加入者である個人が自ら運用して、その成果に応じて将来の給付額が決まる制度です。退職時には加入者自身で手続きを行わないと年金資産が自動的に次の勤務先に引き継がれたり、個人の年金口座に移管されることはありません。そのために転職を繰り返したり、退職後に手続きを忘れてしまったりすると、自分の年金資産がどこにあるのか分からなくなってしまうのです。
手続き自体は複雑ではありませんが、転職や引っ越しで忙しい時期と重なることや、必要な書類が手元にない場合もあるため、ついつい後回しにしてしまいがちです。加入者自身が退職後に手続きをしないことが、放置年金が多発する原因の一つとなっています。