自宅で一人亡くなり、誰にも気づかれずに数日たってから発見される「孤独死」。これまで高齢者の問題とされてきたが、20・30代の「まだこれから」の世代も孤独に命を絶っている。若者たちは何に絶望し、この世を去ってしまうのか。セルフネグレクトに陥り、死と直面している人々に話を聞いてみた。
◆危うさを抱きシェルターへ。「普通に生きるのが難しい」
藤堂莉奈さん(仮名)35歳・休職中
「もう生きてたくないんです」
涙ながらにこう打ち明けるのは、都内在住の藤堂莉奈さん(仮名・35歳)。持病で双極性障害を抱えているものの、彼女が死にたいと願うようになった原因は、恵まれなかった人間関係の影響が強い。
「高校時代に母の精神が壊れ、『産まなきゃよかった』と言われたんです。そんな親から逃げるために18歳で上京。製本工場で働いたんですが、ある晩、寮の部屋の上の階に住んでた同僚の男性が私の部屋のベランダに下りてきて、窓を開けるといきなり股間を触られて……。自分は異性にモノのように扱われる存在なんだと絶望し、仕事も休みがちになりました」
その後は10社以上を転々としたが、不当な扱いは続いた。
「『キモい』『このグズ』とモラハラを受けたり、『一度教えたことは自分でやれ』といった放任主義の職場に当たることが多くて。そのたびに鬱になり、セルフネグレクト状態になることの繰り返し。今は休職して、死にたい気持ちを抱えて駆け込んだ民間のシェルターに住んでますが、ゴミは月一しか捨てられず、衛生状態の悪さから目が覚めたら口元に黒い虫がついていたことも。ネットの交流はあっても、頻繁に連絡してそれでも嫌われないか“試し行動”をしてしまい、10人は友達を失ってます」
◆生きたくないけど、一人で死ぬのは嫌
現在、莉奈さんが住んでいる施設では、管理人が月に一度、家賃回収に部屋を訪れるというが、それ以外の人との接触はほぼないという。
「もう一人で死ぬことは受け入れていて、近所の空き家で干からびたいなとか、次の心療内科の診察で睡眠薬をもらって一気に飲んじゃおうなんて想像ばかりしています。でも一方で、いざ孤独なままこの世から消えるのは、絶対にツラいだろうとも想像できる。普通に生きるのが難しい人が、誰かに看取られて死ねる制度があればな、と」
生きたくないけど、一人で死ぬのは嫌。そんな思いの若者は少なくないかもしれない。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[[若者の孤独死]知られざる実情]―