「餃子の王将」会員カード110万人、ロイヤルカスタマー獲得戦略が成功
――中華料理店がラーメン店より強くなった理由に、2010年までは倒産がラーメン店より多かったが、メディアで中華料理が取り上げられ、四川料理や町中華人気が高まったからとありました。しかし、家族で行けるファミリー食堂的な要素が一番大きいのではないでしょうか。
櫻井浩樹さん ラーメン店は、ラーメン1杯と水だけで済ます層が多いです。一人客が多く、客回転が速いことが特徴としてあげられます。一方、ご指摘の通り、中華料理店は多彩なメニューがあり、家族などで利用する場合は、中華料理店のほうが行きやすいと思います。
中華料理店は、人気が高まったことに加え、家族でも入りやすい、コスト高を材料配分の変更で対応しやすい、お酒などのドリンクやサイドメニューで売上を確保しやすい、などの利点があり、ラーメン店と比べて付加価値が高い(利益率がよい)優位性があります。
また、昔からの古いお店が街には多くあり、家賃・地代の負担が軽いことも倒産件数の差となって表れたと思います。ただ、こうしたメリットも、後継者問題が出てくると喜んでばかりではいられなくなります。
――「餃子の王将」とか「日高屋」といった中華料理の巨大チェーン店が好調な理由は、ズバリ何でしょうか。
櫻井浩樹さん 餃子の王将や、日高屋などのチェーン店は、ラーメンの販売だけではなく、季節限定品やサイドメニューなどの多様なメニューを取り揃えています。豊富なメニューによって、いわゆる「ちょい飲み」需要にも応えています。また、どこの店でも同じメニュー、同じ価格(割安感)という安心感があり、消費者から支持されているのでないでしょうか。
戦略的な販売促進策も進めています。たとえば、餃子の王将では会員カードの「ぎょうざ倶楽部」の会員数が最近、109万4000人と過去最高を更新。会計で5%割引、7%割引に加え、次回使える税込100円割引券・250円割引券、オリジナル限定グッズがもらえるキャンペーンもあります。
こうした施策で、ロイヤルカスタマーを獲得し、業績に寄与しているとも考えられます。
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客が何度も足を運ぶのは結局「味」 「愛嬌」「入店のしやすさ」も大切
――今後、ラーメン店が生き残るにはどんな工夫が必要だと思いますか。
櫻井浩樹さん ラーメン店の生き残りには、味や価格、盛り付けなどによる差別化や、運営の効率化が不可欠です。差別化という点では、味やメニューに独自性を出したり、専門性を高めて特定のターゲット層にフォーカスしたりすることも必要でしょう。
また、店舗運営の効率化では、日高屋はタッチパネル式オーダー、配膳ロボットの導入推進などに力をいれており、話題性と同時に少人数でも運営できる店づくりを進めています。
ただ、客が何度も足を運ぶのは、結局「味」です。それと極めて曖昧ですが、「愛嬌」や「入店のしやすさ」という面も無視できません。美味しくても愛想がない、怒鳴り声が聞こえるような店には足が遠のきます。
ラーメンは身近な国民食であるだけに、そこには家族が楽しんで食事できる優しい雰囲気も必要と思います。
――なるほど。今回の調査で特に指摘しておきたいことがありますか。
櫻井浩樹さん ラーメン店は、テレビや雑誌などで取り上げられるような高級店や、贅沢な食材を乗せたお店もありますが、基本は安心して食べられるお店にお客の足は向きます。ブームに左右されない味と値段を突き詰めることが必要です。
ただ、光熱費などのコストアップをどのように吸収するか。コストダウンには限界があり、そこがお客の納得する価格との勝負になると思います。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)