欲望、憧れ、葛藤、矛盾。さらには時代のムーブメントに至るまで、多様な表現を繰り広げているファッション。
着る人や作り手に潜む〝人間の本能〟を深掘ります。
ファッションに宿る我々の情熱は
まさに「LOVE」と呼ぶにふさわしい
ファッションには、人々の願望や情熱があふれています。
贅を尽くした豪華な宮廷服に、一夜限りのパーティーやイベントに着る派手で奇抜な衣装。
そんな非日常の装いでなくても、お気に入りの服を着たい、あの人のようになりたい、いつもの服でリラックスしたい、と普段から私たちは着ることに思いを重ねます。
本展では、こうした私たちの願望や憧れをファッションに対する「LOVE」ととらえて、その多様なかたちを考えていきます。
主な出展品は、KCIが所蔵する18世紀から現代までの多種多彩な衣装作品。希少な素材や高度な職人技で作られたドレスや着用者の個性が表れる現代のデザインなど、着る人、作る人のLOVEを感じる服が登場します。
また、アート作品や文学作品を通じて、そうしたファッションに身を包みながら、さまざまな願望と葛藤を抱えて生きている〈私〉にも焦点を当てていきます。
ファッションのLOVEがもっとも表れている出展品のひとつとして挙げられるのは、32体のテディ・ベアを縫い留めたコート。
人は長らく毛皮を服の素材に用いてきましたが、必需品から贅沢品へと移り変わる中で、毛皮の代用品として多様なフェイク・ファーの素材が開発されます。自然動物の乱獲も問題視され、その品質は今や本物を超える勢いです。
愛らしいフェイク・ファーのテディ・ベアたちの目には、動物愛護を訴えつつも毛皮のぬくもりを忘れられないでいる私たちの姿が映っています。
トップ掲載作品:J・C・ド・カステルバジャック/ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック コート 1988年秋冬 ©京都服飾文化研究財団 撮影:来田猛
教えてくれたのは・・・
京都服飾文化研究財団
キュレーター
石関 亮さん
京都大学大学院修士課程修了。2001年より京都服飾文化研究財団(KCI)に勤務。学芸課に所属し、現在は学芸課課長を兼務。研究誌『Fashion Talks…』編集、現代ファッションを担当。『ドレス・コード?──着る人たちのゲーム』展(京都国立近代美術館ほか、2019年)にて、共同企画者と共に第15回西洋美術振興財団賞学術賞を受賞。
『LOVE ファッション ─私を着がえるとき』
場所: 京都国立近代美術館(京都府)
開催:開催中〜11月24日(日)
開館 : 10:00〜18:00(毎週金曜は20:00まで。入館は閉館の30分前まで)
閉館 :月曜日※ただし祝日の場合は開館。翌火曜日休館
075-761-4111
(広告の後にも続きます)
こちらの展覧会にも注目!
企画展『ゴミうんち展』
ありとあらゆるものが循環する世界において、目を背けられてきたゴミやうんち。
本展では、身の回りから宇宙までを見渡し、そこに存在するさまざまな「ゴミうんち」を新たな視点・概念で考察。
真摯に向き合おうとすることで、社会問題だけではない新しい側面が見えてくるはず。
開催中〜2025年2月16日(日)
21_21 DESIGN SIGHT(東京都)
https://www.2121designsight.jp/program/pooploop/
『美しい春画 ― 北斎・歌麿、交歓の競艶 ―』
大名から庶民まで、貴賤・性別を問わず親しまれた春画。版画や版本に加え、1点もので価値の高い「肉筆春画」に焦点を当て、これまでその存在を知られながらも展示が叶わなかった作品を中心に紹介する。1976年にパリで展示されて以来、日本の美術館では初の展示となる葛飾北斎の『肉筆浪千鳥』など、数々の名品もお目見え。
※18歳未満は入場禁止
開催中〜11月24日(日)細見美術館(京都府)