喜びと悲しみ、寂しさややるせなさ。
家族とともに分かち合う時間と感情を鮮やかに描き出し、深く心に刻まれる珠玉の作品が揃った。
『西湖畔(せいこはん)に生きる』
©Hangzhou Enlightenment Films Co.,Ltd.
仏教故事にインスパイアされた母を救い出そうとする息子の物語
龍井(ロンジン)茶の生産地として知られる、杭州市の西湖。苔タイホア花は夫が家を出て以来、茶摘みをしてひとり息子の目ムーリエン蓮を育て上げた。
ある理由をきっかけに茶畑での仕事を失った彼女は、マルチ商法の闇へと引きずり込まれてしまう。
絵巻物のような映像で脚光を浴びた『春江水暖〜しゅんこうすいだん〜』のグー・シャオガン監督が、人気俳優のウー・レイとジアン・チンチンを迎え、仏教古事にインスパイアされたという最新作が届いた。
思わず息を飲むほど流麗にダイナミックに切り取られた変わらない景色と、変わりゆく市井の人々の現代の暮らし。自立や幸福を求めた末に狂気の淵に立った母親を、どうにかして救い出したい。
泥の中で咲く蓮の花のように、苦しみながらもひとつの決断を下す息子の思いが胸をしめつける。
監督:グー・シャオガン
出演:ウー・レイ、ジアン・チンチン
新宿シネマカリテほか全国公開中
(広告の後にも続きます)
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
聞こえる世界に生きる息子の葛藤と
聞こえない世界に生きる母の愛情
宮城県の港町で、耳が聞こえない両親と、破天荒な祖父と祖母と育った大。
愛情を受けて無邪気な子供時代を過ごした大はやがて、自分の両親が周りとは違うことに気づいて葛藤を抱えるようになる。
コーダとして生まれ育った小説家、エッセイストの五十嵐大の原作を、『そこのみにて光輝く』など家族の物語を紡ぎ出してきた呉美保監督が映画化。
吉沢亮が手話を学び、自身のアイデンティティを模索しながらふたつの世界で生きる主人公の揺れと成長を見事に体現している。
思春期を迎えて悩みは深くなるばかりなのに、母親の朗らかさと息子への愛情は変わらない。この映画はろう者の日常を描きながらも世界中のどこにでもいる親子の風景を見つめた作品であり、愛された子供の記録でもある。
笑いと涙にあふれたハンカチ必携の感動作。
監督:呉美保
出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、烏丸せつこ、でんでん
新宿ピカデリーほか全国公開中