積極的に相手を知る――「質問」

指導の場面では、「質問」をうまく使うことで、新人の理解度を的確に把握することができます。

質問は、単にわからないことを聞くためだけの手段ではありません。テーマに興味をもたせたり、自分で考えさせたり、相手の状態を知るなどの目的もあります。話し方や傾聴のスキルとあわせて活用することが大切です。

質問の目的に応じて、発問のパターンにもさまざまなものがあります。ワンパターンにならないよう、場面や相手の理解度に応じて質問の仕方を変えていくとよいでしょう。

以下、質問する際の留意点をまとめておきます。

留意点① 相手が答えられる質問をする

正しく答えられるかどうかは別にして、相手が経験している範囲で答えられる質問に限ることが大事です。新人ですから、答えられないことで、人によっては自信をなくすこともあります。特に、集団のなかで質問をするときには経験をしている内容を確認しながら質問するように注意しましょう。

たとえば、「電話応対の基本的な受け答えについては、入社時の研修でやってみましたね(確認)。実際に職場ではどのくらい電話応対をしてみましたか?」

留意点② 明快な表現にする

意味のつかみにくい質問は避けます。

たとえば、「今の仕事はどう?」という質問をされても、「やりがいを感じているかどうか」を聞いているのか、「困っていることはないか」を聞いているのか、相手は困ってしまいます。何を聞こうとしているのか、相手がわかる質問を心がけるようにしましょう。

留意点③ 質問のレベルを考える

やさしすぎる質問は、その裏に別の意図があるのではないかと、警戒心をもたれることがあります。逆に、難しすぎる質問は、相手との心理的距離をつくることになり、興味をなくしてしまうおそれがあります。相手の理解度の確認のために、質問として、やさしいか難しいかを聞いてみることも必要でしょう。

留意点④ 「どう思う?」は濫用しない

「どう思う?」という質問は、そのときどきの新人の気持ちや意思を確認するために有効ですが、一方で、答えがばらつきやすい質問でもあります。

相手が本題に集中していないときは、答えが主旨からはずれる危険もありますから、濫用しないように注意しましょう。

留意点⑤ 質問は1回に1つの内容

質問をするときは、1回の質問に1つの内容というのが原則です。答を待ってからつぎの質問に進みましょう。

あれもこれもと質問を浴びせても、質問された側は何を答えればよいのかわからなくなり、頭を混乱させるだけになってしまいます。

留意点⑥ イエス・ノーで終わらない

「イエス・ノー」の選択式の質問は、相手にとってもっとも答えやすい質問です。たとえば、「この作業が、なぜ大切だと思う?」のような質問だと難しくて答えられない場合もあるので、まず「イエス・ノー」で答えられる質問をすることも大切です。

ただし、「イエス・ノー」だけでは考えが深まりませんし、質問自体の意義も薄れてしまいます。相手に考える習慣をつけさせるためには、「どうして、イエスなの?」といった答えの理由を続けて質問することが大切です。

JMAM「基本能力研究会」