旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.=スマイルアップ)の創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害問題をめぐって、2024年9月に解散した「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の元メンバーである志賀泰伸さん、長渡康二さん、中村一也さんが24年10月9日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見を開き、遺族の手紙を代読した。この遺族の手紙の内容と旧ジャニーズ側の発言で食い違いが表面化している。
具体的には、23年2月、スマイル社の東山紀之社長がBBCの取材を受けた際「遺族の方と連絡を取らせてもらっています」と発言したが、遺族は「1度もお会いしたこともお話ししたことも謝罪を受けたこともありません」と手紙の中で否定している。
同社は公式サイトで経緯を説明し、J-CASTニュースの取材にも応じた。遺族は手紙の中で、東山氏が「子どもの頃に辛いことを経験するのは成長の糧」と述べたとして、「辛い経験が成長の糧になるという発言はおかしいと思います」と批判している。スマイル社は「BBCの取材において、そのような発言をした事実はございません」としている。
「辛い経験が成長の糧になるという発言はおかしいと思います」
会見中、中村さんが、山中で死亡していたと23年11月に報道された元メンバー男性の遺族の手紙を代読。遺族は手紙の中で「ジャニーズ事務所は被害者に寄り添っている風に見せかけて自分たちの保身しか考えていないように思います」と批判した。
さらに、次のように訴えた。
「BBCでも東山(紀之)さんが『遺族の方と連絡を取らせてもらっています。小さなお子様もいらっしゃるということで』と語られていましたが、1度もお会いしたこともお話ししたことも謝罪を受けたこともありません。『小さなお子様』ではなく東山さんの娘さんと同世代の思春期の子どもです。『子どもの頃に辛いことを経験するのは成長の糧になると僕は思っています』と話されていましたが、子どもの頃の性被害で今も苦しんでいる人が多い中、辛い経験が成長の糧になるという発言はおかしいと思います。救済する立場としてもう少し配慮ある言葉にしてほしいです」
東山氏は24年2月、BBCの取材を受けた。記者から「サバイバーが被害を公表したところ世間の大勢からうそつき呼ばわりされオンラインで誹謗中傷されその結果自死された方がいるのはご承知と思います。その方の遺族とは連絡をとっていますか」と問われると、次のように答えていた。
「取らさせていただきました。これは僕にとっても大変つらく悲しいことでもありましたし、お子さんもいらっしゃったということなので、その気持ちは大変重く受け止めてはいます」
遺族が主張した「小さなお子様」がいるという発言や「子どもの頃に辛いことを経験するのは成長の糧になると僕は思っています」という発言は、放送された番組からは確認できなかった。
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「故人からの生前の連絡を弊社が放置したとの報道」に反論
スマイル社は10月10日、公式サイトで「日本記者クラブでの記者会見について」と題する見解を発表。会見について「一部誤解等を与えうる内容」があるとした。発表によると、23年10月19日、死亡した男性の代理人弁護士から訃報の連絡を受けた。同日中に同社代理人弁護士から、死亡した男性の弁護士に対して、東山氏と藤島ジュリー景子元代表取締役からお悔やみ・謝罪の文書を遺族に渡したという。なお、死亡した男性の弁護士からは、遺族への直接の接触を控えてほしい旨の依頼があり、代理人弁護士を通じて、お悔やみ・謝罪の文書を渡したという。
「故人からの生前の連絡を弊社が放置したとの報道」に対する反論も展開されている。具体的には、被害者救済委員会から2回、心のケア相談窓口からも2回の計4回にわたって生前の男性に連絡したことを、遺族側の弁護士に説明。自動返信メールではないことを示すために、被害者救済委員会が送信したメールの現物も示したという。
スマイル社の広報担当者は11日、J-CASTニュースの取材にも応じた。被害者救済委員会が送信したメールの現物について、遺族側の弁護士は「今年3月に報道機関にご自身で説明されたと聞いております」とした上で、「これ以上の詳細につきましては、プライバシーに関する事項であるため回答は控えさせていただきます」とした。