愛するペットは、まさに家族の一員。しかし、年齢を重ねるにつれて「最後まで自分で世話ができるだろうか?」と心配になる方も多いのではないでしょうか。特にお金の問題で、信頼できる家族に任せたとしても、ペットによっては年間数十万円、老齢であればその他医療費などにより高額な準備金が必要となり、家族の状況によっては相続放棄されてしまう事態にもなりかねません。本記事では、ペットの未来を安心して任せられるように、今からできる具体的な対策について、外資系金融機関に12年勤務し、その在籍中に日本初のペットの看取りサービスを開発した藤野善孝氏が解説します。

犬や猫などのペットは相続の対象となる?…遺産相続は可能か

犬や猫などのペットは、法律的解釈では「動産」になりますので、相続財産として扱われます。そのため、遺産相続の対象になります。皆さんもご存じの通り、相続財産には、「プラスの財産」と「マイナスの財産」があり、その「プラスの財産」と「マイナスの財産」を合算して、全体の相続財産を評価するのですが、一般的にペットを評価する際は「評価ゼロ」として扱われます。

ここで問題になるのが、ペットをスムーズに遺産分割できるのか?ということです。被相続人と相続人が同居していた場合は比較的スムーズに進むと思いますが、そうでない場合はどうでしょうか? 飼育環境の問題、住宅環境の問題、動物アレルギーの問題、そして飼育費の問題。様々な問題が噴出してきます。

さらに、平成25年に施行された「改正動物愛護管理法」において、ペット飼養者に対して「終生飼養」を義務化する文言が追加されました。これは、犬や猫などのペットを一旦迎え入れた場合、その個体の面倒を生涯に渡り、見届けなくてはならないというものです。

「終生飼養」という文言が追加された背景としては、一時的な感情により、安易にペット達を迎え入れてしまい、ペット達と生活していく中で、その感情が冷めてしまい、飼主の一方的な都合により保健所へ持ち込まれた結果、犬猫の殺処分が年々増えていたという社会背景があります。

犬や猫などのペット達は、法律的には「動産(物)」として扱われますが、「終生飼養」を義務化したことにより、飼い主の「命」に対する責任を明確にしたのではないかと思います。

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遺言書でペットを引き渡すことは可能? 相続放棄された場合は

冒頭で説明した通り、犬や猫などのペットは「動産」という財産なので、遺言書を活用して、ペット達を引き渡すことは可能です。しかし、遺言書にペット達の引き渡し先を明記するだけで、本当に大丈夫なのでしょうか? そこには様々な落とし穴が潜んでいます。

遺言書は遺贈者(財産を与える人)からの一方的なメッセージですので、そのメッセージを受け取った方達は、有難く受け取ることもできますし、逆に放棄することもできます。

相続財産には「プラスの財産」と「マイナスの財産」があります。「プラスの財産」だけ貰えるならば、これほど有難いことはないのですが、もし「マイナスの財産」だけを遺されたら、受け取る側にしたら、正直、迷惑極まりない話ですよね。このことから、相続人や受遺者は財産を放棄することができるようになっています。

それでは、遺言書で「ペットの引き渡し先」を明記していたにも関わらず、その「ペットの引き渡し先」が放棄したら、行き場がなくなったペット達はどうなるのでしょうか? この場合、大半は保健所へ収容されることになります。その後、民間の動物愛護団体や里親ボランティアが譲渡先(里親)を探す協力をしてくれますが、譲渡先が見つからない場合は、保健所にて殺処分されてしまいます。

また、遺言書通りに「ペットの引き渡し先」がペット達を相続したとしても、そこにペット達に対する愛情が無ければ、そのペット達を保健所に持ち込んでしまうケースも少なくありません。

まさにこれが、遺言書の落とし穴です。それでは、このような最悪の事態を回避するには、どのようにしたら良いのでしょうか? それは、飼い主亡き後のペット達の面倒を看てくれる方を遺言書に明記し、さらに、その方と「死因贈与契約書」の締結をすることです。

この「死因贈与契約書」とは、飼主が亡くなったら、ペット達の面倒を看てくれる方にペット達を贈与するという契約です。贈与契約は遺言書と違い、双方同意の契約なので、放棄をすることはできません。また、遺言書内で、ペット達の飼育費も一緒に遺贈することを明記しておけば、ペット達の面倒を看てくれる方の負担が減り、より安心してペット達を託すことができるでしょう。