リタイア後の生活が現実味を帯び始める「50歳代」。この期間をムダにしないことが、残りの人生を豊かにするための大きなポイントです。本記事では、ファイナンシャルプランナー菱田雅生氏の著書、『お金のトリセツ100』(経済法令研究会)から一部を抜粋・編集し、50歳代からの資産形成で押さえるべきポイントについて解説します。
50歳代からの資産形成のポイント
■老後資金準備のラストスパート期間
50歳代にもなると、リタイア後の生活が現実のものとして近づいてきた感じがします。50歳代歳前半だと、「まだ10年以上ある」と思う人も多いかもしれませんが、「あと10年ちょっとしかない」と思う人もいることでしょう。
実際に私も54歳になり、還暦(60歳)まで、たった6年しかないと感じるようにもなりました。まだまだ気持ちは若いつもりでいますが、“いい歳のオッサン”であることは間違いないのでしょうね。
そんな私と同世代の50歳代からの資産形成は、60歳代が近づいている分だけ、現役生活が短くなってきていることを意識しつつ、その短い現役生活の期間が、残りの人生をより豊かにしていくためのラストスパートの期間になりますので、ムダにしないようにしましょう。
■リタイア後の家計収支も意識
平均余命をみると、50歳代男性が30年前後、50歳代女性が35年前後の残りの人生があります[図表1]。
それに対して、現役の期間は残り10年前後まで短くなっているわけですから、きちんと考えながら準備することが大切です。
子どもたちが社会人になると、教育費負担の終了によって家計にゆとりが生まれるはずです。そこで気を緩めて浪費を増やしてしまうと、リタイア後に家計をダウンサイジングするのが厳しくなります。
したがって、現役のうちからリタイア後の家計収支をイメージし、少しずつ家計のスリム化を図っていくのがベターでしょう。あらためて家計を見直して支出を抑えられれば、その分、老後資金準備のラストスパートにあてられます。
現役生活の終盤を楽しみたい気持ちもわかりますが、リタイア後のゆとりを優先する気持ちも大切でしょう。
【知っトク!】簡易生命表と完全生命表
毎年、厚生労働省が出しているのは「簡易生命表」ですが、5年に1度だけ、「完全生命表」というものを公表します。簡易生命表は、推計人口や人口動態統計(概数)から算出したもので、完全生命表は5年ごとの国勢調査の結果(確定数)をもとに算出したものとなっています。つまり、簡易生命表は推計値、完全生命表は確定値です。
(広告の後にも続きます)
50歳代のポートフォリオ例
■リスク許容度は人によってかなり違う?
50歳代の人のリスク許容度(値動きによる資産の増減リスクを取れる度合い)は、40歳代以上に、人それぞれの違いが大きくなっていることが予想できます。
50歳代でも、まだ子どもが小中学生という人もいるでしょうし、すでに子どもは社会人として巣立っている人もいるでしょう。保有資産の状況も、まだまだ住宅ローンや教育ローンを返済中で、プラスの資産のほうが少ない人もいるでしょうし、すでに保有資産が数千万円を超えるという人もいるかもしれません。
重要なのは、これからの残りの人生を考えたときに、自分はどのくらいリスクを許容できるのかを判断して、自分なりの資産配分やポートフォリオを作っていくことです。
■どのくらい減っても大丈夫かを判断する
一般に、歳をとるほどリスクは取り過ぎないほうがいいと言われますが、すでに子どもたちが巣立っていて、まだ現役として働ける期間が10年前後ある人なら、老後資金準備のラストスパートとして、多少なりともリスクを取りながら運用していくことも可能だと思います。
積立投資の割合も、4資産均等、または少し株式の割合を多めにしても問題はないでしょう[図表2]。
すでに保有している資産の割合も、4資産均等程度を目安に、株式の割合を少し増やすか減らすかを検討するとよいでしょう。
過去30年の4資産の動きをみると、株式の年間下落率は最大で30~40%程度。ポートフォリオに占める株式の割合を5割程度にすると、資産全体の年間下落率は最大でも15~20%程度まで下がります[図表3]。このような視点は、リスク許容度を判断する際の参考になります。
菱田 雅生
ライフアセットコンサルティング株式会社 代表取締役
ファイナンシャルプランナー