私は成人式の振袖を扱う専門店で、1年間だけ前撮り写真を選びアルバムを作る仕事をしたことがあります。そこで出会ったのは、自分が「招き猫体質」だという2歳年上の先輩パートさん。たしかに彼女と行く先々のお店は、すぐに満席になったり、レジに行列ができたりしました。しかし、実は私自身も同じような経験が多いことを自覚していて……。翌年、彼女の自称「招き猫体質」が疑われることになった出来事についてお話しします。

「招き猫体質」を自負する同僚

2022年、私は1年間だけ振袖専門店でダブルワークのアルバイトをしました。職種は成人式の振袖を購入・レンタルしたお客様の前撮り写真を、ご家族と一緒に選びアルバムを作る仕事。週末メインの仕事だったことに加え、本業であるフリーライターの仕事で培った経験が生かせるだろうと思ったからです。

 2歳年上のパートのKさんとは、そこで知り合いました。私より1カ月早く入社したKさんは、平日は事務を、週末は私と同じ写真セレクトをしていました。

 ある日、会社の備品を一緒に買い出しに行くと、最初はお客さまがいなかったのに、次第に店内が混み出し、お会計が終わって後ろを見ると10人ほど行列になっていることがありました。Kさんはそれを見て「私、人を呼ぶ招き猫体質なの」と言いだしました。「私が入ったお店はすぐ混みだすのよ」と自慢気です。たしかに、プライベートで一緒にランチに行ったときも、昼時を過ぎていたのに急に混みだしたことがありました。

しかし、実は私自身、同じような経験がよくあるのです。自分では「気のせい」で片付けていますが、古い友人や娘からは「また人を呼んでる」とよく言われます。Kさんの唐突な告白を聞いて「そういう人って、意外と多いのかもね……」と思いました。

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営業成績トップクラスの理由

Kさんの「招き猫体質」は、写真セレクトの接客でも発揮されているようでした。写真を選んでアルバム作り……と聞くとクリエイティブな仕事に思われますが、要は高価なアルバムを売り込む営業職。毎月、全支店の個人売上ランキングも発表されていました。Kさんは語りがじょうずで高額のアルバムを次々と売り、いつも上位に入っていたようです。

しかし、しばらくすると、Kさんの営業成績にはちょっとしたカラクリがあることに私は気付きました。Kさんは週末の撮影会に備えて平日の事務で情報を集めて、お客さまを品定め。初めから高価なアルバムを希望しているお客さまや、高価な振袖を購入したお客さま、両親が会社の社長や役員をしているお客さまなど、“売れるお客さま”に目星を付けていたのです。撮影会当日は、自分が受け持ちたいお客さまをいの一番に申し出ていました。

 写真選定の接客には人柄が出ます。Kさんの接客はアグレッシブで、決定権を持つ父親の虚栄心や母親の親心をくすぐりながらぐいぐいと話を進め、お客さまのご希望よりワンランク上のアルバムを売るのが得意でした。

 その年はお店も大繁盛でした。通常1つのスタジオで1日8組までしか対応できないのに、連日9組を押し込む日が続き、店舗の業績も上々だったようです。「なんといっても私がいるから」とKさんは得意気でした。