映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でレオナルド・ディカプリオ演じる主人公のモデルとなったジョーダン・ベルフォート氏が語る投資術。ある日、義弟のフェルナンドから「相談に乗ってほしい」と言われたベルフォート氏。なんとフェルナンドは、60日足らずで10万ドル近い投資額を失ってしまったのだ。60日のあいだに一体なにが起こったのか? ベルフォート氏が、彼に伝えたこれからの投資戦略とは? 本記事は、ベルフォート氏の著書『ウォールストリート伝説のブローカーが弟に教えた 負けない投資術』(久保田敦子訳・KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

義弟が60日足らずで「10万ドル」溶かした原因

私…筆者

クリスティーナ…筆者の妻

フェルナンド…妻(クリスティーナ)の妹の夫。筆者の義弟

ゴルディータ…フェルナンドの妻であり、クリスティーナの妹

クリスティーナが私を見て言った。「2人とも全部わかったって。それで、やり直したいって。今度は正しいやり方で。二人が何を買うべきか教えてほしいって。株? それとも暗号資産?」そして思い出したように付け加えた。「それから銘柄も。ゴルディータははっきりと名指ししてほしいって」

「まず、最初の質問から。2人の年齢からすると絶対、資産の大部分を株式に投資するべきだ。なぜなら長期的には、これまで株式で継続的に最も高いリターンが得られてきたからだ。そのためにほぼ確実と言えるすごい裏ワザもある。

だが、君たちは暗号資産で大損したのだから、まずそこから話を始めよう。そのほうが君たちがどこで間違ったのかわかってもらえるだろうから」妻に通訳を託した。

「暗号資産の世界では、君たちみたいな初心者でも大きなリスクを取らずに金儲けができる方法が二つある」

「ひとつは、ビットコインを買って、持ち続けること。ここでの『持ち続ける』とは、短期で価格がどんなに上下しても関係なく持ち続ける、ということ。そのためには、価格変動を丸ごと無視しなきゃならない。それらは騒音以外の何ものでもないからね」「一度買ったら、少なくとも5年は持ち続けてほしい。これが最低ラインだ。7年ならもっと良い。10年ならさらに良い」

「この簡単なアドバイスに従うなら、暗号資産で儲けるチャンスがある。特に五年目から七年目には儲かっている可能性が高い。だが、『可能性』という言葉に要注意だ。保証されているわけでは絶対にないからな。株や暗号資産はもちろん、どんな市場にも保証なんてものはない。それでも、暗号資産に関して言えば、ビットコインを長期で保有することは最善の策だと思う」

私はゴルディータのスマホを指差した。「ゴルディータに今言ったことをメモするように伝えて」クリスティーナはわかった、と言って通訳を続けた。

「それから、短期投資はダメだと伝えて。絶対絶対ダメだってね。買ったら保有、それだけ」数秒後、ゴルディータはスマホを手に取り、両手の親指を駆使してすごいスピードで打ち込み始めた。打ち終わると、私に感謝の笑みを向けた。「ありがとう、ジョルディ[訳注:著者の愛称]。どうぞ続けて」

「どういたしまして。ビットコインをいくら買うかについては、ほかの戦略について説明したあとにしよう。特に、最終的にポートフォリオの大部分を占めることになる株式を先に取り上げよう。暗号資産は最大でもせいぜいポートフォリオ全体の5パーセント以下に抑えるべきなんだ。それ以上は絶対にお勧めしない」

「いずれにせよ、どれだけの金額を投資に回すべきかについてはあとで検討する。そのときに、リターンを最大化しリスクを最小限に抑えるため、どの資産にどう配分するのが最善かを考えよう」

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ビットコインを長期で保有する

「だがここでは、ビットコインを長期で保有することを覚えておいてくれ。ここで重要なのは、この方法で儲かるとある程度確信できるのは、それが長期だからということだ。それこそがすべてのパワーの源泉なんだ」

「ビットコインが数週間後や1年後にいくらになっているかと聞かれて、知っていると答えたらそれは噓だ。俺にはわからない。誰にもわからない。少なくともある程度の確度では。知っていると言う奴がいたらそいつは大噓つきだ」

「だが、長期では――本当に長い期間では――俺はビットコインは上がると確信している。どうしてか説明しよう」

「短期では、ビットコインの価格に影響を与え得る偶発的な出来事が数多く存在し、それらの出来事を予測することは不可能だ。例えば、イーロン・マスクがある朝寝覚めが悪くて、なぜかビットコインに八つ当たりしたくなったとか、中国の習近平国家主席が、国の政策に合わなくなったからとビットコインの取引を中止するとか、大勢の大口投資家が大儲けするために、手持ちのビットコインを投げ売りして価格を下げ、その数日後に買い戻すとか、連邦準備制度理事会がインフレに対処しようと金利を上げ、通貨供給を引き締めるとか(これはすでに始まりつつあるけど)」

「君たちはアルゼンチンで二桁のインフレに慣れっこだろうが、米国では連邦準備制度理事会が放っておかない。なんとか抑え込もうとするだろうが、それがビットコインや株式市場には、少なくとも短期的には悪影響を及ぼす」

「いずれにせよ大事なことは、これらの偶発的な出来事は短期的にはビットコインの価格に甚大な影響を及ぼすが、長期的にはほとんど影響を及ぼさないってこと。これらの出来事を予測するのは不可能だから、ビットコインを短期で取引するのは博打でしかない」

「だが一方で、ビットコインに長期で投資するのはまったく話が別で、ファンダメンタルズが関わってくる。ビットコインの価値を支える要因すべてをじっくり検討しよう。例えば、希少性とか、ビットコインが解決する問題とか、ビットコインを使い始める人がどんどん増えていることとか。その上で、ビットコインが現在の市場価格と比較して、実際に価値があるかについて根拠に基づいて判断する」

「過小評価されているか、過大評価されているか、考えるんだ。過小評価されていると思うなら、買えばいい。だって安く買えるってことだからね。過大評価されていると思うなら、関わらないほうがいい。だって高くつかまされるのは嫌だろう?

「苦労して稼いだ大事なお金を投資するのに、イーロン・マスクや習近平の機嫌を気にしながらタイミングを見計らって短期で投資するより、こっちのほうが断然賢いと、普段クレイジーだと言われる俺でもさすがに思うね。投資とギャンブルほどの違いがある」

「ここまで説明すれば、俺が今、ビットコインを保有しているとしたら、その理由がすぐにわかるよね。現在の価格では過小評価されていて、非常に長期的な視野では価格が上がるはずだと考えているから、だね」

「それから、俺がいつビットコインを売るつもりかも、すぐにわかるよね。当分は売らない。最低でも5年後、おそらくそれより先だ」

「それじゃあ、ビットコインは今後1年間で大幅に値下がりする可能性はあるか? もちろんその可能性はある。過去の例に倣えば、どこかの時点でそうなることはあり得る。ビットコインは、いわゆる『暗号資産の冬の時代(クリプトウィンター)』のあいだに、何度も急激な値下がりを経てきた。でもそんなのはただの騒音だ。気にしなくていい。超長期で保有するという戦略に従えばいいだけだ」

「全部理解できた?」私はクリスティーナに聞いた。「二人に説明できる?」「もちろん! すべて納得したわ」そんなふうにしてクリスティーナは、フェルナンドとゴルディータへの最初の投資アドバイスの通訳を見事にこなした。ほんの2年前まで片言の英語しか話せなかったとは信じられないほどだった。

このアドバイスは、2人がそれまで頼っていた怪しげな即席投資講座とは違い、正しいことが証明された投資原則に基づく、堅実で理に適ったものだ。だが、これはまだ序の口だ。ここまで話題にしてきたことはすべて、ビットコインに投資する際の基本戦略のひとつであり、2人のポートフォリオの大部分を占めていた株式には、まだ触れてもいない。

人生を変えるチャンス

株式市場に関しては、非常に強力ですぐに実践できる、とっておきの戦略がある。私がそれをざっと一通り説明をするだけで、フェルナンドとゴルディータは、世界有数の腕利き資産運用家の99パーセントを継続的に打ち負かすのに必要なすべての情報を手に入れることができる。

2人にとって、これは人生を変えるチャンスだ。この一晩で、私は2人に、リターンを最大化しリスクを最小化する、最強のポートフォリオを作成するための方法を順を追って伝授することになる。

ジョーダン・ベルフォート

投資コンサルタント