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 サントリー響などに代表される日本産のウイスキーに、海外のスピリッツ愛好家から熱い視線が注がれている。輸出額が年々増加しているほか、スコッチ・ウイスキーを上回る味と評定されるなど、テイストへの信頼も高い。

◆山崎シェリーカスクがブームの呼び水に

 日本産のウイスキー市場はここ数年、海外で急速に成長している。英業界誌のスピリッツ・ビジネス(10月10日)は、サントリーの「山崎シェリーカスク2013」がジム・マレー氏の書籍『ウイスキーバイブル』2015年版で最高の評価を受けたことがきっかけで、需要が急増したと取り上げている。

 英蒸留酒販売のアマサス・ドリンクスによると、2019年から2023年にかけて同社が扱う日本の蒸留酒の売上高は、186%増加した。サントリーの100周年記念ブレンドがブームを牽引(けんいん)する形となった。

◆複雑で繊細な香りを楽しむ

 同じくサントリーから、海外の知名度が一段と高いブランドが「響」だ。1989年に発売され、山崎、白州、知多の3つの蒸留所からのモルトとグレーンウイスキーをブレンドして作られている。米ブルームバーグは、響の特徴について、その複雑で繊細な香りと味わいが際立つとしている。

 記事は、酒齢による風味の違いも楽しみ方のポイントだと指摘する。たとえば、響21年はシェリー樽で熟成されたスペイン産オークのダークフルーツのトーンが強調されているが、響30年は日本のミズナラオークのサンダルウッドの香りを生かしている。価格時に高額となり、サントリーで最も酒齢の高い「響40年」は、1本3万5000ドル(約524万円)という価格で限定販売されている。

 英ウィーク誌(9月23日)は、サントリーに限らず、日本のウイスキー産業が急速にイギリスに浸透していると指摘する。2001年にニッカの余市10年がウイスキーマガジンの「ベスト・オブ・ザ・ベスト」を受賞したことが転機となり、それ以降、日本のウイスキーへの関心が爆発的に高まっているという。

◆ブラインド・テイスティングでスコッチ上回る

 希少性だけで話題というわけではなく、味わいも確かだ。日本のウイスキーは、今夏行われたブラインド・テイスティングにおいて、スコッチ・ウイスキーを凌駕(りょうが)する結果を出している。

 デイリー・メール紙によると、英グラスゴーのポットスティルバーで8月に行われたブラインドテイスティングで、日本のウイスキーが5つのカテゴリーのうち3つでトップに立ち、本場スコットランドのウイスキーメーカーらを驚かせた。山崎ディスティラーズリザーブは、スコットランドのカリラ12年を抑え、100ポンド(約2万円)以下のシングルモルト部門で1位を獲得した。

 もっとも、最近では日本のウイスキーの需要は落ち着く傾向にある。アメリカ市場では、以前は年に1〜2回、少数を入荷できるだけだったが、現在ではほぼ年間を通じて棚に並んでいるという。

 希少な存在からより手軽に入手できる環境が整い、今後も日本のウイスキーは海外の食卓のグラスを満たしてゆくことだろう。