自ら上司や先輩に、キャリアに関する対話の場の提案を

――企業が社員のキャリア開発に熱心とは思えない状況のなかで、20~30代の若手はどのように自身のキャリア自律を進めていけばよいでしょうか。

藤井薫さん 重要なことは、企業と個人が互いに責任を持ち、キャリアを共創していく姿勢です。企業側が個人のキャリアに真摯に向き合い、支援することはもちろんのこと、個人も自身のキャリアに対して責任を持ち、積極的に向き合うことが求められます。

個人がキャリア自律を高める具体的なステップとして、自ら上司や同僚、先輩に対してキャリアに関する対話の場を提案してみるのもよいでしょう。キャリアに関して他者からのフィードバックや新たな視点を得る機会にもなります。加えて、社内にどんな仕事があるのか、積極的に情報を収集するのもよいでしょう。

自分のありたい状態を描くヒントが得られるかもしれません。こうした取り組みを通じて、自身の持ち味を内省し、ありたい状態に向けてどういったスキルや経験を積むべきか思考することが、キャリア自律のための新たな視点を見つけるきっかけになると考えます。

――最後に、今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。

藤井薫さん 個人のキャリア自律に対する職場の支援がまだまだ足りないことが大きな問題であるととらえています。キャリア自律は個人に委ねられるものではなく、企業と個人が共創しながら高めていくべきものと考えています。

企業は個人のキャリア自律に真摯に向き合い、必要な投資を積極的に行うことが重要です。それが真の人的資本経営のあり方であり、企業の持続可能な成長と競争力の向上にもつながると考えています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)

【プロフィール】
藤井 薫(ふじい・かおる)
リクルート HR統括編集長、『リクナビNEXT』編集長

1988年リクルート入社以来、人材事業に従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長、リクルートワークス研究所Works編集部、リクルート経営コンピタンス研究所を歴任。
デジタルハリウッド大学特任教授、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、千葉大学客員教員。厚生労働省・採用関連調査研究会の委員歴任。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎、2018年)。