9人組男性アイドルグループ「Snow Man」のプロモーション映像で「軍人の刀」が映ったとして中国のファンらから批判が出て、所属するレコード会社が公式サイト上で謝罪する事態になった。
刀には、日中戦争当時の中国派遣軍総司令官だった「岡村寧次」という名前が刻まれていたとされる。中国では、よく知られているというが、なぜアイドルの映像にこの刀が持ち出されたのか、ナゾが深まっている。
「歴史的事象に対する配慮に欠ける部分が含まれておりました」
「燃え盛れ~」。歌に乗って、炎の映像が流れた後、曲名の「KATANA」が紹介される。次の瞬間、刀の一部が現れ、そこには、「昭和十五年 岡村寧次」とも読める文字が映し出された。
わざわざ拡大して、文字が強調されているかのようだ。
そして、今度は、この刀部分が、血に染まったような映像が続いた。
これは、4作目のアルバム「RAYS」のプロモーション映像に収録された曲のシーンだ。
この映像が2024年10月16日、Snow Manのユーチューブチャンネルで公開されると、中国のネット上などで疑問や批判が相次ぐ騒ぎになった。刀には、中国で知られる旧日本軍の軍人名が刻まれていたというのが理由だ。
その後、17日になって、Snow Manの公式Xで「不適切な映像がございましたため、映像を取り下げさせていただきました」とする謝罪文が投稿され、チャンネルで映像が公開停止になった。さらに、エイベックスなどが設立した所属レコード会社「MENT RECORDING」の公式サイトでも同日、「公開停止について」と題するお知らせが出され、映像は同社が制作したとしたうえで、次のような日本語と中国語での説明文が出された。
「映像内において歴史的事象に対する配慮に欠ける部分が含まれておりましたため、公開を停止いたしました。当社における公開前の確認が不十分であったため、不快な思いをされた方及び映像を楽しみにされている皆様に深くお詫び申し上げます」
ただ、「公開前の確認が不十分であった」という理由だけでは、なぜ軍人名が強調されたように映っていたのかは、分からないままだ。
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「軍人の刀」は、中国が戦勝した記念品ともされたが…
軍人名の岡村寧次は、日本のネット上では、初めて知ったという声が多い。
共同通信の1999年1月26日付記事によると、中国派遣軍総司令官の故・岡村寧次陸軍大将について、本人の軍刀が見つかったと、中国・上海の地元紙「新聞報」が夕刊で報じた。
それによると、岡村大将は、終戦直後の45年9月9日、当時の首都である南京市内で、中国の国民党政府に降伏したときに、中国側にこの軍刀を差し出したという。軍刀には、「昭和16年 岡村寧次」の文字が刻まれていたとされた。これは、今回の映像にあった「昭和十五年」とは違っていた。
ただ、岡村大将の軍刀は、国民党が移った台湾の博物館にあるともされ、複数あるのかも含めて、はっきりしない。軍刀は、中国が戦勝した記念品だとして、ニセモノが多数出回っているとの情報もあった。
新聞報道などによると、岡村大将は、その後に、中国共産党と対立していた国民党に協力していたとされている。
日本では、あまり馴染みがない軍人名だけに、日本のネット上では、「わざわざその軍刀を持ってきたのは本当に疑問」といった声が出ている。「悪意のあるスタッフがいたとかじゃないと説明つかないような…」と勘繰る向きさえあったが、真相は不明のままだ。
所属レコード会社では、中国のSNS「微博(ウェイボー)」でも、「今後の教訓として、すべての資料をより厳密に検討し、ファンの皆様のご意見やご提案にさらに耳を傾けていきます」などと釈明したが、不満が収まっていないようだ。
「歴史を学ばないなら中国に来るな!」「私たちがアメリカ人だったら、真珠湾の歴史を映像として使いますか?」「中国国民とアジア全体の人々を傷つける」「スタッフの解雇を」などと大量に書き込まれている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)