ボランティアこそ労組の使命、東日本大震災の組織派遣は自衛隊に次ぐ規模
――組合員の人生に貢献するという点では、先ほどの大分県の「であい・こうりゅう・あんしん」の活動方針と通じるものがありますね。
中村天江さん クレジットカードのクレディセゾン労働組合(組合員約4000人)の方法も、相通じる点があります。ここもj.unionを介して、三菱UFJニコスやファミリーマート、ローソンなどの労組と一緒に「異業種交流+社会貢献」の活動を行なっています。
「スポGOMI」といって、ゴミ拾いを競い合ってスポーツとして楽しみ、自分の健康と地域の衛生に貢献するイベントです。最初から婚活をうたわなくても、若者同士が出会い、盛り上がれば自然にカップルが誕生することもあります。
「異業種交流+社会貢献」という活動内容であれば、組合内部で共感や賛同を得やすいので、絶妙な企画になっています。実際、参加者や参加組合がどんどん増えているそうです。
――労働組合を通じて「出会い」が「社会貢献」につながるのですね。
中村天江さん 出会いと社会貢献は一見まったく別の活動ですが、労働組合を介すとこれらをつなげることができます。労働組合は助け合い・支え合いを大事にしているので、昔から社会貢献活動を行っています。例えば、東日本大震災の組合ボランティアは、組織派遣としては自衛隊に次ぐ人員規模でした。
企業などで働く人が約6100万人のところ、労働組合加入者は1000万人近くいます。労働組合は権利主張団体としての顔があり、ステレオタイプな闘争的イメージが強いですが、実際の活動内容はもっとずっと広いです。個人と国家のあいだにあるコミュニティーとして、人々のつながりを生み出し、新たな場に誘う社会的機能ももっています。
人口減少や孤独・孤立の問題が深刻になっていくなかで、婚活支援も含めて、労働組合のネットワークを外に向かって広げる力には大きな可能性があります。労働組合を経済的・政治的に位置づけるだけでなく、社会的役割からとらえることが、これからの時代は大切だと考えています。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
中村 天江(なかむら・あきえ)
連合総研生活関連研究所主幹研究員
商学博士(一橋大学)。専門は人的資源管理論。「働くの未来」をテーマに調査・研究・提言を行う。1999年リクルート入社、2009年リクルートワークス研究所に異動。2021年10月、連合総研に転職。
『労働組合の未来を創る ―理解・共感・参加を広げる16のアプローチ―』連合総研(2024年、共著)を主担当として推進。著書に『ジョブ型vsメンバーシップ型 日本の雇用を展望する』中央経済社(2022年、共著)、『30代の働く地図』岩波書店(2018年、共著)など。