2024年9月、第1号「PayPay」(ペイペイ)のサービス一部開始で、スマホ決済アプリを使った「給料デジタル払い」がスタートしたが、導入に前向きな企業はわずか4%だという。

帝国データバンクが2024年10月16日に発表した「企業の『賃金のデジタル払い』対応状況アンケート」で明らかになった。

政府のキャッシュレス化推進事業の柱として2023年4月に始まった事業。いったい何が問題なのか。調査担当者に聞いた。

「手続きが複雑」「セキュリティーに不安」の声が大多数

帝国データバンクの調査(2024年10月4日~10日)は、全国1479社が対象。

給料デジタル払いの対応を聞くと、「導入に前向き」な企業は3.9%にとどまり、「導入予定はない」(88.8%)が9割近くにのぼった【図表1】。

「導入に前向き」な企業に理由を聞くと、「振込手数料の削減」(53.8%)でトップ。次いで、「従業員の満足度向上」(42.3%)、日払いや前払いのしやすさから「事務手続きの削減」(32.7%)が続いた【図表2】。

企業からは「支払いが楽になる」(メンテナンス・警備)といった声があがる一方、「小さな会社での導入は可能かどうかや、実際の事務作業の流れ、必要な手続きなどを知りたい」(情報サービス)といった声も寄せられた。

前向きに考えている企業でも制度・サービスに関する情報や理解が十分でない様子がうかがえた。

「導入予定はない」企業に理由を聞くと、デジタル払いと口座振込の二重運用や労使協定の改定など「業務負担の増加」(61.8%)がトップに。次いで、「制度やサービスに対する理解が十分でない」(45.0%)、「セキュリティー上のリスクを懸念」(43.3%)が4割台で続いた。

企業からは、「振り込み処理が複雑になる」(機械製造)や「セキュリティーが十分とは思えず、従業員も不安に思っている」(服飾品製造)など不安な声があがった。さらに、「地方ではデジタル払いのできる店舗が限られる」「従業員からの要望がない」などの意見も聞かれた。

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制度が始まり2か月足らず、まだまだこれからという段階

J‐CASTニュースBiz編集部は、帝国データバンク情報統括部の調査担当者の話を聞いた。

――調査結果では、「導入に前向き」が約4%、「導入予定はない」が約9割。ズバリこの結果をどうとらえていますか。

調査担当者 中小企業の多くはまだ導入予定がない結果となっています。ただし、それは否定的というより、まだまだ制度に対する理解の進展や情報の少なさ、リスクに対する不安からくるものとみています。

また、前向きな企業ですが、約4%という数字はやや少なく感じましたが、実質的に制度がスタートしてまだ2か月足らず。そこを踏まえると、まだまだこれからという段階ですので、今後の経過に着目したいと思います。

――「給料デジタル払い」について、企業側/労働者側からみたメリットをどう考えていますか。

調査担当者 企業側からみたメリットは、まず振込手数料の削減があげられます。資金移動業者の口座への送金手数料は銀行口座への振込手数料に比べて、安く設定されることが多いためです。

また、給与のデジタル払いを希望する従業員の満足度の向上に加えて、日払いや週払い、前払いなども行いやすく、事務手続きの削減が図れるといったメリットもあります。

労働者側からみたメリットは、デジタル払いを日常的に活用している従業員にとって、支給された給与の電子マネーへのチャージの手間が省けて、利便性が高いという点があげられます。また、銀行口座と併用することでライフスタイルに応じた金銭管理ができる点もメリットと言えます。