元NHKアナから転職 内多勝康さんが医療福祉の現場で思う「人を動かす」ために大事なこととは?

内多勝康さんの近況を知った読者の反応は

―以前、内多さんが「もみじの家」のハウスマネージャーに転身された経緯について、ハルメク365で「元NHKアナウンサーが50代で医療福祉に転職した訳」で紹介したところ、大きな反響がありました。

内多:当時、Yahoo!ニュースのトップ画面にも掲載されていたようで、家族から見直されました(笑)。私は古い人間で、インターネットの反響には疎いのでよくわかりませんが。

―記事へのコメントの中には、内多勝康さんを懐かしむ声、「医療的ケア」が必要な子どものことを初めて知ったという声、そして実際に寄付をしたという声もありました。

内多:僕の幸運なところは、NHK時代の僕のことを覚えてくれる人が時々いて、寄付をしてくれる人もいることです。「もみじの家」の収入の柱は、国からの障害福祉サービス費と地元自治体からの補助金、そして民間のみなさまからの寄付です。ですから、本当にありがたいことだと思います。

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コロナ禍での施設運営を救ってくれた「寄付」

2021年3月現在、受け入れは子ども一人につき、保護者一人と決めて運営しています

―新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてから、「もみじの家」の環境に何か変化はありましたか?

内多:「もみじの家」は2020年の春に2か月の間、完全閉鎖となりました。あの頃は全国の小中学校も休校でしたし、閉鎖はやむを得ないという空気がありました。

社会全体が重苦しい空気に包まれる中、医療的ケア児の家族は感染のリスクを恐れながら「家族だけでがんばらなければいけない」という苦しい状況に置かれていたと思います。

一方で「もみじの家」も非常に苦しい状況に追い込まれました。というのも、我々の施設の収入は利用者数に応じて決定づけられるので、利用者がゼロになると収入がなくなってしまうからです。そうはいっても、看護師や保育士などのスタッフの人件費を含めた毎月の固定費は削ることはできませんから、途方に暮れていました。

そこで、「もみじの家」にご支援いただいたことのあるみなさんに緊急のお便りを出しました。新型コロナウイルスによる閉鎖で大幅な赤字が避けられない状況であること、寄付を検討していただきたいこと、周囲の方にも伝えていただけたら幸いであることを伝えました。

お恥ずかしい話ですが、本当にそこまで追い込まれていたのです。

―みなさんの反応はいかがでしたか?

内多:すぐに、多くの方から寄付が届きました。

中には「気付かなくてすいません」と言ってくださる人までいました。幸いなことに、2か月間の赤字を埋められるくらいの寄付が集まりました。優しい人がたくさんいて、胸がいっぱいになりました。

毎月、振り込みやクレジットカードで寄付してくださる方がいますし、寄付を申し出てくれる企業もあります。「日本に寄付文化は根づいていない」などと言われることもありますが、そんなことはないと僕は自信を持って言えます。

また、今はコロナ禍で受け入れは難しいのですが、ボランティアという形で大切な時間と労働力を無償で差し出してくれる人もいます。

―「もみじの家」のホームぺージでは、「ウィッシュリスト」としてAmazonで購入できる物品が公開されています。実際に物品は届くのでしょうか。

「もみじの家」ホームページの「ご支援・ご寄付について」にウィッシュリストが掲載されています。

内多:はい、それはもうびっくりするくらいのスピードで。ウィッシュリストに掲載した次の日には物が届くこともあります。僕は、敬意を込めて「もみじの家のタイガーマスク」と呼んでいます。どうしても必要なときにだけウィッシュリストを掲載しているので、リストが空っぽのときは「なぜ載っていないんだ」と注意されることも(笑)。

寄付の方法も、人それぞれ合った形があるんだなと思わされます。

寄付金、物品、ボランティアと、いろんな形の支援があって、どういう形であれ、「『もみじの家』とつながってくれる人がいる」ということは、とてもありがたいことだと思っています。何らかの形で「もみじの家」を支えてくれる人の数は、この5年で1000人に上っています。これまでの活動の積み重ねの結果でもあるのかもしれません。

ウィッシュリストから贈られた寄付品の数々。支援者の方々へ送るニュースレターを通じて、内多さんは感謝を伝えています。