3.診療看護師と特定看護師の違い
診療看護師はできることが多い
診療看護師は、特定看護師よりも広い範囲の相対的医行為をおこなうことができます。
医療機関や大学院などで特定行為の研修を修了すると、特定看護師を名乗ることができます(一部の特定行為のみでも可)。特定行為を実施するときは、あらかじめ対応可能な範囲が明確に示された手順書による医師の指示(包括的指示)にもとづき、指示範囲内であれば手順書どおりに対応、指示範囲を超えていれば改めて医師の指示を仰ぎます。
対して診療看護師は、すべての特定行為に加え医師の直接指示による相対的医行為もおこなうことができます。具体的には手術助手や腹腔穿刺などがありますが、医療のニーズや現場での活動実績に応じて、今後範囲が広がる可能性があります。
特定行為とは
特定行為とは、「看護師が手順書によりおこなう診療の補助で、実践的な理解力、思考力および判断力並びに高度かつ専門的な知識および技能がとくに必要とされる」ものをいい、21区分38行為が定められています。
医行為は医師のみができるいわゆる「絶対的医行為」と、医師の指示のもと看護師がおこなえる「相対的医行為」があり、特定行為は相対的医行為の中で高度なものの区分と具体的な行為を明示したものです。
区分 | 特定行為 |
---|---|
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | ・経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | ・侵襲的陽圧換気の設定の変更 ・非侵襲的陽圧換気の設定の変更 ・人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 ・人工呼吸器からの離脱 |
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | ・気管カニューレの交換 |
循環器関連 | ・一時的ペースメーカの操作及び管理 ・一時的ペースメーカリードの抜去 ・経皮的心肺補助装置の操作及び管理 ・大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整 |
心嚢ドレーン管理関連 | ・心嚢ドレーンの抜去 |
胸腔ドレーン管理関連 | ・低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 ・胸腔ドレーンの抜去 |
腹腔ドレーン管理関連 | ・腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された 穿刺針の抜針を含む) |
ろう孔管理関連 | ・胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 ・膀胱ろうカテーテルの交換 |
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 | ・中心静脈カテーテルの抜去 |
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 | ・末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 |
創傷管理関連 | ・褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 ・創傷に対する陰圧閉鎖療法 |
創部ドレーン管理関連 | ・創部ドレーンの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 | ・直接動脈穿刺法による採血 ・橈骨動脈ラインの確保 |
透析管理関連 | ・急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | ・持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整・脱水症状に対する輸液による補正 |
感染に係る薬剤投与関連 | ・感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与 |
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 | ・インスリンの投与量の調整 |
術後疼痛管理関連 | ・硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
循環動態に係る薬剤投与関連 | ・持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 ・持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 ・持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 ・持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 ・持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 |
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 | ・抗けいれん剤の臨時の投与 ・抗精神病薬の臨時の投与 ・抗不安薬の臨時の投与 |
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 | ・抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整 |
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4.診療看護師の活躍に期待
診療看護師になるには最短でも7年かかり、合格後は通常より広い範囲の判断力や責任が求められます。負担は大きいですが、それだけやりがいのある働き方ともいえるでしょう。
医師と多職種間のタスクシフトが進む昨今、診療看護師は課題解決のキーマンになり得る存在です。在宅医療・介護の現場でも、診療看護師のスキルが必要とされる場面は多々あります。活躍の場は今後ますます増えるのではないでしょうか。
参考
厚生労働省|特定行為とは日本NP教育大学院協議会「令和3年度診療看護師(NP)活動実態調査」