脳科学者の茂木健一郎氏が2024年10月21日、自身のYouTubeチャンネルで、NHKが20日に放送した故ジャニー喜多川氏に関するドキュメンタリーを痛烈批評した。

「忖度と本気で番組を作っていないという、ぬるま湯文化が日本のエンタメをダメにした」

茂木氏は「昨夜放送の、NHKの『ジャニーズ』についてのドキュメンタリーを見た率直な感想。ポンコツな私ですが、こう考えました。みなさんはどう思いますか?」と題した動画を公開した。

NHKは20日、NHKスペシャル「ジャニー喜多川”アイドル帝国”の実像」と題したジャニー氏の性加害にスポットを当てたドキュメンタリーを放送した。

この番組に対し、茂木氏は「独自の見解」と前置きしたうえで、日本のドキュメンタリーの一番の欠点は「ナレーターが入ること」だとした。ディレクターが書いた文章を、中立を装ったナレーターに読ませることが致命的な欠点だと指摘。だが、今回の特集はそれが最小限に抑えてあったことを評価した。

一方で、特集の中で「ジャニーさんは才能のある人ではあった」とされていたのには納得がいかない、と私見を述べた。

以前から茂木氏はSNSなどでそれを指摘し「お叱りを受けたこともあった」としつつ、旧ジャニーズ事務所の歌や踊り、演技は「どうなんでしょうか」と疑問を呈した。

宮崎駿監督の作品やK-POPのアイドルと比較し、「今、エンタメは何でもグローバルに時を超えて伝わっていくものですよね。いいものだったら。そういうことになっているんでしょうか? ジャニーズの方々のエンタメというのは。そうなってないじゃないんですか?」と問いかけた。

ジャニーズは「ビッグインジャパン(日本でしか売れない洋楽バンド・アーティスト)」の位置にあるとし、ひるがえってNHKに対して「旧ジャニーズタレントを使っていれば、それなりに視聴率が稼げる」と推察。

一方では、「週刊文春」などがジャニー氏の問題を取り上げていたのに対し、「まったくNHKはスルーしてたでしょ」と指摘。「忖度と本気で番組を作っていないという、ぬるま湯文化が日本のエンタメをダメにしたんじゃないでしょうか」と問いかけた。

ジャニー氏について「それなりの才能はあった」と認めながらも「突き抜けてグローバルに行くような才能はあったんでしょうか。僕はなかったと思ってるんです」と言及。旧ジャニーズ事務所の表現は異性の魅力にとどまるとした。

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「本気のストレート直球勝負待ってます」

話題は、番組制作の姿勢にも及んだ。「そんな甘い認識で日本のテレビは作られたから、今のようになってしまったのでは」と茂木氏。この点と公共放送としての使命は関連している、と茂木氏はいう。NHKについては「視聴者を舐めている、人間を舐めていると思うんですね。本気で世の中に向き合っていない」と苦言を呈した。

NHKのほとんどの番組は「質的に見れない」「見る気が起こらない」。それで視聴率が取れているのであれば、「舐めてるとしか思えない」「日本全体が舐められちゃってる」とも話した。

「僕はエンタメの質の問題を問うてるんです。才能なんかないじゃん、ジャニーさん。一生懸命やったんだろうけど、まがい物だったよね、というのが正直な感想です。僕が読み取れていないのかもしれないけど」

茂木氏はジャニーズやNHKだけでなく、日本社会全体の問題だとし、反省を促した。忖度を積み重ねた結果、エンタメが「ジャニーズのような、僕から言えば二流以下のエンタメが日本にのさばったと僕は思ってます」と苦言。「それが日本なら、日本は変わらないといけないと思うわけ」と見解を述べた。

もっとも、公共放送としてNHKへの期待は大きい。「猫撫で声でなんか言われてもこっちは心を動かされないよね。本気のストレート直球勝負待ってます」「本気のNHKを一度ぐらい見たいなって俺は思います」と締めくくった。