故ジャニー喜多川氏による性加害問題で、これまで「SMILE-UP.」社が、被害を受けた人たちに対する救済措置を進めている。
そんななか、2024年10月20日放送の「NHKスペシャル」で、同社の補償本部長が被害者の姉と電話で会話する内容が放送された。東山紀之社長に、故人となった被害者の墓参を要望する姉に、「何で東山がしなければいけないのか、分からない」「心の底からお詫びできない」などと返答。番組終了後から、インターネット上では批判が相次いでいた。
「誰が何を謝るんだというのが、分からない」
旧ジャニーズ事務所が、故ジャニー喜多川氏の性加害問題について記者会見を開いたのは2023年9月7日。その席で社長就任を発表した東山氏は、被害者に対して「法を超えて救済・補償が必要」と述べていた。
それから1年余り。「Nスペ」の補償本部長の話しぶりには相当の温度差があった。
補償本部長と電話で話したのは、アイドルグループ「ジャニーズ」のメンバーだった中谷良さんの姉。中谷さん本人は故人となっている。1989年、ジャニー喜多川氏の性加害を告発する書籍を出したが、旧ジャニーズ事務所は事実と認めなかったという。
電話のやり取りで補償本部長は、謝罪を求める中谷さんの姉に、中谷さん自身が亡くなっているのを理由に「誰が何を謝るんだというのが、分からない」と返答。かつて中谷さんが告発本を書いたことを、会社が「痛めつけられたのは間違いない」とも発言した。
姉が、東山氏が中谷さんの墓前で謝罪するよう望むと、「何で東山がしなきゃならないのか」「心の底からお詫びできない」とまで口にした。
2分ほどのやり取りののち、本部長は東山氏と相談する旨を告げて電話を切った。
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国連人権理事会からも厳しい指摘
番組では、その後、東山氏が中谷さんの墓を訪れ謝罪した旨を伝えた。一方でXでは、補償本部長の態度に批判が集まった。SMILE-UP.社の、被害者に対する姿勢を疑う声も出た。
放送から5日後の10月25日、SMILE-UP.社はウェブサイトで、こう報告した。
「弊社は本件を重く受け止め、補償業務体制の一部を変更すべく、当該補償本部長の任を解くと共に新たに補償本部長を任命し、補償本部における業務の実施体制を見直すことといたしました」
今年6月、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会は、ジャニー喜多川氏による性加害問題に対する被害者救済について、「道のりはまだ遠い」と指摘している。