裏金問題で強い批判を受けた自民党の大物議員らは、無所属で立候補しながらも当選を果たしたり、党公認となっても比例で重複立候補できずに落選したりと、明暗が分かれた。その境ができた原因とは、一体何だったのだろうか。

「言葉の限りを尽くして説明をさせていただいたつもりですが…」。東京7区から党公認で立候補した丸川珠代元五輪相(53)は、2024年10月27日の衆院選投開票で、早々と落選が決まり、支持者らを前にこう心境を明かした。

「裏金議員」出馬選挙区、8割が野党同士で競合

丸川氏は、裏金問題で重複立候補ができず、自民党の苦戦が伝えられた選挙戦で、「どうかお助け下さい!」と涙ながらに訴えた。しかし、フタを開けてみると、立憲民主党の松尾明弘氏(49)に差を広げられて落選した。

一方、東京24区で立候補した萩生田光一元経産相(61)は、裏金問題で党公認を得られず、無所属となったが、7選を果たした。立憲民主党の有田芳生氏(72)の追撃を何とかかわした形だ。萩生田氏は、当選が決まると支持者らの前で、「政治家として生まれ変わって、新しい命を吹き込んでいただいた、そんな日だと思っています」と感慨を語った。

自民党の「裏金議員」ら46人のうち、当選したのは、萩生田氏ら18人だった。丸川氏ら28人が落選したため、裏金議員の勝率は約4割だった計算になる。

与党が過半数割れする中で、裏金議員が多数生き残った背景には、野党共闘が進まなかったことも指摘されている。報道によると、8割強の選挙区で野党同士が競合したという。

東京24区の開票結果を見ると、萩生田氏の得票は8万票弱だ。有田氏と国民民主党、日本維新の会の3候補の得票合計は11万票強だったことから、もし3党が統一候補などを立てれば、萩生田氏は落選した可能性があることになる。

裏金問題で無所属となった兵庫9区の西村康稔元経産相(62)、東京17区の平沢勝栄元復興相(79)も、日本維新の会などの候補が一本化すれば、落選の可能性があった。

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「元々選挙に強い人が勝ったという側面」

もっとも、丸川氏や裏金問題で無所属になった東京11区の下村博文元文科相(70)らは、立憲民主党など複数の野党候補が競合する中でも、落選している。その背景には、元々、野党が強い都市部の選挙区といったような別の事情もあるかもしれない。報道によると、野党が競合した選挙区における野党の勝率は、約5割に達していた。

政治アナリストの伊藤惇夫さんは10月28日、J-CASTニュースの取材に対し、「野党が一本化できていれば、もっと負けていただろう」との見方を示しながらも、こう述べた。

「裏金議員の中で明暗が分かれたのは、元々選挙に強い人が勝ったという側面があります。萩生田さんは、地元の地盤を固めて公明党のバックアップを受けていますし、平沢さんは、こまめに地元を回っていて、地盤は盤石ですね」

野党共闘については、元々無理があったとの見方を示した。

「維新は、自民党に近いので、立憲民主党と組むことはないでしょう。立憲民主党も、共産党と協力したときよりも勝っています。共闘を求めるのは、ないものねだりではないですか」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)