ボタンで色が変わるバッグも登場。「デルヴォー」の最新コレクションをパリからリポート

1829年に創業したベルギーのレザーグッズメゾン「デルヴォー」。2025春夏パリ・ファッションウィーク中に行った展示会は、その豊かな歴史、ベルギーの文化、職人の技、そしてイノベーションを実感するものだった。独創的な空間表現にも注目が集まった。

今回の展示会は、ニューヨークとパリを拠点に活動するアーティスト、ハリー・ヌリエフ氏が空間デザインを手がけた。ヌリエフ氏が用いるのは、スチールやミラー、ラッカーなど、クールで実用的な素材。調和の取れたコントラストにより、デルヴォーの温かみのある素材やデザインが引き立てられていた。

デルヴォーの新作コレクションのテーマの一つとなったのが、アール・ヌーヴォーへの賛歌。センシュアルなラインや有機的な様式、特にアール・ヌーヴォーの芸術運動を始めた1人であるベルギーの建築家、ヴィクトール・オルタ(1861年~1947年)の作品からインスピレーションを受けている。レザーの花々が咲き誇るバッグは、遊び心とエレガンスを兼ね備える。

アール・ヌーヴォーの時代から間もなく起こったシュルレアリスム運動もまた、デルヴォーが今回掘り下げたテーマの一つだ。ベルギー出身のシュルレアリスト、ルネ・マグリット(1898年〜1967年)の作品は、これまでもデルヴォーのコラボレーション商品として登場するなど、メゾンと深い関係にある。今シーズン、複雑な刺繍(ししゅう)やマグリットを象徴する作品がプリントされたアイテムによって、シュルレアリスムの表現をさらに広げた。

デルヴォーはその長い歴史の中で、創業以来3,000点以上のハンドバッグのデザインを生み出してきた。社内にはアーカイブ部門があり、過去のコレクションはブリュッセル本社にあるミュージアムに保存されている。今回、最初のハンドバッグ「le Princesse(ル プランセス)」が3Dプリンターで初めて再現されたほか、メゾンの大胆な革新や創造性を物語る過去の名品の数々が展示された。


3Dプリンターで再現された「le Princesse(ル プランセス)」

アメリカのE Ink社とパートナーシップを組み、バッグの中にある小さなボタンを押すと、編んだバッグの色が変わるという新しいコンセプトのバッグも披露した。ラスベガスの見本市CESで同社の画期的なテクノロジーに出会ったことがコラボレーションのはじまりだという。レザーというタイムレスで自然から生まれた素材と、未来の独創的な素材が融合して、新しい価値を見出している。


左の作品の黄色、右の作品の白色や青色の部分にE Ink社の素材が使われている。バッグの中のボタンを押すと、これらの部分の色が変わる

歴史や職人技もさることながら、大胆なイノベーションが、現在のデルヴォーを特徴づける要素になっている。

text: Shunya Namba @Paris Office
photo: ©︎Delvaux

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