米コロラド州デンバーの大麻販売店(2023年3月)|Jamilya Khalilulina / Shutterstock.com
合法化により、アメリカではさらに使用が拡大している大麻。しかし、依存症などの害も報告されている。
◆大麻合法化の状況
2014年、アメリカ・コロラド州とワシントン州で、全米で初めて娯楽目的の大麻販売が解禁となった。2024年3月時点で、アメリカの24の州および首都ワシントンにおいて、大麻の娯楽目的使用および医療目的使用が合法化されており、残りのうち14の州においては医療目的使用のみが合法化されている。さらに今年の選挙では、フロリダ州を含む3州において合法化に向けた国民投票が実施される予定だ。連邦政府レベルにおいては、大麻はスケジュールIの分類として規制されている薬物で、医療目的の使用も認められていないが、規制緩和に向けた動きは進みつつある。民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領は、大麻の娯楽目的の使用を、連邦レベルで合法化するという公約を打ち出した。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターのデータによると、今年の1月に実施されたアンケート調査では、成人の57%が大麻の医療目的および娯楽目的の使用に賛成、32%が医療目的の使用のみ賛成という結果で、大麻使用自体に関してはアメリカの成人の9割近くが支持を示している。時間軸で見ると、2000年ごろは約6割のアメリカ人が大麻の使用は違法であるべきという意見を示していたが、2010年代前半には合法賛成派が反対派を上回り、2023年には7割以上のアメリカ人が、(使用目的は関係なく一般的な)大麻の合法化に賛成という意見を示した。また、実際の使用に関しては、2022年の世論調査では50.3%が大麻使用経験ありと回答した。
◆大麻中毒や過剰摂取のリスクも
国立薬物乱用統計センター(NCDAS)のデータによると、アメリカ人の7割が大麻使用より飲酒、タバコさらには鎮痛剤の方が害が大きいと回答している。大麻合法化が進むなか、医療目的や娯楽目的の使用における便益の方にスポットライトが当てられてきた状況だが、向精神作用をもたらす大麻の成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)の摂取には副作用もある。ニューヨーク・タイムズの調査報道記者であるメガン・トゥーイー(Megan Twohey)は、大麻のヘビー・ユーザーが予期せぬ健康被害を経験している実態を伝える。
トゥーイーの報道によると、ほんの10年前まで違法だった薬物が合法化され、より簡単に手に入るようになっただけでなく、商用化によって効力が強い商品も含め、多様な種類の大麻プロダクトが流通し、ユーザーは少し混乱状態にあるという。医療専門家は、専門家が脇に追いやられ、あらたな産業が立ち上がったことで、メーカーはいかに中毒性の高い製品を作るかという競争に終始してしまったと懸念の声をあげている。また、大麻が連邦レベルでは違法薬物であるため、調査も進まないという実態もある。
コロンビア大学の調査によると、大麻の使用者の数が増えているだけでなく、日常的な使用者の数も増えているという。同時に、大麻の依存症を抱えている人口も増えており、大麻使用者の3割もが、なんらかの問題を抱えているという。これはアメリカ人1800万人に相当し、そのなかでも300万人ほどが大麻中毒者だと考えられているそうだ。特に、18〜25歳の若者の間で、大麻依存症が大きな問題になっている。
具体的な健康被害の事例としては、大麻の過剰摂取が周期的な吐き気や嘔吐(おうと)をもたらすカンナビノイド悪阻症候群(cannabinoid hyperemesis syndrome:CHS)や、一時的な精神病のような症状が現れ、妄想や幻覚に悩まされる患者のストーリーが紹介された。
しかしながら、医療関係者の大半は大麻の合法化に賛成しているという。今後も、大麻のさらなる合法化と普及の流れが進展することが予測されるなか、依存症をもたらすリスクやカンナビノイド悪阻症候群の存在については、販売側がきちんと警告するといったような新たなガイドラインやルールの導入が求められる。