2025年春夏パリコレクションが9月22日から10月1日まで開催されました。ファッションショーやプレゼンテーション、イベントなど盛りだくさん。ファッションのことだけでなく、街で見かけた気になること、パリらしいものなどをお伝えします。今回はDAY 6。
言語化できない「コム・デ・ギャルソン」
下町っぽい雰囲気が残る12区でのショー。毎回どんな服がでてくるか、想像もつきません。それがパリコレらしさを作っているのかもしれません。
コレクションノートでは「不確実な将来 世界で起こっている様々なことに対する空気と透明性で立ち向かうことはある種の希望を意味するかもしれない。それを表現する素材として透明感のある素材を使用しました」とありましたが、ファーストルックに度肝を抜かれました。モデルの動きから見ても、とても硬そうな素材です。布にアクリルでコーティングしたものです。チュールなど下が透けて見える素材も多用しており、その下に重ねているプリントの柄が血だったり、環境問題、人権の問題をとらえた写真のプリントだったり。これが今、世界で起きていること。
登場した服は容易に言語化できません。「スカート」とか「ジャケット」などと単純に表現できる服ではありませんし、普通に着られる服でもありません。「何なのだろう、これは」という思いが頭の中をぐるぐると巡ります。見る人たちの心を揺さぶる。その揺さぶられ方も人それぞれ。それがデザイナー川久保玲さんのメッセージなのでしょう。
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ダークな美しさ「アレキサンダー・マックイーン」
会場はセーヌ川沿いの左岸にある国立美術学校。荘厳な雰囲気の建物に入るのは久しぶりです。きれいなタイルの床がランウェーの部分だけ崩されています。そこにスモークがたかれてショーが始まりました。
クリエイティブ・ディレクターに就任して2シーズン目のショーン・マクギアーはアイルランド出身。その彼がテーマに選んだのは「バンシー」。アイルランドの妖精で、死が近い人の家に現れるという言い伝えがあります。
「バンシーはマックイーンの歴史に根ざした存在ですが、私にとっても幼少期からなじみ深い物語でもあり、個人的な思い入れがあります。アイルランドで母がこの孤独で不吉な人物の叫び声を描写した話をしていたのを覚えています。私にとって、バンシーは今や現実的で強力な存在を象徴するようになりました。感情豊かで率直な人物、導き手と見なされる人物という概念です」というのがクリエイティブ・ディレクターの言葉。
亡くなったアレキサンダー・マックイーンが作ったこのブランドは、常に美しいテーラリングとともにどこか闇を感じさせる服という印象があります。
今回のショーでは、英国のテーラリングを覆すようなシャープなスーツのほか、きゃしゃで繊細なドレス、そして最後はシルバーのスパンコールなどに全身覆われたボディースーツ。亡くなったアレキサンダー・マックイーンのテーラリングとどこか闇を抱えた美しさ。その要素が継承されていました。