認知症の治療にも、笑いのリラックス効果を活用!
廣西さんは「笑いは認知症治療の現場でもとても大切」だと話します。
「認知症の患者さんは、常に“NO”の世界に生きています。『こんなことしたらいかんよ』と周りからはNOばかり。緊張の連続で交感神経が高ぶり、いつも臨戦態勢のような状態です。それをほぐしてくれるのが、笑い。笑うと一気に副交感神経が優位な状態へと切り替わり、リラックスできるんです」
「怖い顔で診察室に入って来た患者さんも、心配顔のご家族も、帰るときには笑顔になっていてほしい。落語で学んだ話術が診療にも役立っています」
交感神経優位で緊張した状態でも、笑うと副交感神経に即スイッチ
笑いはリラックスへの一番の近道です。
闘いモード(交感神経優位)
瞳孔が開く
血圧が上がる
心拍数が増える
消化管の動きが低下する
唾液がネバネバする
↓
笑い
↓
リラックスモード(副交感神経優位)
瞳孔が縮む
血圧が下がる
心拍数が減る
消化管が動く
唾液がサラサラする
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落語で認知症をタブー視する社会から受け入れる社会へ
廣西さんが認知症落語を始める際、心配したのは観客の反応でした。
「認知症の人を馬鹿にしているなどと受け取られたら……と最初は心配もしましたが、幸い、そういう反応はなかったですね。実はこのテーマで落語を始めた背景には、認知症をタブー化させたくないという思いもありました」
「例えば“ボケ”という言葉は絶対に使ってはいけないという専門家もいますが、私は文脈次第だと思っています。落語の人情噺として、『誰でもボケるんや、みんな一緒やないか』と言えば、『そやそや』とうなずいてもらえる。落語ならではの言い方、伝え方が効くんですね。落語を通して“スティグマ感”を消していきたい。そんな野望もあるのです」
スティグマとは、否定的なレッテル付けのこと。認知症は怖い病気、不幸だ……といった負のイメージが社会にはまだ根強い、と廣西さん。
「認知症をタブー化すると、スティグマ感はもっと強くなります。だからこそ認知症のことを取り上げて、みんなで笑ったり、しみじみ共感したり、ちょっとほろりとしたり……。落語だからこそ伝えられること、できることがあると思うのです。これからも精進します!(笑)」