Sarah Soper / Dunedin Airport via AP

 ニュージランド南島にあるダニーデン(Dunedin)空港が、降車エリアの混雑を避けるために、「ハグは3分以内で」という異例のルールを導入し、話題を呼んでいる。

◆お別れのハグは3分まで

 ダニーデン空港ホームページ内の、降車ゾーンについてのよくある質問コーナーには、なぜ降車ゾーンの利用制限が3分なのかということについて、空港のCEOであるダニエル・デ・ボノ(Daniel De Bono)による解説が掲載されている。デ・ボノは、ラジオ・ニュージランド(RNZ)の番組ホストの質問に対し、降車エリアには「あまりに多くの人が、あまりに多くの時間を割き過ぎている」という理由で、今回の3分ルールを導入したと説明する。また、それ以上、時間が必要な場合は、最初の15分間は無料で利用できる駐車場を利用してほしいと付け加えた。

 今回、ダニーデン空港が導入したルールは、ハグそのものを禁止するものではなく、あくまで降車エリアの混雑を避けるための措置であるとはいえ、実質はハグの時間制限として発信されているのが面白い。たとえば、「ハグは3分以内で。別れ惜しい人は駐車場をお使いください(Max hug time 3 minutes. For fonder farewells, please use the car park.)」や、「別れはつらいものだから、サクッと済ませよう(It’s hard to say goodbye. So make it quick.)」といった内容の標識が立てられている。デ・ボノは、愛情ホルモンとも言われるオキシトシンの効果を感じられる、ちょうど良い長さのハグは20秒ぐらいだというデータがあるとしたうえで、それ以上長いと気まずい感じになるとも語った。

 ダニーデン空港はニュージランドで5番目に混雑する空港だが、昨年の年間乗降旅客数は92万人で、国内で最も混雑するオークランド空港の5割程度。羽田空港の2023年度の1910万人と比べると、5%にも満たない。実際に、ダニーデン空港の降車エリアがどれだけ混雑するのかは疑問も残る。

◆人間味あふれるルールが話題に

 出会いと別れの場である空港において、人々が抱き合いながら喜びや悲しみの時間を分かち合っている姿を見ることは珍しいことではない。特に家族、友人や知人をしっかり抱きしめる(ハグする)という文化が浸透している国においては、ハグは人生の大切な瞬間だ。AP通信の記事は、「ハグに時間制限を設けるなんて基本的人権を侵害していると非難された」というデ・ボノのコメントを掲載。しかし、小さな街の空港だからこそ、ただ駐車のルールと罰金を設けるのではなくて、「風変わり」なやり方が必要なのだというのがデ・ボノの考えのようだ。実際、彼のアプローチは成功している。AP通信に加え、クオーツCNNユーロニュースアルジャジーラなど世界各地のメディアが話題に取り上げた。

 たいていの場合は無機質な交通ルールに、非常に人間らしい感情的なメッセージを入れ込んだからこそ、そのユニークさが話題を呼んだ今回のダニーデン空港の事例。ルール導入にあたって、ほかの機関にもぜひまねしてもらいたい。