首都圏では8月末から一軒家を狙った「連続強盗事件」が相次いでいる。警察も「闇バイト」を駆使した「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の犯行とみており、実行犯や指示役の発見、逮捕に全力を上げている。
そんな中、「ルフィ事件」の実行犯リーダーだった永田陸人被告(23)に11月7日、東京地裁立川支部で無期懲役の判決が下された。
◆ギャンブル、借金、闇バイト…そして無期懲役に
「ルフィ事件」は’22〜’23年に全国で頻発した強盗事件で、「ルフィ」や「キム」と名乗る顔も姿も見えぬ指示役が高額報酬を謳って、SNSなどで集めた若者に凶悪な犯行を指示し、実行させた。永田は闇バイトで応募し、8つとも言われる「ルフィ」が関わった強盗事件の6事件に関与。多くの事件で実行犯の「リーダー」で、強盗致死罪などに問われていた。
週刊SPA!編集部ではそうした実行犯12人の素顔を取材、一冊にまとめたルポ『「ルフィ」の子どもたち』が再び注目を浴びている。この本で永田の意外な素顔を取り上げているが、本の刊行後も裁判傍聴を続けていた。
求刑が無期懲役だったにもかかわらず、2024年10月23日公判では、永田自身が「極刑を希望します」と涙ながらに陳述したのだ。土木作業員だったが競艇にハマって借金を作り、闇バイトに応募した永田。そんな自分の末路を、彼はどう思っているのか?
◆死なせた90歳女性は「あちゃー、人違いですね」
まずは、永田の犯行を振り返っておこう。
‘23年1月19日、東京・狛江市で90歳女性が手足を縛られ、撲殺されたのち、腕時計や現金が奪われた通称「狛江事件」は実行犯の逮捕により「ルフィ」の関与が白日のものとなった象徴的な事件だ。
その「狛江事件」でリーダーとしてほかの3人に犯行を指示し、強盗致死罪に問われたのが永田陸人被告(23歳=犯行時21歳)の裁判員裁判の第3回公判が2024年10月23日、東京地裁立川支部で開かれた。
永田被告の証言によると、別の実行犯3人とともに女性宅に押し入り、バールなどで全身を殴打。女性が現金の保管場所を言わないと、指示役の「キム」に女性の写真を撮って通信アプリを使って問うと、写真を見たキムからは「あちゃー、人違いですね」と結果的に死亡した被害者女性が人違いだったことを、笑われたことに激怒。この翌日、足立区で永田が起こし、逮捕された強盗未遂事件をお膳立てさせたことも明らかになった。
永田被告はこの公判で、逮捕され反省の気持ちを強めたとして、自ら極刑を望む発言をした。この“望み”は叶わず11月7日に無期懲役が言い渡されたわけだが、10月23日に弁護側の被告人質問で長々と話した永田の陳述をここに紹介したい。
◆永田はなぜ死刑を望んだのか
=====以下、永田陸人被告による最終意見陳述=====
検察官の意見を踏まえてですが、検察官から悪質性について手短に、「組織性、計画性が極めて高く、大胆」かつ、「被害結果が重大で人生を奪われた被害者遺族の深い悲しみ」と言ってくださいました。
極刑を望むという代理人の意見もありました。加えて情状の余地がないと言ってくださり、その理由とは「動機に酌むべき事情なく役割が重大である」「私のせいで凶悪なグループになり、私のせいで犯行がエスカレートされた」と悪い方向になったと言っていただきました。
そして同種事案から厳罰が必要と言ってくださいました。加えて、求刑を聞きました。法定刑は無期か死刑です。動機も利欲的で、酌むべき事情はなく、結果も重大で大きいと言ってくださいました。
◆「すべての人生は自分の意思」
私自身も極刑でも償えないと思います、私自身も極刑を強く希望いたします。求刑で無期懲役と言われましたが、同情の余地がなく犯行は悪質で、残虐で、結果も重大なものです。その責任を果たすのは無期懲役でなく、死刑が一番ふさわしいと、加害者からも強く望みます。
弁護人の主張は私が未熟だと言っていたが、私はもう20(歳)を超えています。成人、大人で21で若年ですが、私は大人なのです。
自分で行い、自分の意思で、すべての人生を作ってきたのです。
すべて私の意思で、関係なく判決の要素として取り入れないでください。私の報酬が5〜10%と少ない点についてもとくに否定はしませんが、報酬をもらえない実行犯もいて、それに比べれば報酬をもらっているので、私がいかに優位、リーダー的な立場にいたかどうかを主張したいです。
私の動機は被害者遺族に全く関係なく、私利私欲、自己中心的な考えでやったもので動機で情状の要素に含めないでください。
◆「日本の裁判は加害者の人権に重きを置きすぎています」
死刑についてもかなり勉強しました、9つの要因があり、すべて頭に入っていて重大さももっと深い意味があります。専門用語を使っても伝わらないので省略しますが、強盗致死と強殺未遂の罪名で過去の判例で死刑が下される。求刑も無期懲役と考えていた通りなのですが、皆さん、これは裁判員裁判です。
裁判員裁判は遺族の感情が尊重されます。被害者の今の苦しんでいる気持ちは理解したうえで判決を下してください。皆様には1票ずつ票があります、しかしこの事件は検察官から説明があった通り、同情の余地がなく、悪質で被害結果が重大なことを考えて被害者の気持ちを考えたうえで下してください。
私のことは一切考えないで、被害者の遺族のみを考えてください。私は日本の裁判に不服があります。加害者の人権に重きを置きすぎています、被害者の気持ちを考えたうえで極刑を下してください、それを心からお願い申し上げます。
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永田は、この陳述で「僕のようなSNSで集められて犯罪するような最低な若者をなくす行いをしたいです。闇バイトしてどうなったか社会に発信できたらいい」とも語った。
また被害者女性の息子は「闇バイトの強盗はいまだ多発している、悲惨な事件を“許さない”と示さないと(闇バイト)は終わらない」と極刑を望んでいた。
この判決が、闇バイトによる強盗の抑止力になることを切に願いたい。
<取材・文/週刊SPA!編集部特殊詐欺取材班 写真/産経新聞社>