8月に還暦という節目を迎えたかれんさん。
今回はその記念に、写真家である夫の上田義彦さんがポートレートを撮り下ろしました。
ふたつのコンセプトで撮影した写真は、特別な記録に。
〝自分のための写真〟を残すことも、贅沢な大人の楽しみと言えそうです。

今年の8月、ついに60歳の誕生日を迎えました。

還暦という大事な節目に何をしようか、と考えて思いついたのが、夫にポートレートを撮ってもらうこと。私たちは写真家とモデルとして出会ったので、写真はずっと撮ってもらっていたけど、「記念日だから撮って」と私からお願いするのは初めてです。

撮影のテーマはふたつ。ひとつは、シャネル風のスーツを着ておめかしした私。
本当はこういうエレガントな60歳になりたかったな……という、叶えられなかった願望が入っています(笑)。

もうひとつは普段の私に近いナチュラルな姿。
しみやしわもそのままに、60歳のありのままの私を撮ってもらうのも今回のコンセプトです。

思い返すと、30年前に母へ結婚の報告に行ったとき、夫は「生涯、かれんさんを撮り続けます」と言ったんです。でも、10年以上経ってふとアルバムを見てみると、私が撮った子どもたちの写真ばかりで、夫が撮ったものは1枚もなくて。「話が違う!」と私がかんかんに怒ったら、ようやく夫が撮りためていた家族写真の整理に着手したんです。

撮ってはいたけれど、当時は仕事が忙しくて、きちんとプリントしないままだったんですよね。10年越しに幼い子どもたちの写真を見たら、「こんなときもあったね」ととても感動して。その写真は家族の宝物になりました。

そうした記憶もあって、還暦を迎えるなら、まずは夫に写真を撮ってもらおう、と考えたんです。年を重ねると、自分の写真を撮る機会は減っていくものですよね。でも生きていたら、いつ何が起きるかわからない。私も今回は、遺影に使ってもいいつもりで撮りました。

家族や友人にお願いしてもいいし、自撮りでもいいので、〝今の自分〟の素敵な一瞬を、写真にとどめておいてはいかがでしょうか。

撮影/上田義彦, 平岡尚子 文/工藤花衣 協力/佐伯敦子

大人のおしゃれ手帖2024年11月号より抜粋
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