多彩なレストランがしのぎを削る池尻・三宿界隈だが、実は、王道から進化系まで、焼肉の名店が少なからず点在する激戦区でもある。
そんなエリアでいま、頭角を現す一軒が『焼肉家 てっちゃん』だ。
圧巻のライブ感も魅力。地元で愛される、町焼肉
誕生して2年に満たないが、すでに食べ慣れた通まで虜にする『焼肉家 てっちゃん』は池尻大橋駅から徒歩5分の好立地にある。
競合店も多い、このエリアにあえて出店した理由を店主の相場佑斗さんが語る。
「都心でなく、町であることを条件に都内でいろいろ探した結果、物件との出合いもあって決めました」
この店の掲げるスタイルは、町焼肉。目指して行く店でなく、地元にあるいつもの店がイメージで「ただいま」と言いたくなるアットホームな雰囲気を大事にしている。
屋号に“家”の字を使うのはその気持ちの表れ。大阪では主人を“○ちゃん”と呼び、そのまま名付けた近所の焼肉店が多いそうで、そこに着目して“ちゃん系焼肉”を自称している。
相場さんは、てっちゃんこと、根岸哲也さんから店を任された2代目だ。
そんな店だから昭和の風情が残る下町でありつつ中目黒や三軒茶屋まで含めると、徒歩圏内の人口数がかなりいる池尻は打ってつけの立地。クリエイターなど、自由業の住民も多く、新業態を喜ぶ素地もあった。
「個性があるお店も多いと聞いていましたから、町焼肉を立ち上げることでどんな化学反応が生まれるか楽しみでもありました」と相場さん。
質を重視した厳選部位をお値頃で楽しめるという愉悦
肝心の焼肉は「ブランドにこだわらず、いいものを仕入れて良価で提供する」ことを徹底。そのため、部位を絞り込んでいる。
鮮度と旨さが共存した肉は、本来の旨みを楽しめる。
柔らかくジューシーなタン元を使用。かぶりつく喜びに浸れるよう分厚くカットした「アツタン」¥1,700。
脂つきの心臓を指す希少部位「アブシン」¥1,700。
極薄黒毛和牛に特製ダレをまとわせ、サッと炙って口溶けを楽しむ名物「飲めるサーロイン」¥1,900。
「切り立てこそ旨い!」と客前でカットする矜持
美味しさの追求から、塊肉より1人前を切り出す“切り立て”、その場で特製ダレとなじませる“揉み立て”、提供したら即の“焼き立て”の3立ても実践している。
カウンターしかない店内は臨場感も抜群で、隣が頼んだ肉が目の前で準備されると「私も!」と注文の幸福な連鎖が起こることもしばしば。
「アツタン」などビジュアル的にも映えるメニューをそろえたのもその効果を狙ってのことだ。
「飲めるサーロイン、そちらも行っちゃいます?」と人懐っこく接客する相場さんの術中にハマるのも楽しく、食べれば、間違いなく美味しくて心が弾む。
裏メニューの〆までハイレベルなのは感動必至
密かに通う著名人も多いが「全然SNSにあがらないんですよ」と笑う相場さん。
本当にいい店は誰にも教えたくないという心理が働いているからにほかならない。
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