男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「この関係は何…?」合コンで出会った彼と、曖昧な関係を半年以上続ける32歳女の末路
「もう土曜日か…」
晴翔から連絡が来なくなって、もうすぐ1週間。私は、先週末の甘い時間を思い出しながら、複雑な気持ちと追いLINEをしたい気持ちの間で激しく揺れている。
ー あ~。とにかく今は胸が痛い。
先週土曜日の夜は、晴翔と素敵なお店で食事をした後、彼の家に行き楽しい時間を過ごす…という、理想的なデートをしていた。
控えめに言っても、最高の週末だった。
しかし今週は、その状況が一変。翌日に軽いLINEのやり取りをした後、急に連絡が来なくなった。
やっぱり、ホイホイと自宅へ行ったのが悪かったのだろうか。軽い女だと思われて、飽きられたのだろうか…。
後悔と自責の念に駆られて、ひたすら彼からの連絡を待っている私がいる。
Q1:男が食事へ誘った理由は?
晴翔とは、友人の紹介で出会った。私より3歳年上で姉御肌の佳奈子さんに呼ばれて参加した会に、晴翔はいた。
綺麗な肌に、好みの塩顔でシュッとした顔立ちをしている晴翔を、最初から目で追っていた私。
女慣れしているのか、人の懐に入るのが上手いのか…、晴翔はごく自然に距離を詰めてきた。
「楓ちゃん、何飲んでるの?」
「私はハイボールいただいてます」
「そうなんだ。じゃあ僕も、次から楓ちゃんと同じのにしようかな」
― え?私と同じのにするの?
戸惑ったけれど、その後も晴翔は私に話しかけ続けてくれる。
「楓ちゃんって、芸能人のあの人に似てるって言われない?」
そう言いながら晴翔が名指ししてきたのは、スタイル抜群で超絶美女な女優さんの名前だった。
たしかに私は黒髪ロングで、目鼻立ちはハッキリしているからか、前にも一度、似ていると言われたことはある。
「そんなことないですよ!」
否定してみたものの、やっぱり嬉しい。
そしてこの翌日、晴翔から個別で連絡が来て、恵比寿にある『カルネジーオ イースト』で、1週間後デートすることになった。
「この前はありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「楽しかったね」
屈託のない、クシャッとした笑顔を私に向けてくる晴翔。その笑顔が可愛くて、私は思わず「眩しい…」とさえ思ってしまう。
「楓ちゃんは、普段は何してるの?」
「私は歯科衛生士をしていて」
「え?そうなの?すごいね」
「全然すごくないですよ。医者ではないですし」
「いやいや、すごいよ」
私の話も真剣に聞いてくれて、褒めてまでくれる。顔もいいし性格まで良いときた。この時点で、私の心はもう持って行かれていたのかもしれない。
「晴翔さんは?何をされているんですか?」
「僕は商社に勤めているよ」
「え?すごい」
そしてまさかの、大手町にある総合商社にお勤めだった晴翔。
性格の良さに加えて、年収も1,500万はある。今のところ、どこも欠点が見当たらない。
― あれ?この人、最高じゃん…。
そう気が付いてしまった私は、必然的に、晴翔とどうにかしてもっと仲良くなりたい欲が湧いてくる。
黒毛和牛を挽いた、ほぼレアな仕上がりの「ハンバーグ」を食べながら、とりあえず戦略を練ることにした。
「ちなみに…晴翔さんって、独身ですか?」
「え?もちろん!むしろ結婚願望、かなりあるよ」
独身で、しかも結婚願望がある33歳商社マン…。こんな素晴らしい優良物件、今までどこに隠れていたのだろうか。
「どういう子がタイプとかあるんですか?」
「僕はそうだな…自分を持っている子かな。楓ちゃんは?今彼氏とかは?」
「今いないんです」
「え〜こんな美人なのに!しかも性格も良いし…世の中の男性は、見る目がないね」
褒め上手な晴翔に、私もつい乗せられてしまう。
結局この日のデートは二人でかなり盛り上がり、2軒目まで行って解散となった。
Q2:お泊まりの翌日。急に彼の態度が変わった理由は?
初デート以降、こまめに連絡をくれた晴翔。「おはよう」とか「おやすみ」とか、たわいもない会話が楽しい。
そしてすぐに二度目のデートもやってきた。
この日は土曜日だったので、18時にお店に集合した私たち。食事もお酒も美味しくて、ついつい飲み過ぎてしまったせいもある。
食事を終え、2軒目へ移動してもお互い盛り上がっていた。
「楓ちゃんといると、楽しいな」
「私も!晴翔さんといると楽しいし、もっと一緒にいたいって思っちゃう」
「何か、初めて会った気がしないんだよね。もっと前から知っていたというか…」
「わかる」
運命の人は、出会った時に「懐かしさを覚える」と聞いたことがある。
― これはもはや…。
そう思っていると、晴翔も同じように考えてくれていたらしい。ギュッと手を握られ、私たちはお互い顔を見合わす。
そしてお店を出た後、無言で一緒にタクシーに乗り、私たちは晴翔の家へと向かった。
「あ…ちょっと待って」
晴翔の家の前にコンビニがあったので、一旦お泊まりセットや飲み物などを買ってから、晴翔の家へお邪魔することになった。
「お邪魔します」
白金にある彼の自宅は意外に綺麗で、私はソワソワとしながらつい家を見渡してしまう。
「そんな見ないで(笑)何も出てこないよ」
「あ、ごめん。つい…。一旦、化粧落としてきても良い?」
「うん、もちろん」
そして洗面台へ行き、私は先ほど買ったお泊まりセットで化粧を落としてから、薄暗くなった部屋へと戻る。
「私、すっぴんだとだいぶ違うから恥ずかしいな…」
「そうなの?照明が暗いから、わからないよ」
もちろん、私もすぐには許したわけではない。一応、ちゃんと確認はした。
「晴翔くん。私は、一晩限りの関係とかになるのが嫌で…」
「もちろん。俺も33歳だし、“遊びたい”とかないよ。一夜限りで終わるとかは基本的にないし、ちゃんと考えてるから」
この言葉を信じた私が馬鹿だったのだろうか…。私たちは一夜を共にし、朝を迎えた。
しかし翌朝。目が覚めると、一瞬ここがどこだかわからなくなった。
「おはよう…」
隣にいた晴翔を見て、ようやく昨夜のことを思い出した私。
昨日は酔っていたけれど、冷静になると二度目のデートで…しかもハッキリと「付き合う」とかがないまま泊まってしまったことになる。
― え、ヤバくない?私、終わったかも…。
そう思うと、居ても立ってもいられなくなった。じっと私のことを見てくる晴翔の視線にも耐えられない。
「ごめん、帰るね」
「え?うん、わかった」
とにかくそそくさと一目散に、逃げるようにして晴翔の家を出た。
しかも外へ出ると朝陽が眩しくて、その眩しさがさらに後悔の念を強くさせる。
― あぁ…最悪だ。
そしてこの嫌な予感は当たってしまい、結局この日を境に、急に晴翔から連絡は来なくなってしまった。
理由は何となくわかっている。軽い女だと思われ、そして飽きられたのだろう。でも晴翔は「一夜限りで終わるようなことはない」と言っていた。
それなのにどうして彼は連絡をくれないのだろうか…。
▶前回:「この関係は何…?」合コンで出会った彼と、曖昧な関係を半年以上続ける32歳女の末路
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:11月17日 日曜更新予定
お泊まり後に男の態度が変わったワケは…