「あの人はサイコパスだね」。一見、自信にあふれ魅力的に見えるが、関わるほどに常識外れの冷徹さなどに驚かされる人物をさして、そう評する場面がある。
では、「サイコパス」とは具体的にどんな類型の人物なのか。実は明確な定義はない。「精神病質者」と訳されるが、それってなに?というのが実際のところだ。
本連載では、サイコパスについて、ビジネス心理学の第一人者でもある内藤誼人氏が、その特徴、対処法、存在が多い職業などについて、時にデータを交えながら解説する。
第五回では、”2つの顔”を持つサイコパスのウソの達人の側面にフォーカスし、データとあわせて紹介する。
※この記事は、内藤氏の著作『面白すぎて時間を忘れるサイコパスの謎』(三笠書房)より一部抜粋・再構成しています。
道徳心ゼロだからこその芸当
サイコパスは、「道徳心」などこれっぽっちも持ち合わせていません。そのため、自分に有利になるのであれば、平気な顔でウソをつけます。
カナダにあるブリティッシュ・コロンビア大学のアリシア・スピーデルは、六十名の非行少年・少女を対象に、サイコパス度を三段階(高、中、低)で測定。
そして、「自分が利益を得るためなら、どれくらい平気な顔でウソをつけるか」について答えてもらいました。
すると、次のグラフのような結果が得られました。
※数値は0点から2点で測定 (出典:Spidel, A., et al., 2011より)
サイコパスは自分の利益のためなら、ウソをつくことにためらいがないことがわかります。
ただ、ウソをつくことすべてが悪いというわけではありません。
ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズもサイコパス気質!?
ビル・ゲイツにも、スティーブ・ジョブズにも、まだ開発されていない商品を堂々と売り込み、受注してから大急ぎで商品を開発して間に合わせた、という逸話がいくつもあります。
「平気な顔でウソをつける」という点では、ビル・ゲイツも、スティーブ・ジョブズも、サイコパス気質だと言えなくもないのです。
しかし、考えてみると、ビジネスの世界においては、大胆にウソをつけるくらいの人物でないと、大きな成功は望めないのかもしれません。
なぜなら、みえすいたウソをつけば、すぐにばれ、信頼は失墜します。だからこそウソをつくにしても、バレないように内容に整合性を持たせなければなりません。
愚かな人は内容が支離滅裂で、すぐにバレるウソをつきます。しかし、サイコパスのつくウソは入念に練り上げられており、なかなかバレません。
ウソをつくことはいい事ではありませんが、どんなことも”一級品”に仕上げる。サイコパスがウソつきの達人でもあるのは、それだけ優秀な裏返しともいえるわけです。