男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:初めてお泊まりした翌日から、急に彼から連絡が来なくなった…。これって、遊ばれた?
急に寒くなった東京。金曜20時、仕事が終わり、冷たい風が吹き荒れる丸の内のビル群の間を歩きながら、友人達が待つ店を目指す。
「さっむ…」
そう呟きながら、背中を丸める。
でも僕が身にしみるほどの寒さを感じているのは、身体的な意味合いだけではない。3ヶ月前から連絡を取り続けていた沙希から、急に返事が来なくなったからだ。
先ほども仕事が終わって、会社を出る際に「仕事終わった!」と連絡をしている。けれども、まだ既読にすらなっていない。
何度もデートをしたし、かなりマメに連絡もしていた。不安にさせるようなこともしていない。むしろ、最後のデートでは「次回は付き合えるかも…」と思うくらいいい感じだった。
それなのに、どうして急に彼女の態度は変わってしまったのだろうか。
Q1:女性が言う「いい人」の本当の意味は?
沙希とは食事会で出会った。肌が綺麗で目がぱっちりしていて、最初から可愛いなと思っていた。
「沙希さんは、何のお仕事をされているんですか?」
「私は生命保険会社で働いています。悠さんは?」
「僕は金融系です」
現在大手メガバンクに勤める29歳の僕。一応都内の有名私大を卒業し、条件的には悪くないと思う。今年30歳になるという沙希とは、年齢はほぼ一緒だった。
「そうなんですね!オフィスはどちらですか?」
「僕は大手町です。沙希さんは?」
「え!私も大手町です。近いですね!…ちなみに、どの辺りですか?」
確認するとお互いオフィスも近く、まさかの徒歩圏内だった。
「ランチできちゃいますね(笑)」
「ですね。沙希さん、ご連絡先お伺いしてもいいですか?もし本当にランチできたらしましょう」
「いいですね。でもランチじゃなくて、普通に仕事終わりに飲む…とかはどうですか?」
「最高です」
こうして驚くほどサクサクと話が進んだ。食事会から1週間後、僕たちは宣言通り、丸の内で仕事終わりに『ザ・カフェ by アマン』で一緒に飲むことになった。
「あ〜〜美味しい!やっぱり仕事終わりのビールって最高ですよね」
ふわふわとした見た目なのに、意外にも豪快な沙希。ビールを一口飲んだ後のあまりにも幸せな表情に、僕は思わず笑ってしまう。
「まるでビールのCMみたいに飲みますね」
「すみません、声が大きかったですか?」
そう言って恥ずかしそうに口元を押さえる沙希。その仕草も可愛くて、僕は慌てて首を振る。
「全然!美味しそうに飲むな〜と思って、いいなと思っていました」
「ありがとうございます」
今日は初めての二人きりでの食事だったから、少し緊張していたけれど、沙希は気さくで話しやすくすぐに打ち解ける。それに、話せば話すほど彼女は魅力的な人だった。
「沙希さんって、見た目とのギャップがあるって言われませんか?」
「たまに言われるかも…?」
「可愛いのに、良い意味でサバサバしていていいですよね」
「嬉しい!悠さんは…優しそう」
「それ、褒めています?女性が男性に言う“優しそう”って、褒め言葉ですか?」
「褒めていますよ!」
ケラケラと笑う沙希に、僕はどんどん惹かれていく。ただ、女性が「優しそう」と言うときは、別の意味も含まれることもあると僕は思っている。
「優しそうって、裏を返せば『恋愛対象には入らない』ってこともありますよね」
「そうなんですか?」
「よく言いません?“良い人”って、本当は“どうでも良い人”とか」
「初めて聞きました」
そんな会話で盛り上がっているうちに、気がつけば食事が終わり、帰らなければいけない時間になっていた。
「沙希さん、またすぐに」
「はい。またすぐに」
こうして、僕と沙希は、仕事終わりに二人で会うようになっていった。
Q2:女が三度目のデート以降で態度が変わり始めた理由は?
初デート以降、僕は朝晩2回くらい、こまめに沙希に連絡をしていた。「女性はマメな男性が好き」というし、僕自身も連絡をするのは苦ではないからだ。
そして気がつけば三度目のデートとなった金曜の夜。
僕は東京駅が綺麗に見える店を予約していた。
「わぁ…綺麗!!」
窓から見える、ライトアップされた東京駅。それはとても綺麗で、沙希は自分のスマホで夢中で写真を撮っている。
「綺麗だよね…でもさ、夜景を見ていると悲しくなる時ってない?」
「どういうこと?」
目を丸くして下から見上げてくる沙希。
「例えばどこかのオフィスの電気がついていたら、こんな夜中でも、まだ働いている人がいるんだなーと思うと切ない気持ちにならない?」
昔から、夜景を見るとなぜか切なくなるのは僕だけだろうか。
「言われてみればそうかも…」
「あといつまで自分はこの社会の歯車の中で踊らされているんだろう…とか。色々考えるよね」
「悠くんすごいね。夜景見てそこまで考えたことなかったよ」
沙希が笑うので、僕もついつられて笑ってしまう。
「とりあえず、ご飯食べよう!」
こうして僕たちはこの日もいつも通り、食事をしながらとても楽しい時間を過ごした。
「悠くん最近お仕事は?忙しい?」
「うん、おかげさまで。でも少し落ち着いてきたかな」
「そうなんだ。毎日連絡くれるのは嬉しいんだけど…。仕事の邪魔をしていないかな?と心配になっちゃって」
「ごめん、むしろ迷惑だった?送りすぎだよね」
最近はさらに沙希と仲良くなってきているので、「おはよう」とかくだらないことも送り合うようになっていた。
しかし沙希にとっては、負担だったのだろうか。
「ううん。ただ朝と晩にまめにLINEもらうことが久しぶりで。前の彼氏とか、本当に連絡してこない人だったから…」
「そっか、ごめん。気をつける」
「違うの!前の彼は逆に一緒にいない、会えない時間に彼が何をしているのかわからなくて、ずっと不安だったの」
「だよね?だからその不安を解消したくて」
やっぱり、好きな女子にはこまめに連絡するに限ると思う。こうやって不安も解消させてあげられるし、僕自身も、好きな子からの連絡は嬉しい。
「悠くんって、本当に優しいよね。私のことすごく気遣ってくれるし」
「もちろんだよ。沙希ちゃんのこと、大切にしたいと思ってるから」
「ありがとう。嬉しい」
― これって…ほぼ告白していないか?
そう思ったけれど、沙希もまんざらではなさそうだ。嬉しそうな顔をしているし、とにかく一緒にいる時は楽しそうにしてくれている。
― よし、次こそは。
そう思って、この日僕たちは解散した。
しかしここから、なかなか沙希に会えなくなった。最初は「ごめん、今月仕事がめちゃくちゃ忙しくて」という理由だったけれど、段々と連絡が返ってくるスピードさえ遅くなってきた。
そして気がつけば、パタリと返信が途絶えてしまった。
街はもうイルミネーションが始まっている。それなのに、僕の心だけ真冬の嵐が吹き荒れている…。
▶前回:初めてお泊まりした翌日から、急に彼から連絡が来なくなった…。これって、遊ばれた?
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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女が急に連絡を返さなくなった理由は?