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●こだわりの酒屋とそこからお酒を仕入れる飲食店、2つの視点から紐解くお酒、料理の魅力に迫ります

 川崎においしいお酒を扱う酒屋があります。蔵元の情熱とこだわりを深く理解し、酒一滴一滴に込められた物語を感じ取る。味と風味を熟知し、来店する地元の人や飲食店の好みに合わせたお酒を提供する酒屋、『地酒や たけくま酒店』。川崎の日本酒を扱う飲食店界隈では有名な、こだわりの酒屋です。
“こだわりの酒屋はおいしいお酒を知っている、おいしい飲食店はこだわりの酒屋からお酒を仕入れているはず”という仮説から『地酒や たけくま酒店』の2号店となる元住吉店店長・佐藤温志さんに相談して実現した、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を発掘する本企画。

 第4回は『地酒や たけくま酒店』と、食材と手作りにこだわり、常に新しいことへ挑戦する『フォレストコーヒー』とのコラボイベント「森のくまさんプロジェクト~日本酒NIGHT~『炭火焼きと寿司と秋酒』」に編集部でお邪魔しました。


大盛況のイベント

 佐藤さんが厳選した日本酒と『フォレストコーヒー』の美味の数々。期待せずにはいられません。

 え!?『フォレストコーヒー』ってカフェじゃないの?日本酒NIGHT?

 詳しくは後ほど説明します。まずは「日本酒NIGHT」。

森のくまさんプロジェクト~日本酒NIGHT~「炭火焼きと寿司と秋酒」


この日はコーヒー焙煎スペースが日本酒ブースに。お酒のメニューは佐藤さん直筆

 この日のために、佐藤さんが用意したお酒は以下の通り(メニューより抜粋)。

「東籬(とうり) 純米吟釀」(石川)
「純米酒」と「吟醸酒」は別の思想と提言する菊姫が構想5年で完成させた「純米吟醸酒」。

「國権(こっけん) 純米 垂れ口 氷温生熟成」(福島)
マイナス7度で氷温貯蔵された純米生原酒。蔵で一番古いヴィンテージを出してもらいました。

「雨降(あふり) 山廃純米 雄町 倍麹」(神奈川)
旨み甘みが増し増しでも、水の硬度と酸にてキレが良く盃がすすむ熟練杜氏の成せる技。

「日日(にちにち) 生もと 旧米田村産山田錦」(京都)
始めの一杯から締めの一杯まで。そしてまた明日。繰り返される日々に寄り添う酒。

「旭菊(あさひぎく) 純米吟醸」(福岡)
「飲み手が今の酒を色々飲んだ後に辿り着く酒でありたい」と蔵元より。こんな味の酒が待っている。

「隠し酒二種」

ミード(蜂蜜酒)「WICKED WAY MEAD『SERENITY』」(福島)
京都の山藤蜂蜜と白ワイン酵母が協奏するエレガントな香り。至高の一杯とはこのこと。

 目標は全種類味わうこと。中でも気になるのは「隠し酒二種」。とりあえず、隠し酒はなにか?と佐藤さんに聞いてみます。

「いきなり隠し酒ですか?色々飲んでからにしてくださいよ笑。楽しみにしていてください」と笑顔の佐藤さん。

 隠しているのに最初からバラすはずはありません。とりあえずビールということで、クラフトビールのメニューを吟味。

 そう、『フォレストコーヒー』にはクラフトビールが8tapもあるんです。店名からは想像もつきません。

コーヒー店なのに、お酒に合う料理とお寿司がおいしい!?


フォレストコーヒーのマスター今宮義昭さん。イベントは大盛況、常に調理していました

『フォレストコーヒー』は店名の通り、オリジナルブレンドをはじめとした数種類の自家焙煎珈琲を常時用意してあるお店なのですが、クラフトビールはもちろん、ワイン、日本酒にもこだわるお店なのです。

 そして、おいしい食事を追求しており、こだわっているのは素材と手作りであること。ランチで人気の黒毛和牛を使ったハンバーグは毎日肉を挽いて作っています。野菜、魚、肉は産地直送、常に新メニューを開発し新しい調理方法にも挑戦しています。

 近年挑戦して大好評なのがお寿司です。これまた、店名からは想像できません。


この日のメニュー。どれも日本酒に合うに決まっています

 オーダーしたのは「寿司 五貫」「函館直送!まがれいとヒラメの薄造り」「大山鶏と里芋の煮っころがし」「なめろう」「サロマ湖直送!ほっけの糠漬け」「出汁巻たまご」などなど。

「お酒はもちろん、料理がどれもおいしい!お寿司もおいしい!カフェなのに、お寿司がおいしいってどういうこと!?」

 料理を食べるたび、お酒を飲むたびに編集部メンバーが驚きとおいしい喜びを口にします。

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イベントも終盤、いよいよ隠し酒が登場


ひとつ目の隠し酒「満寿泉 純米原酒 SUPECIAL 2016」

「隠し酒を紹介しますね。こちらは『満寿泉(ますいずみ) 純米原酒 SUPECIAL 2016』と言って、富山県の桝田酒造店という蔵元のお酒です。ボルドー産白ワイン樽で1年ほど熟成させ、瓶詰めしてから今年まで寝ています。入口の香りは洋酒の様で、熟成純米酒らしい旨味と樽由来の淡い渋み、タンニンが絡まり味わいに深みが出ています」

 確かに、鼻に抜ける風味、香りがウイスキーっぽいというか。料理もお酒によって、味わいが変わるのが楽しい。


飲み終わるか終わらないかの絶妙なタイミングでふたつ目の隠し酒を持ってくる佐藤さん。「飛鸞 絆(KIZUNA)」

「こちらは『飛鸞 絆』。長崎県平戸島、森酒造のお酒です。『飛鸞HIRAN』というお酒は各種スペックを公開していません。情報から先入観を持たずに飲んだまま感じてほしいという蔵の想いがありますから。とはいえこのタイミングでお出しするお酒なので、そりゃあハイスペックですよ(笑)。食中に向く品の良い甘味苦味もありながら、スラーッと飲んでいただけます」

 最後の最後で、すっきりした余韻のお酒を持ってくるなんて流石の構成。と、感心しながら飲んでみる。すっきりしているとはいえ、もう一杯飲みたくなるお酒でもあるから、なかなか終われません。

 結果、料理もお酒も心ゆくまで楽しんだ夜となりました。


WICKED WAY MEAD「SERENITY」。京都産山藤蜂蜜と仏南部モンペリエ白ワイン酵母で造られる

 特筆すべきは、佐藤さんが注目しているミード(蜂蜜酒)を味わえたこと。勧められなければ飲む機会のなかったお酒も、こういう場で経験できるのも楽しみのひとつです。

「養蜂家であり醸造家であるエリックさんのミードは、飲むと香りと多幸感が体に広がります。日本でこんなミードと出会えて嬉しい」と佐藤さん。

「何これ…、美味っしい!」と方々から聞こえてきます。

 このイベント、グループで参加した方が様々なお酒と料理を楽しめていい。編集部で参加して正解。ひとりで参加していては、ここまで辿り着けなかったかもしれない。

 次回の会は2025年2月22日(土)を予定しているそうです。2(ふー)2(ふー)2(ふー)で「おでんの日」らしいので「おでん」。今から楽しみです。

アフタートーク、『フォレストコーヒー』と『地酒や たけくま酒店』のおいしい関係


左:今宮さん 右:佐藤さん

 イベントの数日後、なぜコーヒーのお店がお寿司を握るようになったのか?、なぜ日本酒を出すようになったのか?そんな疑問を解決すべく、二人にお話を伺いました。

今宮さん:お客さまにお店に来て楽しんで、お腹いっぱいになって、おいしいと思って満足してもらえるように日々考えています。インパクトのある料理とは何か?カフェだからって洋食を突き詰めて、フォアグラやトリュフを出しても驚きはないですよね。出てこなさそうなものが出てきて、嬉しくて、お得感があるのが良い。そうしたらお寿司に辿り着いたんです。

 飲むこと、食べること、お寿司を握ることの共通点は、ゴールまでの道のりが果てしないということ。旨味や感情に限界はないので、常にバージョンアップ、ブラッシュアップしていく必要があると考えています。
 アルコールも最初はクラフトビール、そしてワイン、日本酒と出すようになったんです。日本酒は最初1本仕入れる程度だったのですが、佐藤くんが2本入れてみませんか?と提案してくれて。

佐藤さん:味の好みがあるので、2本はお店にあった方がいいですよ、と提案しました。そうすると実は日本酒好きな常連さんが結構いらっしゃったみたいで、「こんなのはないの?あんなのはないの?」と色々なご意見があったそうです。

 それを聞きながら合いそうなお酒を2本ずつ提案していたら、突然マスターが「16本入る日本酒セラーを導入するから酒選んどいて」、と笑。これは楽しいことになる!と思って。それでいよいよお酒を仕入れてもらったのですが、ちゃんと回転するんですよね。そのおかげでお客さまの好みの傾向も見えてきました。

 今はおおよそ3タイプに分かれると思っていて、それからはタイプに合わせた日本酒の相談をしてもらっています。そうすると、また常連さんから「もう少しこういうのがいい」とか「これが良かった」などフィードバックをいただいて。お客さまの顔も分かるので、近い距離で付き合わせていただいています。

今宮さん:日本酒はコーヒーと似ていて、ストーリーが重要だと思います。作り手の思いや、作られた地域の風土などもおいしい理由になります。休みの日には、地方の酒蔵やワイナリー、酒屋さんなどを訪ねて、話を聞いて仕入れたりもします。

 目標は、他にはないことをやること。カテゴリーに囚われず、お客さんが心配するようなことをやっていきたいです笑。ラベルを貼らず、カテゴリーに囚われないことをやっていくのが面白い。お客さんも喜び、驚き、新しい発見になります。美味しいと楽しいを追求していけば何でもありです。

 そんな中で思いついた事の一つが、たけくまさんとのイベントでした。「森(=フォレスト)のくま(=たけくま)さんプロジェクト」です。毎年の春、秋、冬とやっていてもう8回目です。

今回の一杯サービス企画の日本酒は…


『フォレストコーヒー』が今回仕入れたお酒と一杯サービスのお酒を紹介。左から「満寿泉 マス印 からくち」「櫛羅 純米80無濾過生原酒」「寒菊 電照菊 山田錦50 純米大吟醸 無濾過生原酒」

佐藤さん:『フォレストコーヒー』さんの常連さんの日本酒の好みのタイプが3つあるといいましたが、例えばひとつは「寒菊 電照菊 山田錦50 純米大吟醸 無濾過生原酒」のように、フルーティーな芳醇旨口のお酒。日本酒の入門者から手練れまで人気の高い銘柄です。

 もうひとつは、「櫛羅 純米80無濾過生原酒」。ほのかな香りでドライなお酒。米の旨味もありつつ、酸味とガス感があることでキリッとする絶妙な仕上がりです。

 あとひとつは、いわゆる辛口で日本酒らしさを忘れさせない酒。それで今回、一杯サービス企画に良いと思って選んだのは「満寿泉 マス印 からくち」。普通酒です。富山のお酒ですが、最近仕入れている食材は北陸産が多いということだったので、同じ土地の水で醸したお酒を合わせるのもいいだろうと。地元で長く愛される、冷酒から燗酒まで、食事の最初から最後まで一緒に楽しめるお酒です。

まとめ

『地酒や たけくま酒店』と『フォレストコーヒー』のおいしい関係、いかがでしたでしょうか。引き続き、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を追いかけます。
次回はどんなお酒とどんな飲食店が登場するか?お楽しみに。

*みなさんの好きなお酒の銘柄を教えてください。好きなお酒の思い出、エピソードなどもあると思います。是非、『好きなお酒の銘柄』を下記のフォームにお寄せください。
●『好きなお酒の銘柄』書き込みフォーム
https://forms.gle/ayiCm2vadPRo9A4x9

無くなり次第終了!「満寿泉 マス印 からくち」一杯サービス企画

『フォレストコーヒー』のご協力のもと、お店で「食楽webのinstagram」をフォロー、フォローしている画面を見せると「満寿泉 マス印 からくち」一杯サービス!

 無くなり次第終了です!

●SHOP INFO

フォレストコーヒー

住: 神奈川県川崎市中原区井田中ノ町33-1
tel:044-754-1156
https://www.instagram.com/forestcoffee_motosumi/?hl=ja
*営業時間などは店舗SNSでご確認ください

●SHOP INFO
地酒や たけくま酒店
本店
住:神奈川県川崎市幸区紺屋町92
TEL:044-522-0022

元住吉店
住:神奈川県川崎市中原区木月3丁目10-17
TEL:044789-5561

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(企画・取材◎ヨネダ商店)