「それ、どういう意味?」夜景が綺麗に見えるイタリアンでのデート。30歳女が引いた男の言動

今週のテーマは「マメな男だったのに、女から返信が来なくなった理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:「1日2回は多い?」付き合う前のアラサー男女、適度な連絡頻度の正解は?

金曜19時半。悠から届いた一通のLINEの通知をじっと見ながら、どうしたものかと考える。

気がつけばあっという間に冬が来て、もうクリスマスイルミネーションの季節だ。

今年で30歳になる私は、もちろん彼氏が欲しい。年末年始のイベントシーズンを、ひとりで過ごせるほど心は強くない。

「でもなぁ…」

悠はとても良い人だし、自分に対して好意を持ってくれていることも知っている。

だからこそ、「彼を逃していいの?」と自問自答を繰り返している。

でもやっぱり、どう返信すれば良いのかわからず、スマホをバッグの中にしまった。



A1:他意はなし。素直に“優しくていい人だな”と思った。



私が悠と出会ったのは、友人か開催してくれた食事の席だった。華やかさはないかもしれない。でも誠実そうで、良い人だな…というのが、私の彼に対する第一印象だった。

「沙希さんは、何のお仕事をされているんですか?」

「私は生命保険会社で働いています。悠さんは?」

「僕は金融系です」

そんな会話をしているうちに、悠は今年29歳で、大手メガバンク勤めだということ判明し、話が盛り上がる。

「そうなんですね!オフィスはどちらですか?」

「僕は大手町です。沙希さんは?」

「え!私も大手町です。近いですね!…ちなみに、どの辺りですか?」

お互いのオフィスを言い合うと、かなり近くて思わず笑ってしまった。

「ランチできちゃいますね(笑)」

「ですね。沙希さん、ご連絡先お伺いしてもいいですか?もし本当にランチできたらしましょう」

「いいですね。でもランチじゃなくて、普通に仕事終わりに飲む…とかはどうですか?」

「最高です」

話は一気に進み、私たちはこの翌週、仕事終わりに『ザ・カフェ by アマン』で、軽く食事をすることになった。

「あ〜〜美味しい!やっぱり仕事終わりのビールって最高ですよね」

今日は忙しかったので、ビールを飲んだ途端に思わず素の声が漏れてしまった。

― あ…これは可愛げがなかったかな…。

そう思ったけれど、悠はむしろ優しい眼差しを私に向けてくれている。

「まるでビールのCMみたいに飲みますね」

「すみません、声が大きかったですか?」

「全然!美味しそうに飲むな〜と思って、いいなと思っていました」

「ありがとうございます」

このやり取りで、彼が良い人であることが伝わってきた。

「仔羊腿肉ローストと島オクラ グリーンペッパーソース」などを食べながら話していくうちに、さらに悠の優しさを感じられることになる。

「沙希さんって、見た目とのギャップがあるって言われませんか?」

「たまに言われるかも…?」

「可愛いのに、良い意味でサバサバしていていいですよね」

何でも褒めてくれる悠。だから私も、褒め返したいと思って素直に言葉にしてみた。

「嬉しい!悠さんは…優しそう」

「それ、褒めています?女性が男性に言う“優しそう”って、褒め言葉ですか?」

私的には、もちろん良い意味で“優しい”と言った。でも悠は、この言葉が気に入らなかったのか、少しだけ違う角度で返答をしてきた。

「優しそうって、裏を返せば『恋愛対象には入らない』ってこともありますよね」

「そうなんですか?」

「よく言いません?“良い人”って、本当は“どうでも良い人”とか」

― そこは素直に受け止めればいいのでは…?

そう思ったけれど、もしかしたら私の言葉が悪かったのかもしれない。少し反省しつつ、一旦聞き流してデートを進める。

そして結局この後も、私たちはデートを続けることになった。

ただ予想外だったことが、もう一つあった。

悠はほぼ毎日私に連絡をくれるような“マメな人だった”、ということだ。



A2:悲観的で一緒にいて疲れてしまったから。



私が驚いたのは、悠のマメさだった。

初デートを終え、二度目のデートも比較的早くやってきたのだけれど、その間に朝晩2回ずつ、「おはよう」とか「おやすみ」とか送ってきてくれる。

それはそれで嬉しいけれど、私はふと考える。

― あれ?私たち、まだ付き合ってないよね…?

女は、どうしてこうも面倒なのだろう。連絡をくれない男性にはヤキモキし、腹を立てる。しかしその一方で、連絡をくれ過ぎる男性には興味がなくなっていく…。

とはいえ、悠は優しいし誠実なことが本当によく伝わってくる。だからこそ、私は大切にしたいと思っているし、三度目のデートも楽しみにしていた。

しかも悠は東京駅と丸の内のビル群が綺麗に見える、素敵なイタリアンレストランを予約してくれていたのだ。

「わぁ…綺麗!!」

東京らしい夜景は本当に美しくて、私は思わずスマホを向ける。「あぁ…綺麗だな」そう改めて、目の前の絶景に浸っている時だった。

後ろに立っていた悠が、不思議なことを言い始めた。

「綺麗だよね…でもさ、夜景を見ていると悲しくなる時ってない?」

「どういうこと?」

少し意味がわからなくて、私は悠のほうに体を向ける。

「例えばどこかのオフィスの電気がついていたら、こんな夜中でも、まだ働いている人がいるんだなーと思うと切ない気持ちにならない?」

― 悲観的すぎない…?

そう思う私は、楽観的過ぎるのだろうか。

「言われてみればそうかも…」

「あといつまで自分はこの社会の歯車の中で踊らされているんだろう…とか。色々考えるよね」

「悠くんすごいね。夜景見てそこまで考えたことなかったよ」

考えることは、人それぞれだし価値観も人によって違う。でもせっかくのこの美しい景色を前にして、わざわざそんなことを言う必要はあるのだろうか…。

「とりあえず、ご飯食べよう!」

話を変えたくて食事の流れへ持って行ったけれど、どこかモヤっとした気持ちが残る。

そして食事の最中も、やっぱりどこか悠は悲観的だった。

「悠くん最近お仕事は?忙しい?」

「うん、おかげさまで。でもちょっと落ち着いてきたかも」

「そうなんだ。毎日連絡くれるのは嬉しいんだけど…。仕事の邪魔をしていないかな?と心配になっちゃって」

連絡をもらえるのは嬉しい。安心するし、ありがたい。でもこちらも忙しい時は返信ができないときもある。

「ごめん、むしろ迷惑だった?送りすぎだよね」

「ううん。ただ朝と晩にLINEもらうのが久しぶりで。前の彼氏とか、本当に連絡してこない人だったから…」

男性の連絡頻度は、何に比例するのだろうか。愛情?暇な時間度合い?もはやわからなくなってきた。

「毎日連絡をくれるから、私のことが好き」。そうイージーに考えられるには、もう私は大人になり過ぎたのかもしれない。

「そっか、ごめん。気をつける」

「違うの!前の彼は逆に一緒にいない、会えない時間に彼が何をしているのかわからなくて、ずっと不安だったの」

「だよね?だからその不安を解消したくて」

悠は本当に優しいと思う。

でも優しさは、本当に私に矢印が向いている優しさなのだろうか?

もしかするとこの優しさは、悠自身の不安解消のための、連絡のマメさなのかもしれない。

それに最近は、一緒にいると私が気を使うようになっている。

「悠くんって、本当に優しいよね。私のことすごく気遣ってくれるし」

「もちろんだよ。沙希ちゃんのこと、大切にしたいと思っているから」

「ありがとう。嬉しい」

彼がまっすぐで良い人だからこそ、無駄に傷つけるのは申し訳ないし、そんなことはしたくない。

そう思えば思うほど、悠の気持ちに応える準備ができていない私は、どう対応すれば良いのかわからなくなる。

― どうしよう…。

色々考えると、余計に返信のスピードもどんどん遅くなっていく。

重過ぎてもダメだし、軽過ぎてもダメ。

連絡しなさ過ぎはNGだけど、あまりにも頻度が高いと、大人の恋愛ではうっとうしくもなることもある…。

恋愛って難しいし、何よりも女って本当にワガママだと、自分でも思う。



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