父の亡き後、家族一丸となって店を守っている。左から妻の亀田あいこさん、穀さん、母の弘子さん、穀さんの姉

●最近、町中華で料理を酒と楽しむ人が増加中。年間600杯を食すラーメン女子・森本聡子さんも“町中華飲み”にハマっている一人。そんな森本さんに、練馬の名店『亀楽』に案内してもらいました。

 ラーメン店は数あれど、昔ながらの町中華が少ない練馬で57年続く人気店『亀楽』。10年程前にこの店と出合って以来、虜になったという森本さんは、この店を町中華の理想形と評している。


千川通りから移転して18年。日中は区役所やオフィスへの出前注文が殺到する

「町中華はある種、男性色の強いカルチャーではありますが、そこに帰属していないところが、『亀楽』最大の強みだと思います。私が様々な店に通ってきた経験上、ギザギザの飾り玉子、略して“ギザ玉”がある店に、間違いはないという説があります」と森本さん。


“ギザ玉”の美しさも素晴らしい、滋味深い塩味の「五目中華」。『サッポロ製麺』の中細縮れ麺を使用

「それは、単にビジュアルの良さだけでなく、“ギザ玉”を丁寧に作る心意気が、店のスタンスや美味しさへのこだわりにも繋がっているからなんだと思います」(森本さん)


森本聡子さん/1987年生まれ。年間600杯以上のラーメンを食べつつ体型維持も視野に入れたラーメンライフにも注目。イベントプロデュースやタレント活動も行う

 二代目店主の亀田毅さんによれば、「先代の父は蕎麦や寿司、洋食など、様々な店を包丁一本で渡り歩いた、昔ながらの職人でした。玉子の飾り切りも日本蕎麦からヒントを得て始めたもの。細かなことにも目を配り、手間を厭わない父の姿勢や守ってきた味を、僕らはそのまま受け継いでいるだけです」と謙遜するが、彼にもまた父譲りの職人気質が垣間見える。


透明感があり黄金色に輝く鶏ガラスープ。脱臭や塩味の角を丸くする働きのある備長炭を、このスープやタレ、揚げ油などに使っている

 代替わりして以来、スープに使用しているのは「大山どり」の胴ガラや「日高昆布」。クリアながら深い旨味が押し寄せる味わいは、まるで和食の鶏鍋のような風格すら感じさせる。


大ぶりな「焼餃子」は野菜たっぷりのあっさり系。開業時は珍しかった羽根付きタイプ[食楽web]

 森本さんがおつまみの代表格として推す「焼き肉」には、脂の甘みが豊かな茨城県産のブランド豚「常陸の輝き」に、練馬の老舗韓国食材店『安栄』特製の焼き肉ダレで味付け。これがもう、箸もウーロンハイも止まらない美味しさなのだ。


常陸の輝き」の豚こま肉と炒めた玉ネギ、特製ダレの甘みが優しく調和する「焼き肉」

 また、客席はもちろん、厨房の隅々までピカピカに磨き上げられた店内は、町中華史上稀に見る清潔感に溢れている。昔ながらの味やスタイルを守りながらも、老舗に胡坐をかかない好感度の高さに、女子ウケ町中華の真髄をみた。

●SHOP INFO

店名:中華料理 亀楽

住:東京都練馬区練馬1-35-1
TEL:03-3993-0902
営:11:00〜14:30、17:00〜20:30
休:日曜

※本記事は『食楽』2024年春号の記事を再構成したものです