夫婦関係が破綻していると「いえない」ケース

一方、以下のようなケースでは夫婦関係が破綻してないと認定される可能性が高くなります。

別居して間もない

夫婦が別居したとしても、別居後ほとんど期間が経過していなければ破綻とみなされない可能性が高いでしょう。たとえば別居して1年程度で、まだ離婚協議も始めていない状態であれば、夫婦関係が継続していると評価され、別の異性と関係を持つと慰謝料が発生するでしょう。

冷却期間をおくために別居した

夫婦の別居理由も慰謝料発生に影響を与えます。夫婦仲が悪化して別居したとしても、「冷却期間をおくため」などの理由であればまだ夫婦関係が破綻したとはいえません。お互いにやり直す意思を残していると考えられるからです。冷却期間をおくために別居したにもかかわらず別の異性と関係を持てば、「不貞」と評価されて慰謝料が発生する可能性があります。

里帰り出産や単身赴任などの合理的な理由で別居した

里帰り出産や単身赴任など、別居に合理的な理由がある場合には、夫婦関係が破綻したとはみなされません。どちらのケースもお互いに離婚を了承した状態ではありませんし、いずれ夫婦として同居を再開することが予定されているためです。

別居したが、離婚の話はしていない

夫婦関係が悪化して別居しても、一度も離婚の話をしていなければ夫婦関係が破綻したとは認定されない可能性があります。

たとえば夫婦の別居状態が続き、お互いにまったく連絡しなくなっていたので、夫が「妻との関係は終わった」と思って不倫したとします。その場合、妻は「離婚までは考えていなかった」「今回の夫の不倫のせいで夫婦関係が破綻してしまった」などと主張して夫や不倫相手に慰謝料請求することも考えられます。

一方的な別居で、他方は離婚に同意していない

別居が一方的で、相手が離婚に同意していない場合にも注意が必要です。相手が離婚を拒絶していたら、たとえ離婚調停中でも夫婦関係が破綻したとみなされない可能性があります。

たとえば妻が夫と性格が合わないので離婚したいと思い、家を出て離婚調停を申し立てたとしましょう。夫としては「離婚はしない。家に戻ってきてほしい」と希望しています。この状態では調停が不成立になり離婚できない可能性が高くなります。妻が「離婚調停中だからかまわない」と考えて別の男性と不倫関係になったら、慰謝料が発生する可能性が高いでしょう。

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「家庭内別居」の場合

別居や離婚調停中などの外形があると「夫婦関係破綻」がわかりやすくなりますが、家庭内別居の場合にも夫婦関係が破綻したといえるのでしょうか? 家庭内別居でも夫婦の双方が離婚に合意しており、家庭内別居期間が長期にわたっていて離婚届も用意しているような状態であれば、夫婦関係が破綻しているとみなされる可能性はあります。

ただ夫婦が同居していて離婚調停も行われていない状態であれば、「夫婦関係が破綻している」証拠がありません。不倫が発覚して配偶者から「夫婦関係は破綻していないから慰謝料を払ってほしい」といわれたとき、「破綻している」事実を証明できないでしょう。そうなると、実際には婚姻関係が破綻していても慰謝料を支払わねばならない可能性があります。