万が一、夫や妻が亡くなったら…なんて想像したくもないですが、もしもの大きなリスクとして備えは考えておきたいものです。備えというと生命保険に加入することが浮かびますが、その前に知ってほしい制度があります。それが遺族年金です。ここでは、夫が亡くなった時の妻の年金についてみていきましょう。

年金には2種類ある

私たちが加入する公的年金は、20歳以上のすべての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」があります。老後にもらう年金以外に、遺族になった時や一定の障害を負った時にも受け取ることができます。

今回のテーマとなる遺族年金の場合、国民年金から「遺族基礎年金」、厚生年金から「遺族厚生年金」が受け取れます。ただし、亡くなった人の年金の加入状況や家族構成などにより年金の種類や金額が異なり、人それぞれです。

亡くなった後に残された家族の生活保障といえば民間の生命保険の加入が頭に浮かぶ人も多いと思いますが、その前に公的な保障がいくら受け取れるかを知って、不足する分だけ民間保険の死亡保障で備えておくのが無駄のない方法です。ここでは、個人事業主の場合と会社員の場合について、受け取れる遺族年金の要件や対象を詳しく確認していきましょう。

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遺族年金の対象者や要件は?


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【画像出典元】「Pasuwan/Shutterstock.com」

個人事業主(国民年金に加入)の場合

まずは、亡くなった人が「個人事業主」の場合です。個人事業主が加入する年金制度は「国民年金」ですので、遺族は国民年金から「遺族基礎年金」を受け取ります。受給対象と要件は次の通りです。

【受給対象者】
死亡した人に生計を維持されていた
1. 子のある配偶者 
2. 子

受給対象となるのは、死亡した人に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。つまり、「子のない配偶者」は遺族基礎年金の受給対象外となってしまいます。
また、ここでいう「子」とは、18歳となる年度の3月末までですので、高校卒業の年までと考えるとよいでしょう。なお、障害年金の障害等級1級または2級である子の場合は、20歳に到達するまでが受給期間となります。

【亡くなった人の保険料納付要件】
・亡くなった日の前日までに、国民年金加入期間のうち保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が2/3以上あること

*特例として、令和8年3月末までに65歳未満の方が亡くなった場合は、死亡日が含まれる前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

遺族基礎年金が支給されるためには、亡くなった人が保険料をきちんと納めていなければなりません。ここでいう「きちんと」とは、死亡した日の前日までに加入期間の2/3以上年金保険料を納めている場合をいいます。大学に通っていて学生納付特例制度を申請し保険料の免除を受けた場合や、収入が一定以下となり免除や納付猶予制度の申請をした期間がある場合は、その期間も納付したとみなして計算できます。

なお、遺族基礎年金を受給できない子のない配偶者も、一定の要件を満たすと「寡婦年金」や「死亡一時金」が受け取れる場合があります。

会社員(厚生年金)の場合

次に、亡くなった人が「会社員(公務員を含む)」の場合です。会社員や公務員は「厚生年金」に加入しているので、遺族は「遺族厚生年金」を受け取れます。なお、会社員や公務員も国民年金の保険料を払っているため、遺族基礎年金も一緒に受け取れます。遺族厚生年金の受給対象と要件は次の通りです。

【受給対象者】
亡くなった人によって生計を維持されていた
・妻、夫(夫の場合は死亡時に55歳以上)
・子
・父母(死亡時に55歳以上)
・孫
・祖父母(死亡時に55歳以上)

遺族厚生年金の受給対象者は、遺族基礎年金にくらべて範囲が広いのが特徴です。優先順位は上から順となるのが原則です。ただし、夫が亡くなった時に子のない妻が30歳未満の場合は受給期間が5年間と限定されているので注意が必要です。

また、夫、父母、祖父母が受給する場合は、故人の死亡当時に55歳以上であることが要件となり、受給開始は60歳からとなっています。ただし、子のある55歳以上の夫で、遺族基礎年金を受給できる場合は、60歳前でも特別に遺族厚生年金も受け取れるようになっています。

【亡くなった人の要件】
亡くなった人が次のいずれかの要件に当てはまる必要があります。

1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

【亡くなった人の保険料納付要件】
遺族基礎年金と同じ
なお、遺族年金は婚姻の有無は問いません。事実婚の場合も要件を満たしていれば受け取れます。