世界各地でラグジュアリーブランドのイベントが開催

マリ・クレール編集長、田居克人が月に1回、読者にお届けするメッセージ。ブランドに縁の深い街ニューヨークにアルマーニの新たな旗艦店が、東京では相次いで大きなイベントが。

アルマーニの瀟洒な複合ビルがマンハッタンに完成

ミラノ・ファッションウィークでは開催されなかった「ジョルジオ アルマーニ」の2025年春夏コレクションショーが10月17日の夜、ニューヨークで開催されました。これはマディソン・アベニュー77に完成した新しい「アルマーニ」の複合ビルのお披露目に合わせて開催されたものです。


マディソン・アベニュー 77にできた「アルマーニ」の旗艦店。店内はアルマーニの美意識が強く感じられる
©Giorgio Armani

アッパーイーストサイドに建てられた瀟洒(しょうしゃ)なビルには、「ジョルジオ アルマーニ」をはじめ「プリヴェ」(オートクチュール)、「カーザ」(家具)のフロアも設けられ、また「アルマーニ/リストランテ」もあり、まさに「アルマーニ」の旗艦店。ビルの最上階にはアルマーニの住まいも作られているそうです。コレクションショーの前夜に開催された内覧会には世界中からプレスが集まり、完璧主義者ジョルジオ・アルマーニの作り上げた館の美意識を堪能しました。

翌日の夜には新ビルからそう遠くないパーク・アベニューにある「パーク・アベニュー・アーモリー」で2025年春夏コレクションショーが開催されました。

2025年春夏コレクションのテーマは「旅路」
©Giorgio Armani

コレクションショーのテーマは「旅路」。グランドセントラル駅に到着する蒸気機関車の映像が会場の壁に映し出され、ポーターを連れた女性が「ジョルジオ アルマーニ」のノスタルジックな美しく品の良いコレクションで現れ、メンズも含めタイムレスな90体以上のコレクションが発表されました。ショーの最後にはアルマーニ自身も登場し、その元気な姿を見せてくれました。アフターパーティーでは、R&Bのビッグスター、チャカ・カーンが登場しヒット曲「I Feel for You」や「Through the Fire」を含め10曲近くを歌い、会場は大盛り上がり。アフター・アフターパーティーもカーライル・ホテルのバーに、世界中から招かれたジャーナリストや編集者が集まり、深夜まで盛り上がりました。


90体近くのコレクションを発表したアルマーニが元気な姿を見せた
© SGP

翌日の「THE WALL STREET JOURNAL」は「アルマーニ」の新しいビルの写真でオーバーラッピングされ、この日のマンハッタンは「アルマーニ」がジャックしたようでした。

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東京の夜はさながらパーティー会場に

さて東京では、例年になくビッグ・ブランドのイベントの開催が相次いでいます。これは世界的にラグジュアリー・ブランドの勢いが失速気味な中で、日本市場の売り上げがインバウンドもあり、それほど影響を受けていないということの表れだろうと思います。

10月24日には日本で好調な「エルメス」が銀座メゾンエルメスを使い、2024年秋冬メンズのコレクションショー「HERMÈS GINZA CALLING」を開催しました。 コレクションショーは、レンゾ・ピアノの設計したガラス張りの銀座メゾンエルメスの横からショーのモデルが建物に入り、階段を使って各フロアを回るという見せ方。「エルメス」らしい上質でウェアラブルな上下を纏って登場したモデルの中には、パリ五輪で陸上100メートルに出場したサニブラウン・ハキームや、俳優の大沢たかお、長谷川博己、松田翔太なども現れ、とても新鮮なキャスティングでした。パリからはメンズのアーティスティック・ディレクターのヴェロニク・ニシャニアンも来日し、ショーの後にGinza Sony Parkで行われたパーティーにも顔を見せました。Ginza Sony Parkはまだ完成してはいなかったのですが、この日のために特別な装いがなされ、屋上も開放されて、銀座の夜景を堪能することができました。


レンゾ・ピアノ設計の銀座メゾンエルメスの横を歩くモデルたち
©Yasuyuki Takaki

このようなことが可能になったのは、もちろんGinza Sony Parkと「エルメス」の、銀座をさらに発展させ魅力ある街にという意志の表れなのでしょう。フランスを代表するブランドと日本を代表するブランドの銀座を舞台としたビッグコラボレーションでした。

6日後の10月30日の夜は、国立競技場で「カルティエ」のビッグ・イベントが開催されました。「カルティエ」のジュエリーデザインのアイコンである「トリニティ」コレクションの100周年を祝うパーティーです。国立競技場は「カルティエ」の象徴であるレッドの照明がなされ、人工芝の敷かれたグラウンドを通りぬけると、2階のフロアでライブ演奏(森山直太朗など)と、このために作られたショートフィルムを楽しむというもの。


国立競技場は「カルティエ」の特別な空間に
©Cartier

特別な照明により幻想的な雰囲気に包まれた国立競技場でのパーティーは、「カルティエ」の新たな魅力を提示してくれたのではないでしょうか。

東京だけでなく京都や大阪でも今秋、ラグジュアリー・ブランドのイベントがいくつも開催されています。また日本へ初進出するブランドも増えています。前述したように世界的にラグジュアリー・ブランドの成長が停滞している中で、日本市場はいまだ好調というのがその理由なのではないかと思います。我々ファッションに携わる者にとってはとても忙しい毎日が続いていますが、日本という市場がまた見直されていることに、悪い気はしません。ラグジュアリー・ブランドの日本での好調が、いつまでも続くのを期待しています。

2024年11月28日

・西島秀俊も来場。「ジョルジオ アルマーニ」NYで2025年春夏コレクションを発表
・カルティエが「トリニティ」100周年を祝福して、国立競技場でセレブレーションパーティーを開催