『365日のシンプルライフ』 © Unikino 2013
早いものでもう12月、大掃除のシーズンがやってきました。モノであふれかえった家の中を片付けたい、落ち着かない心をすっきりさせたい、と思うのに重い腰が上がらない……、そういう人も多いのではないでしょうか。今回は、片付けを先延ばしにしがちな人にぜひ観てほしい映画とリアリティ番組を紹介します。モノも心も整えて、一年を締めくくりましょう。
素っ裸で所持品ゼロ!? 若者が“実験”から見出したものは?
『365日のシンプルライフ』
『365日のシンプルライフ』© Unikino 2013
雪が舞う夜、素っ裸でアパートを飛び出した若い男性は、外のゴミ箱から新聞紙を拾って前と後ろを隠しながら裸足で街を走り、貸倉庫へ。コートを取り出して羽織ると、空っぽの部屋へ戻り、床で凍えながら寝るのでした。そんな驚きのシーンから始まる本作は、当時26歳でヘルシンキ在住のペトリ・ルーッカイネンが自らの実験を記録したドキュメンタリー映画です。
3年前に失恋したペトリは、やけになって買い物をしまくった結果、モノだらけの部屋を見てうんざりしはじめます。モノがあっても幸せではない、そう感じた彼は、持ち物をすべてリセットする実験を始めます。ルールは4つ。「自分の持ち物すべてを倉庫に預ける」「倉庫から持ってきていいのは1日に1個だけ」「1年間続ける」「1年間何も買わない」。
『365日のシンプルライフ』© Unikino 2013
山ほどあるモノの中から不要なものを選んで処分するのではなく、いったんモノをゼロにした状態から必要なものを一つずつ選んでいくという方法が大胆! それゆえペトリは数日の間、ズボンの下はノーパン、という状態で仕事場に出かけるはめに。
この風変わりな実験を支えてくれているのは、ペトリの弟や友人たち。何かが壊れると修理をするしかないので、そんなときは彼らが手伝ってくれるのです。また、ペトリは祖母が大好きで、愛らしい祖母から多くの金言を授かります。
『365日のシンプルライフ』© Unikino 2013
「部屋はモノだらけなのに自分の心はからっぽ」という虚しさを覚えて実験を始めたペトリは、モノと向き合うことで、何を見出したのでしょうか。ペトリと仲間たちの素朴で愛らしいキャラクターもあり、ほんわかした気持ちにもなれます。
『365日のシンプルライフ』
2013年製作
『365日のシンプルライフ』DVDブック ¥4,400
発行者:kinologue books
『365日のシンプルライフ』デジタル配信中
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簡素な暮らしを貫く男の強さ。ヴィム・ヴェンダース×役所広司の名作
『PERFECT DAYS』
『PERFECT DAYS』 © 2023 MASTER MIND Ltd.
役所広司が2023年の第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したことが大きな話題となった作品。監督は、『ベルリン・天使の詩』などで知られるドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースで、東京でトイレ清掃員として働く平山の淡々とした日常をまるでドキュメンタリーのように描いています。
下町の古いアパートに一人で暮らす平山は、朝目覚めると身支度をし、車を運転し、各地のトイレをできぱきと清掃し、仕事を終えると銭湯に行き、夜は本を読んで過ごします。同じような毎日を生きていますが、一日として同じ日はありません。彼の楽しみは、木を見ること。空を見上げ、木漏れ日に目を細め、コンパクトカメラで写真を撮っているのです。
シンプルな暮らしの中に幸せを見出す生き方は、多くの人の憧れでもあります。ただし、平山は、ただ平穏な暮らしをしたいからというよりも、何らかの強い思いがあって、あえてトイレ清掃員をして一人で暮らしていることがわかります。
平山の生き方だけでなく、この映画のつくりそのものが、無駄のない美しさを極めています。セリフは極端に少なく、東京スカイツリーの輝きや川面に映る街の明かり、青空に揺れる木々の葉といった映像は情緒があり、そして平山が車の中で聴いているカセットテープの音楽が彼の人となりを表しています。さすがヴィム・ヴェンダースと役所広司の映画だと思わせられる名作です。
『PERFECT DAYS』
2023年製作
豪華版5枚組BOX【UHD+Blu-ray+DVD】 ¥14,300
通常版Blu-ray【2枚組】 ¥6,380
通常版DVD【2枚組】 ¥5,280
発売元:ビターズ・エンド
販売元:TCエンタテインメント
発売協力:TCエンタテインメント、スカーレット