ブランドイメージ設問を追加、代理店系のイメージ回復が急務
昨年報じられた自動車保険会社大手4社による保険金の不正請求関連問題など不祥事が目立つ中、顧客満足度を測定する当調査において本年より企業のブランドイメージを聴取する設問を追加した。
契約している自動車保険会社に対して、「顧客重視」、「革新的」、「信頼できる」、「積極的」、「親しみやすい」、「財務的に安定」、「評判が良い」といった7つのテーマでブランドイメージを測定(7点満点)したところ、そのうち6項目で代理店系よりダイレクト系のほうが良いイメージを持たれていることが確認された。最も差が大きいものは「革新的」で0.47ポイント、次に「評判が良い」で0.33ポイントの差が確認された。
加えて金融庁が重視する「顧客本位の業務運営に関する原則(フィデューシャリー・デューティー)」に関連する「顧客重視」においても0.29ポイントの差があることがわかった。
代理店系の顧客へのイメージ回復が急務と言える。
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保険料の理解把握は満足度醸成に重要
自動車保険料の高騰はここ数年業界でも大きな話題の一つである。当調査でも、直近の更新/切替時において自動車保険料が「高くなった」と回答する人の割合は、代理店系では4割(前年比+8ポイント)、ダイレクト系でも3割超(前年同水準)であった。
保険料の高額化の理由としては、保障の拡大、車両入替や等級の引き下げといった契約者意向によるものもあるが、物価上昇による修理費用の高額化、事故や自然災害の増加などといった純保険料率の増加に起因する要因もある。
本年より保険料の変化に対して理解度を問う設問を追加しているが、保険料の変更理由を理解している人(理解している+ある程度は理解している)は、理解していない人に比べて価格に対する満足度は40ポイント以上高いことが確認されており、自動車保険会社は契約者への保険料に対する理解を促す努力が求められると言える。
J.D. パワー グローバル・ビジネス・インテリジェンス部門常務執行役員 梅澤希一のコメント
「大手中古車販売会社による保険金不正請求問題や保険料高騰が騒がれた過去1年の中、業界全体の顧客満足度とロイヤルティが横ばい圏内の動きにとどまったことは予想外の結果であった。事故対応経験者以外では保険金不正請求問題は各顧客への影響が見えにくかったことがあるほか、保険料高騰も全般的な物価高騰の中で顧客が背景を理解しやすかったことが一因と考えられる。
一方、ブランドイメージについては代理店系とダイレクト系では明確な違いが見られ、代理店系よりダイレクト系のほうが良いイメージであることが確認された。こうした背景には、損害保険大手会社で保険金不正請求問題や企業向けの保険料を事前調整していたカルテルの問題などが大きく取り上げられたことがあるものと考えられる。足許では商慣行の見直しなどビジネスの健全化の必要性が叫ばれているが、各社は顧客にとって公平公正で信頼性があるかという顧客本位の姿勢で全ての商慣習をゼロベースで見直すことが強く求められていると言える。」