ミスを繰り返す部下への対処に悩む上司は少なくありません。感情的になる前に、冷静に“割り切って”フォロー体制を整えることが大切です。本記事では、研修講師として25万人以上にアンガーマネジメントを指導してきた戸田久実氏の著書『アンガーマネジメント大全』(日経ビジネス人文庫)から、部下の繰り返されるミスに備えた適切な対処法と、怒りをやり過ごすための具体的な方法について、一部抜粋・編集して紹介します。

ミスを繰り返す部下には、“割り切って”対策をする 

Q:信じられないほどミスを繰り返す部下に、我慢できません

A:ミスを見越したフォロー体制をつくろう

冷静でいられなくなるのは当然のこと。適材適所で役割を替えたり、ミスをすることを見越してフォロー体制をつくったりしておきましょう。

つい3日前に言ったことをまたやってしまう。相手の名前を何度も間違える。契約書や請求書の金額を誤ってしまう……。

「これを何度もされると会社としての信用が落ちる」ということを何十回もやってしまう人がいる場合、マネジメント側は本当につらいところでしょう。これまでの言い方だけではすまされないくらいの気持ちになったら、どのようにおさめればいいのでしょうか?

伝えて改善する可能性がある人の場合は、繰り返し伝えていくようにします。でも、能力的に無理だと思うならば、割り切って、できないことを前提としてまわりがフォローする必要があります。

割り切る場合、その人の行動面を分類して対処を考えましょう。「気をつけて」と言えばなんとかなる部分に関しては、こちらから声をかけ続けましょう。

何度言っても完璧にはできないと思う部分は、それを見越して、こちらでフォロー体制をつくるしかありません。

例)期限を守ることができない人の場合

「お客様に迷惑をかけるからダメだ」と注意をすると、1週間くらいは気をつけているのですが、気が抜けるとまた守らなくなってしまうという人がいました。

こういう人の場合は、また1週間前と同じように「お客様に迷惑をかけるからダメだ」と伝えましょう。これを繰り返していくのです。

それでも「どうしてもこのミスは直らない」というときには、ほかに人材がいるなら適材適所で役割を替えましょう。どうしても任せなければいけないときは、ミスする可能性を見越してまわりにもフォローをお願いしておきます。

このタイプの人に「何回言っても直らない」と責めても、どうにもならないばかりか、お互いに疲弊してしまうだけです。自分もイライラしますし、相手も同じミスをずっと指摘されることでモチベーションを下げ、拗ねてしまう可能性も……。もし発達障害のような要因がある場合には、すぐに改善するのは難しいので、別の対応が必要になるでしょう。

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「怒りをやり過ごす手段」を持つ

あまりにも同じミスが繰り返されていると、相手が問題行動を起こした瞬間に、感情的な気持ちがこみ上げてくることもあるものです。そんなときには、6秒やり過ごすことがおすすめです。6秒やり過ごすことが難しい場合は、たとえば持っているペンなどをただ見つめたり、相手のいない方向を見て、意識を一瞬ほかに向けてみましょう。

カチンときたときに絶対にやってはいけないことは、暴言を吐くこと。たとえば、わたしの場合は、6秒たったあとに理性が働いてきたところで、「ちょっといいですか?」という言葉を言うようにしています。とっさにとんでもない言葉を言ってしまわないように、相手が何かしてしまったときに返す言葉を、あらかじめ用意しておくといいでしょう。

そのあとに、「これはやってはいけないよ」「これは見直さないといけないよ」「どうしてこうなったのか教えてくれない?」と、相手のしたことに対しての話を続ければ、流れが変わるかもしれません。

相手のミスが発覚したとき、その場に居続けるのではなく、トイレに行くことやコーヒーを淹れに行ったりして、一回リセットするために、わざとその場を離れるようにするのも効果的です。その場に居続けて説教のようなことを言ってしまわないように、強制的にでも離れるようにしましょう。

あまりにもミスを繰り返す人を相手にする場合、ときには怒鳴りたくなるくらい感情がわき立つことがあるはずです。これからも続くものととらえて、怒りをそのままぶつけなくて済む対策を考えておきたいですね。



 

戸田 久実

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事