次の目標は「誰か」との協働。お店の外に世界を広げたい。
続いて、「柿」の一皿を作ってもらいました。
柿のデセールでは、フレッシュの柿と少し色の濃い「江戸柿」を組み合わせています。フレッシュなものと熟してるものと2種類入れることで、柿のレイヤー感(奥深さのこと)が出るのだとか。
また「杏仁豆腐ではない杏仁豆腐」?が敷かれています。ここで言う「杏仁豆腐ではない杏仁豆腐」というのは、「杏の仁」を入れていないのでそう呼べないが、味はほぼ杏仁豆腐だというもの。一周回って、このように説明するのが一番分かりやすいそうです。
さらに薔薇のソース、アプリコットで作った酸味のあるソース、ローストしたアーモンドを砕いて食感に。
「アイスクリームは『リッチ杏仁豆腐パート2みたいなアイスクリームです」と、ボケているのか真剣なのかわからない解説をする松本シェフ。どうやら杏仁豆腐?の質感が異なったバージョンでアイスクリームにしているそうです。
そしてこちらにも泡のソース。
「料理人あるあるかもしれないんですけど、泡で盛り付けがち(笑)。美しさももちろんあるんですけど、液体で組み合わせるよりも量を減らせるんです。質感が重たくならずに口の中を軽くする効果があって、さっぱりさせてくれます」
ここまで読んだ方はなんとなくお気づきかもしれませんが、松本シェフは本当に話好きで、トークスキルも抜群です。テキパキと手を動かしながら「歌姫といえば誰?」「推しに会う方法」「英語の勉強をいつ諦めたか」…など次々にトークテーマを振ってくれるので、いつの間にか大盛り上がり。常連客が通いつめるのも納得です。
念願の移転を終えた松本シェフには今後、2つの目標があるそうです。
「1つはポップアップやコラボレーションなど、自分一人ではできない『広がり』のある仕事をしたい。そのためには人脈・縁・タイミングなど色々な要素が必要になると思うのですが、実現させるためのベース作りをしているところです。2つ目は、自分のデザートをポルノグラフィティに食べてもらうことです」
あ、ポルノグラフィティが好きなんですね。と話題を振ると、「お店の壁にサインしてもらうのが夢なんです!」と30分近くポルノグラフィティ愛を熱く語ってくれた松本シェフでした。
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カフェでもないサロンでもない「desert club」という新しいスタイルを
最後に、秋の味覚といえば「栗」。メニュー表には載っていないけれど、丹波の栗を使った限定デザートを作ってもらいました。
まずはイタリア産の栗で作ったクレームブリュレの表面を、バーナーで薄くキャラメリゼ。そこに丹波栗の渋皮煮を大胆に乗せて、甘納豆とレモン皮のコンフィ、オーツミルクのアイスクリームが盛られます。
「モンブランじゃないんですね」と尋ねると、和栗の繊細な香りを味わうなら渋皮煮や焼き栗、蒸し栗が一番だと話してくれました。
渋皮煮のシロップにラム酒を混ぜたソースをかけて、カカオのチュイールをトッピングして完成です。
これも絶品。丹波栗はもちろん美味しいのですが、イタリア栗のクレームブリュレと相まって全体の深みを出しています。モンブラン以外の新しい栗の楽しみ方だと感じました。
「Harmonika(ハーモニカ)」はアシェットデセールだけでなく、テイクアウトでフルーツタルトや焼き菓子も購入できます。もちろんタルトも、注文が入ってからカットして盛り付けてくれます。ただし、松本シェフのほぼワンオペ営業なので、時間に余裕をもって訪れてください。
松本シェフは時間が許す限り、たくさんの話をし、話を聞いてくれる方でした。中でも印象に残ったのは「Harmonika(ハーモニカ)」がカフェ・サロン・レストラン…といった既存のカテゴリのお店ではないということ。
「ジャズクラブみたいな感じで、共通の趣味を持った人たちが集まる社交場のような店です。デザートを通じてお互いに好きなものを語ったり、いい雰囲気で楽しんだり。そんなイメージで『desert club』という、新しい呼び方をしています。『Harmonika(ハーモニカ)』を誰かに話す時は、そう言ってくれたら嬉しいですね」
そんな“desert club”の「Harmonika(ハーモニカ)」、気軽な交流の場なので予約は不要です。
「中心地からそこまで離れてはないとは言え、少し歩くので。ここまで来て入れなかったっていうのは申し訳ないので、向かう前に電話をいただけたらありがたいです。で、電話に出れたら『席が空いてるんだな』と思ってもらえれば(笑)」と松本シェフ。
「甘いものが食べたいな」と思えば、ふらっと訪れることもできますが、確実に時間通りに席に座りたい場合は、お店に気軽に電話してみてくださいね。
About Shop
Harmonika(ハーモニカ)
京都府東山区弓矢町38 東側 Hale Luana 1階
営業時間:12:00〜21:00(L.O20:30)
定休日:火曜日
あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
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関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。