秋田市内のスーパーに居座ったツキノワグマは、警察も出動して2日がかりで捕獲され、殺処分された。
このことについて、市の担当課には、「なぜ殺した?」といった苦情が殺到している。市では、また戻ってくる可能性があるため、山に返すのは難しいとして、理解を求めている。
「市街地なので銃は使えず、わなを仕掛けるしかなかった」
盾を手に持って「完全武装」した警察官らが、スーパー「いとく土崎みなと店」の建物前に並ぶ。
刃物を持った凶悪犯が立てこもったような、物々しい光景だ。
男性店員(47)を襲って顔や頭にケガをさせたクマは、2024年11月30日朝から、スーパーに居座り続けた。報道によると、肉売り場で食い漁った後、在庫品などを置くバックヤード付近に隠れたらしく、市と猟友会がその近くに箱わなを仕掛けた。
そして、2日経った12月2日にわなにかかり、市や県が警察官の立ち合いでこのクマを駆除した。
その状況について、市の農地森林整備課は3日、J-CASTニュースの取材に説明した。
それによると、麻酔を使う場合は、獣医師の免許が必要なため、県に依頼して免許を持つ県職員に現場へ来てもらった。また、建物内の指揮権は警察にあるため、秋田県警の警察官がその都度、上司の指示を仰ぎながら駆除に協力した。
県職員の獣医師が吹き矢でクマに麻酔をかけ、クマが眠ったところを確認したうえで、電極付きのさすまたを使って、クマを電気ショックで殺処分したという。死んだクマは、箱わなごとブルーシートをかけて軽トラックに積み、焼却したとしている。麻酔を使っているため、食用などにはできないという。
「場所が市街地で建物の中でしたので、クマを駆除するのに銃は使えません。捕獲は、わなを仕掛けるしかありませんでした」
クマの出没が相次いでいることから、浅尾慶一郎環境相は11月3日の閣議後会見で、市街地で銃を使った狩猟ができるよう改正法案を早期に提出する意向を示したが、市の農地森林整備課では、それでもハードルが高いと明かした。
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「1回でも食べ物が楽に手に入ると、また戻ってくる」
「弾がクマの体を貫通しますので、バックストップがないところでは撃てません。猟友会員が市街地で発砲して猟銃所持の許可を取り消され、控訴審で敗訴した北海道の判例がありますので、警察もなかなか発砲を認めてくれないのではと思っています」
今回駆除したツキノワグマは、体長1.1メートル、体重69キロの成獣のメスだった。
殺処分を巡っては、2日に箱わなにかかったと報道されてから、市に電話やメールが相次いでいると明かした。
最初は、「殺さないで下さい」「山に返して」といった意見だったが、処分が報じられてからは、「なぜ殺した?」と問い詰める電話などに変わったという。2日は、電話が37件、メールが8件あり、その9割が苦情だった。自然保護団体を名乗る電話も、何回かかかってきたという。電話やメールで分かったもののうち、8割は県外からのものだった。
3日も、朝から昼過ぎまで、電話が5、6件、メールが20件ほど寄せられているとした。これまでに、計約70件の苦情があった計算だ。
秋田県の佐竹敬久知事は、23年10月23日の定例会見でクマ駆除への抗議電話はガチャ切りすると明かして話題になったが、市では、「かかってきた電話は、いきなり切れないです。貴重なご意見として受け止めます」とした。
クマを生かしてという要望については、市では、実現するのは難しいと説明した。
「クマに怖い思いをさせて、山の奥に放すという学習放獣は、今はしていません。クマは、学習能力が高いので、1回でも食べ物が楽に手に入ると、スーパーなどにまた戻ってくる恐れがあります」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)