免疫力を上げたければ腸の声を聞いて!
2020年に新型コロナウイルス感染症が流行してから、「免疫力」への注目が格段に高まりました。自身やご家族の免疫力を上げるために、生活習慣などに気を付けている方も多いのではないでしょうか。
免疫力が下がってしまうと、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるのはもちろんのこと、その他にも私たちの体のさまざまなところに影響が出てしまいます。
免疫力低下で起こりやすい体への影響
細菌などに弱くなり、食中毒にかかりやすくなる
肌荒れしやすくなる
ものもらいや口内炎ができやすくなる
歯周病にかかりやすくなる
アレルギー症状が出やすくなる
がんを発症しやすくなる
免疫力が低下すると、この他にもさまざまな不調が起こる可能性があります。だからこそ、常に免疫力の高い状態を維持したいところですが、そのために私たちには何ができるのでしょうか。
免疫力が下がる原因として、一般には加齢やストレスなどが挙げられます。とはいえ、年をとらないようにするのは無理な話ですし、忙しい現代社会においてストレスゼロで過ごすのも至難の業です。
では、どうすればいいのかというと、腸にフォーカスすればいいのです。何よりもまず、腸を元気な状態に保つことを意識しましょう。なぜなら、小腸と大腸には体内の免疫細胞の約7割が集中しているからです。
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腸内の免疫細胞がウイルスの侵入を防ぐ
腸の中で、実際にどうやって病原体やウイルスの侵入を防いでいるのかを、簡単にご説明しましょう。
免疫細胞のメンバーは、腸粘膜の中にいる場合もあるし、腸の壁にあり免疫システムの基地になっている「パイエル板」という場所にいる場合もあります。
このパイエル板という基地は、主に小腸の下部の回腸にたくさんあり、大腸にもある程度存在しています。大きさは平均で1.5cm程度とごく小さいのですが、その基地は、すごい数存在しているのです。
そのパイエル板には、外部から来たウイルスや異物が危険かどうかを判断する“門番”のような役割をしている「ヘルパーT細胞」や、異物に対抗するための武器(IgA)を作る指示役の「制御性T細胞」など、私たちの体を守る免疫細胞の主力メンバーが揃っています。
このようにして、免疫細胞のメンバーたちは、パイエル板という基地を起点にして常に私たちの体を守ってくれているのです。
そもそも腸の粘膜は、突然異物が入ってこようとしても入れないように強固にふさがっているのですが、それでも何かの不具合で隙間ができると、ウイルスや病原体は入ってこようとします。
でもそんなときに、この基地にいる免疫細胞たちが「こいつは異物だ」と認定し、侵入を防ぎ、IgAと呼ばれる抗体を作って動きを封じ、体外に排除してくれるのです。
パイエル板という基地は、免疫の最前線である腸の中で最も重要な場所というわけです。
パイエル板を正常にするためにも、まずは腸内環境を整えることが最も重要です。次回は、腸内環境を整えるために重要な「善玉菌」を育てる方法について伺います。
※本記事は、『結局、腸が9割 名医が教える「腸」最強の健康法』(アスコム/1595円・税込)より一部抜粋して構成しています。
イラストレーション=平井さくら