鶴田真由さんが出演するドラマ『連続ドラマW 誰かがこの町で』は、集団の同調圧力がもたらす恐ろしさを生々しく描いた社会派ミステリー。作品のどんな部分に恐ろしさを感じ、どんなメッセージを受け取るのか……。物語のカギを握る弁護士役を演じた鶴田さんに、作品のテーマや役へのアプローチについて尋ねました。

いい作品であればあるほど、多くの要素が散りばめられている

「ドラマは観る人の“鏡”。観る方がどこにフォーカスして、どこに感情移入するか。それによって、受け取るメッセージも変わると思います」

鶴田真由さんがそう話すのは、12月8日よりWOWOWで放送・配信される『連続ドラマW 誰かがこの町で』のこと。とある新興住宅地を舞台に、集団による同調圧力と忖度がもたらす恐ろしさを描いた社会派ミステリーです。

鶴田さんが演じるのは、横浜で法律事務所を構える弁護士・岩田喜久子。彼女のもとに、大学時代の友人の娘だと名乗る若い女性が訪れ、「家族を捜してほしい」と依頼されたことから、ある町での家族の失踪事件と、同じ町で過去に起きた少年誘拐致死事件の真相が明らかになっていきます。

「ドラマで描かれている人間の同調圧力も恐ろしいですし、それが集団になればなるほど膨れ上がっていく怖さもある。一方で、『自分が犯してしまった罪といつかは向き合わなきゃいけないんだ』と感じる方もいるかもしれません。シンプルに、ミステリーとしての構成や展開の面白さで見る方もいるでしょうし。いいドラマであればあるほど、たくさんの要素が散りばめられているので、ドラマの受け取り方は人それぞれで楽しんでいただければなと思います」

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「自分と向き合った」という実感が何かを変えていく

ドラマの舞台となる「福羽(ふくは)地区」は、過去に起きた事件をきっかけに“安全で安心な町”を掲げ、住民らが過剰な防犯意識を抱くようになった新興住宅地。よそ者を排除したり、住人にも厳しい生活ルールを強要したり……といった同調圧力が次第にエスカレートしていくさまは、フィクションでありながらも、実際にどこかの町で起こってもおかしくないと思わされる怖さがあります。

「人間は同調することで空間になじもうとする因子みたいなものを、生き延びる手段として持っているのかなと思いましたね。でもそれが間違った方向に行くと、強い集団であるほど、その間違いが大きくなっていく。しかも集団の中にいる人はだんだん麻痺してしまって、間違ってることすらわからなくなる。動物だって集団で生き延びるという本能は持っているはずなのに、間違った方向には行かないですよね。人間だけが間違った方向へ進んでしまうのはなぜなんだろう、人間ってややこしいな……と思ってしまいます」

喜久子をはじめとするそれぞれの登場人物たちが、過去のあやまちや自分のついた嘘をどう清算していくか……というのも、本作のテーマ。大なり小なり、誰もが後悔を抱えて生きているからこそ、自分を投影しながら観る方も多いのではないでしょうか。

「みんなが黒い染みのようなものを持っていて、他人はごまかせても、自分はごまかせない。でも人生ってプラマイゼロでできているから、結局はどこかで向き合わないといけないんですよね。どんなにつらくても、どんなに痛くても、どんなに怖くても、ちゃんと腹を決めて向き合った後は人生が好転していくと思います。何よりも自分が気持ちいいと思うんです。もちろんやってしまったことは消えないけれど、向き合ったということが何かを変えていくと思うので」