韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が戒厳令を一時出し、政界が大混乱していることを受け、日本にどんな影響があるのか心配する声が上がっている。

K-POPを始めとするエンタメへの影響はそれほどない模様だが、尹大統領が失職するようなことがあれば、日韓関係は変化するのだろうか。韓国の事情に詳しい識者に話を聞いた。

人気グループ「SEVENTEEN」のライブ開催を心配する声も

2024年12月3日夜に発令されると、窓を割って突入する兵士もおり、国会の周辺は物々しい空気に包まれた。

それでも、国会内に入った野党議員らは、戒厳令の解除を求める決議案を出席議員全員の賛成で可決し、尹大統領は4日未明、解除を余儀なくされた。

報道によると、野党の追及で官僚が次々に弾劾され、予算審議も政争に使う反国家行為をしているというのが、発令の理由だった。集会なども含め政治活動が禁止され、メディアも統制下に置くとしたが、約6時間で戒厳令は撤回された。

最大野党の「共に民主党」は、尹大統領の弾劾訴追案を国会に提出し、採決は6、7日になる見通しだと報じられた。可決され、憲法裁判所が罷免を判断すれば、尹大統領は失職して、大統領選が行われる。

韓国政界は、大混乱に陥っており、日本への影響も懸念されている。

石破茂首相は、25年1月前半に訪韓する予定だったが、何らかの影響が出そうだと報じられた。超党派の日韓議員連盟(会長・菅義偉自民党副総裁)も、12月中旬に予定していた菅氏らの韓国訪問を中止する方針を決めたという。

エンタメでは、K-POPなどのライブが予定通り行われるのか、ファンから心配する声がネット上で上がっている。

韓国の男性13人組グループ「SEVENTEEN」が来日しており、世界ツアーの一環として、4、5日に東京都内の東京ドームでライブを行う予定だ。ファンからは、「ライブ中止ありえるんですか…?」「この先のツアーとかどうなるんだろ」といった書き込みがXで相次いだ。

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慰安婦や佐渡金山問題「蒸し返される」

SEVENTEENのライブについて、主催者のディスクガレージは12月4日、J-CASTニュースの取材に対し、「予定通り開催する方向で進んでいます」と答えた。

韓国では、日本の音楽ユニット「YOASOBI」も、7、8日に仁川(インチョン)でライブを予定している。所属するソニー・ミュージックエンタテインメントは4日、「現地の他のイベントは、そのままやると聞いていますので、予定通り公演をやりたいと考えています」と取材に答えた。

ただ、韓国の政局いかんでは、今後日本への影響が出てくることが考えられる。

韓国事情に詳しいコリア・レポートの辺真一編集長は4日、取材に対し、野党が政権を獲る可能性が高いとして、こう述べた。

「政権が変われば、日韓関係は、ギクシャクするでしょうね。野党は、対日政策で譲歩し過ぎたと主張しており、屈辱だと批判しています。慰安婦問題や佐渡金山の強制労働の主張についても、蒸し返されるのではないかと思っています」

尹大統領の弾劾訴追案が国会で可決されても、憲法裁判所が判決を出すまで数か月かかるため、大統領選は、その後になると辺氏はみる。ただ、与党にも造反者が出るなど反発が広がっており、その前に、尹大統領が辞職する可能性もあるとした。

実は、辺氏は、すでに9月にヤフーニュースへの寄稿で戒厳令のうわさを指摘していた。

「尹政権は、足元がぐらついて苦境に立っていました。北朝鮮を挑発して軍事衝突を起こし、それを口実にして、苦境を打開するために、乾坤一擲の戒厳令を出すと野党でうわさされていたわけです。今回は、その前提条件が違っています。国会を牛耳る野党という内政問題から、野党を反国家団体などとして駆逐しようと戒厳令を出しました。大義名分がなかったことが問題です。ただ、妻とともに弾劾されそうになっているという、置かれた状況は変わっていません」

(J-CASTニュース編集部 野口博之)