50代女性がタイミーに挑戦してわかった、自由な働き方の“光と影”。クレーマー対応や謎の時給カットも…稼げた金額は

 スキマバイト「タイミー」は現在登録者数900万人を突破。スポットワークをやっている99.4%が会社員などの本職と兼務しているという。一方で、特殊詐欺や強盗事件を引き起こす「闇バイト」の求人に悪用されていると聞く。注意喚起もされているようだが、実態はどうなっているのか。

 スポットワークではないが、私の周りの40代以上のフリーランスのライター、音楽家、イラストレーターなどの友人たちも仕事が減少して介護などのアルバイトに精を出している。私も年収が7分の1ほどになったので、暇になるたびに「バイトしよっかな〜」と思っていたが、いざ本業のほうの仕事が入ったら、シフト変更するのが面倒だと思いなかなか踏み出せなかった。

 ところがタイミーが出てきたてこれだ!と思った。タイミーなら48時間以上前なら仕事をキャンセルしてもペナルティーはつかない。ただキャンセル後3時間は全ての募集に応募できないが、そもそもバイトしている時間がないから問題ない。アプリに登録した当初は、都心ばかりだったが、最近では近所の求人も出てきたので、挑戦してみることにした。

◆たった1時間、無人餃子販売所での清掃

 まず最初のお試しとして、餃子の自販機がある無人販売所の店内清掃と商品補充1時間のみの求人に応募してみた。タイミーでは審査もなく早い者勝ち。応募ボタンを押した時点で仕事が決定する。いざこれだけで仕事が決まるとなると、ちょっと怖くなってしまったが、LINE電話で指示を受けながら1人でやる気楽さはありがたい。

 ガラスを拭くのに、アルコール消毒だけというのに若干驚いたものの、商品をバックヤードから販売用の冷凍庫に出して、拭き掃除と床を掃くだけなので、あっという間に終わった。時給は1200円。交通費はなし。

 タイミーはアプリのウォレット内に報酬が支払われて、仕事終了後、即自分の登録した口座で受け取ることができる。そのため今すぐにお金が必要でやっている人もいるが、放っておいても15日に手数料なく振り込まれる仕組みだ。

◆店長かと思ったら副業バイト中の50代に遭遇

 2つ目に選んだのは、家の近所にある和食ファミレスの洗い場だ。お店に入店してすぐにやらねばならない出勤時のQRコードをどこで読み取るのか分からず困っていると、教えてくれた50代ぐらいの男性がいた。私はてっきり店長だと思ったら、バイトだという。

 それもタイミーからレギュラーのバイトとして雇われていて、本業は会社員だと聞いて驚いた。いくつかタイミーをやったが、ここがいちばん働きやすいので、店長に頼んで常勤バイトとして雇ってもらったそうだ。「会社員との両立大変じゃないですか?」と聞いたら「今日はリモートワークだから大丈夫だよ」とのこと。

 その男性から食器を洗う手順を教えてもらう。食器洗いは、お客さんが食べたお皿の残骸をゴミ箱に捨て軽く水洗いしてから食洗機に入れる。確かに短時間ならそんなに大変じゃないかもしれないが、土日だともっと忙しいらしく大変だろう。

 あと床が非常に滑りやすいので、普通のスニーカーでは危ない。万が一ここで滑って怪我したらどうなるんだろうと思うが、怪我した場合労災保険が出るかどうかは会社に任されている。タイミーにも契約書があるが、全く読んでいなかった。時給1150円、交通費500円。お試しバイト1.5時間なので2225円。

◆懐石料理屋さんでも笑顔でがんばるタイミーさん

 なんとなく昔やっていたバイトの感覚を取り戻してきたので、今度は高級な懐石料理屋さんの洗い場に挑戦することにした。ここは前回のファミレスより作業が細分化していて、私が担当したのは「バッシング」と言って、お客さんから戻ってきた食べ残しの皿から残骸を取って、洗う担当へ回すだけ。皿洗い担当は軽く水洗いをして食洗機に入れて、皿を棚に戻す係はまた別にいた。

 このお店は小鉢がたくさんあり、食洗機に入れられないお皿もあり非常に面倒なのだが、ものすごい速さで仕分けして食洗機に入れていた40代ぐらいの男性がいた。てっきりベテラン社員さんかと思ったら、彼もバイトで本業は会社員だという。先ほどと同様、「会社員との両立、大変じゃないですか?」と聞いたら、「余裕だよ。会社はこの近くだからね」と笑顔で返された。

 以前はここから近いチェーン店の洗い場のバイトをしていたが、時給アップのためこのお店に移ったという。週3〜4回入って、明日も朝から本業仕事があると聞き「おじさんなのにこんなに働いて大丈夫なんだろうか、借金でもあるんだろうか」と勝手に心配してしまった。

 ここでの勤務後は、店長に個室に呼び出されて「ぜひうちでバイトしてくれ、できる時があったら、いつでもLINEをして欲しい、交通費も出すから」とかなり強くお願いされLINE交換をした。時給1200円×5.2時間で交通費はなし。本来は5時間半だったが、なぜか店長と話した時間を時給から引かれて、報酬は6200円。

◆地獄を見ることになったカフェバイト

 ぜひうちでバイトしてくれと言われて承認欲求が満たされたこともあり、今度は昔やっていたカフェのホールでのバイトに挑戦しようと思った。未経験の洗い場でこれだけ重宝されたんだから、経験のあるカフェなら余裕だろうと思ったんだが、これが地獄をみることになる。

 JR沿線にある個人経営のカフェは、近所で大きなイベントがあったらしく、バイトした土曜日は大変な混雑だった。しかもそのお店は、厨房や洗い場もホールも店員全員を担当する座組になっていて、ホール専用は私1人。説明もそこそこに仕事がスタートすると、35席もあるのに、真ん中の壁を境に外に向かってテーブル番号が振ってあるから全然覚えられない。

 私が働いた午後の時間は、ほぼ満席だったが、運ぶ前にいちいち席表を見なければ運べなかったし、どこのテーブルからの注文か分からなくなり、ミスを犯しまくってしまった。

◆クレーマーに怒られまくりの5時間

 そんな中、60代と思われる男性客が注文したアイスコーヒーとホットドッグを一緒に持っていったら「おい! 飲み物を先に持ってくるものだろうが!」と大きな声で怒られた。さらに40代ぐらいの男性からは「暑すぎる! 冷房強くして」と言われたり、「このアップルパイ美味しいのか?」などの質問が次々と飛んでくる。そのたびに店長に聞きに行かねばならない。

 またホットコーヒーとアイスコーヒーを同時に頼む男性客がいたので、いくらなんでも追加で頼めばいいのにと思い、大学生と思われる20歳くらいのバイトくんに「こんなことある?」と聞いたら、全く目を合わせず「ある」とだけ返された。タイミーはその日限りの仕事なので、通常勤務の方も交流をする必要がないと思っているんだろう。

 ほとんど小走りで5時間。疲れすぎておぼんを持っていた手と歩き回った足の筋肉痛が1週間ぐらい治らなかった。それが店長にもバレていたんだろう。レビューには「慣れない店舗での勤務大変だったと思います」と書かれてしまった。そして現在そのお店では、タイミーを使っていない。たぶん使えなかった私のせい……すいません。時給1162円×5時間。交通費500円で6310円。

◆ここは15回目!男性フリーランスタイミーさん

 カフェが大変だったが、また働きたい求人が出てきたので応募してしまった。市場での野菜を詰めるだけの人気のお仕事だ。勤務も朝9時からとそんなに早くない。大きな市場の中にあるお店で今日やる仕事は玉ねぎの袋詰め。北海道産と書かれビニール袋に小さめの玉ねぎ2つを一気に取って下に入れて、大きめの玉ねぎ1つを上にぴったり隙間なく入れる。これが意外に難しい。持参した軍手が大きすぎてうまく詰められなかったので、素手で詰めたら手先がガサガサになってしまった。

 ここでも40代の男性タイミーさんを発見。なんとこの市場のお店は15回目で「それならレギュラーバイトになった方がいいのでは?」と聞いたら、本業のデザインの仕事があるから、入りたい時だけ入りたい。なおかつ、ここは黙々と作業に没頭できるので気に入っているそうだ。逆に私はこんなに一生懸命詰めなくても、客が買いたい分だけ袋に詰めればいいのでは?と思ってしまい、途中からかなり面倒くさくなってきてしまった。

 他のバイトもしているというので、この近辺でもっといい仕事場ないか、色々聞きたかったのに、仕事が終わると速攻で帰っていってしまった。時給1165円×5時間、10分の休憩ありで4946円。

◆「本を売るなら」ユーズド店はいちばん楽しかった

 他にも「本を売るなら」のCMでお馴染みの中古品部門での子供服の値段付けをやった。500円、800円、1200円の値札をつけて、陳列する。

 この日タイミーで一緒になったのは、40代の既婚女性で、本業は美容師さんのパートだが、他の仕事をやってみたくてタイミーを始めたとのこと。タイミーは、派手なネイル禁止のお店も多いが、彼女は美容師だけあって、髪の毛とネイルはバッチリだった。2人で一緒におしゃべりしながら値付けをしていたら、あっという間に3時間が終了。かわいい子供服に触れてほっこりしながら仕事ができて、今までいちばん楽しかった。

 ここでは3つの発見があった。値札を間違えて付けてしまった時、手でちぎろうとしたら、全く切れない。普通の紙にしか見えない値札は切れないようにできていること。なぜかラルフローレンとTHE NORTH FACEだけは値段を高くすること。

 そして大きな声で挨拶するのが有名な店だが、古本部門じゃないからなのか「いらっしゃいませ」を強要されることが全くなかったことだ。逆にタイミーでやった高級スーパーの品出しでは「もっと大きな声でいらっしゃいませを言って」と注意を受けてしまった。時給1165円×3時間で3945円。

◆中高年でも挑戦しやすいバイトは?

 上記以外にも、タイミーのバイトを11回経験して実感するのは、本当にお金を稼ぎたかったら、スキマバイトではなく、普通のバイトに長時間入ったほうがいいってことだ。某スーパーでは、タイミーは最低時給の1163円だったが、店前のバイト募集では「1200円から」と書いてあった。もちろん昇給もない。1日1回しか応募ができない。しかし私は初めての場所で長時間はキツイので、収入度外視でなるべく短時間のバイトばかりを選んでいる。タイミーで11回働いて稼いだ金額は合計は4万2277円だった。

 そんな気楽さもあり、タイミーは本業がありながらスキマバイトをしている人がたくさんいることを知った。「20代が活躍中!」と書いてあるところは違和感を覚えることもあるだろうが、「初心者歓迎」の品出しなどは中高年でも挑戦しやすいはず。

 スキマバイトはタイミー以外にも「メルカリハロ」「LINEスキマニ」などのアプリもあるので、年末年始、休みのスキマで久しぶりのバイトをすれば、お金を稼げて、楽しいこともある!かもしれない。私は市場仕事の最後に玉ねぎをもらって、最高に嬉しかった。

<TEXT/谷亜ヒロコ>

【谷亜ヒロコ】

放送作家を経てフリーライター&作詞家として活動中。好きなテレビ番組は「ザ・ノンフィクション」、好きなラジオはTBSラジオ、得意料理は春巻き。得意領域はカルチャー、音楽、芸能、住宅、美容など。Twitter:@rokohiroko