昨今、社会問題化しているネットの誹謗中傷。被害を受けた側が書き込んだ人間の開示請求を行い、慰謝料を支払うケースも多くなった。高本陽一さん(仮名・30代)は、一家離散となった経験を持つが、その原因は極めて身近な人物の誹謗中傷だという。
◆ある日、突然妻宛に内容証明が…
高本さんは25歳のときに、20歳の妻・佑子さん(仮名)と結婚。1児をもうけ、幸せな日々を送っていたそう。
「19歳のときに知り合い、子どもができたことをきっかけに結婚しました。顔が好みだったことに加え、性格も明るくて真面目。こちらから告白して付き合ってもらいました。好きな人との間に子供も生まれ、つねに幸せを感じる日々でした。彼女は『仕事をしたくない』とのことで、専業主婦に。
そんなある日、突然弁護士事務所から妻宛に内容証明が送られてきました。読んでみると、妻がとある芸能人のSNSに誹謗中傷を繰り返し、慰謝料を請求すると書かれていました。『明るくて優しい妻がそんなことをするはずはない』と思いましたが、確かに妻の名前が記載されていました」
◆PCを調べてみると裏アカも発覚
内容証明を受けた高本さんは、仕方なく家のPCを調べたとのこと。すると、Twitter(現・X)の裏アカを発見したそう。
「誹謗中傷が本当なのか確かめるため、ブラウザの履歴を見たところ、怪しげなTwitterアカウントを発見。パスワードが自動入力になっていたのでログインすると、びっくり。芸能人に対する誹謗中傷に加えて、『うちの旦那は使えない』『モラハラ旦那に怒り心頭』『早く離婚したい』『私の青春を返せ』など、私への暴言も書かれていました。
証拠を揃えて妻に『どういうことなの』と質問すると、当初『私じゃない』とシラを切りました。しかし、裏アカで誹謗中傷をしている様子のスクリーンショットを見せると、急に、『そうじゃない、私は悪くない』『これは乗っ取り』と整合性の取れないことを繰り返して。それでも問い詰めていくと『あなたが私にかまってくれないから』『女として見てほしかった』と、私が悪いというような口ぶりになりました。
たしかに身体の関係もなかったですし、子どもができてからは『パパ、ママ』と呼び合う関係でした。しかし、愛はあったし、モラハラ的な言動をしたこともありません。仮にそういう事があっても、誹謗中傷をしていいということにはならない。ちなみに、私への悪口は、『普段言えないことを書いてスッキリしていた』と。妻の裏の顔に、開いた口が塞がらない思いでした」
◆「別れたくない」と言われてから3カ月に…
結局家族はどうなったのだろか?
「妻は1人だけではなく、不特定多数の有名人を誹謗中傷していました。結局、慰謝料を支払うことになり、私が手切れ金のつもりで支払いました。私が『別れる』『親権は自分が持つ』と切り出すと、号泣して『別れたくない』と。それなら『外で働いてくれ』と提案し、彼女はパートに出ることになりました。私も簡単には別れたくはないので、変わってくれることを期待して、様子を見ることにしました」
平穏な生活を取り戻したと思われた高本さんだが、結婚生活は思わぬ形で終わりを迎えた。
「パートに出て3カ月経ったある日、突然妻が『別れたい』と言ってきました。理由は『もう働きたくないから』と。親切心で『生活できるのか?』と問いただすと、『大丈夫』と言うんです。結局、離婚することになりました。1年後、相手の両親から『佑子が再婚した』と連絡が入りました。なんでも相手はパート先の店長で、略奪婚らしいんです。離婚して良かったなと思いましたよ」
有名人を口汚く罵るアカウントの正体が同じ屋根の下におり、なおかつ自分の悪口まで連なっていた……笑えないジョークのようにも思えるが、そうした裏アカを持つ人物は、あなたの周りにもきっと存在しているはず。せめて、自身がそうならないように心がけたいものだ。
<TEXT/佐藤俊治>
【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など