男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:交際3年、32歳の結婚願望強めの彼女にプロポーズをしたのに、男が振られたワケとは
どうして、この季節はこんなに人を悲しくさせるのだろうか。
六本木けやき坂の、幻想的で美しいブルーのイルミネーション。丸の内の温かく優しく灯る、オレンジ色のイルミネーション。そしてどこへ行っても、幸せそうなカップルばかり…。
そんな幸せそうなカップルを横目に、仕事終わりの私は下を向いてそそくさと家路を目指す。
「どうしてこうなったんだろう…」
本当だったら、今頃智樹と一緒にこの輝く光を見上げ、「綺麗だね」なんて言いながら、手を繋いで歩いている予定だった。
でも結局、私はひとりぼっち。
今年で31歳になる私。周りはみんなカップルで、結婚する友人も増えてきた。
外見だって悪くないから一定数にはモテるし、誘いも多い。
でも毎回、本命になれずに終わる。
一体、私の何が悪いのだろうか…。
Q1:初対面の時から男に見られていた女の特徴とは?
智樹と出会ったのは、女友達が開催してくれた食事会だった。この日は4対4という大人数だったけれど、智樹は最初から、私に狙いを定めていたらしい。
開始早々、私にばかり話しかけてきた。
「あゆみちゃん、可愛いね。仕事は何をしているの?」
「受付だよ」
「こんな可愛い子が受付にいたら、俺、通っちゃう!」
なんて軽いノリかと思ったけれど、暗い人より明るくて話しやすい人のほうがいい。そこからすっかり智樹のペースに巻き込まれ、気がつけば2軒目では、ずっと智樹の隣にいた。
「あゆみちゃん、今度デートしようよ」
「わかった。いいよ」
こうして連絡先を交換した1週間後。本当に、二人でデートをすることになる。
正直、期待はしていなかったけれども、智樹はレストラン選びのセンスも良かった。
目黒の人気店『リナシメント』の姉妹店で、麻布十番にある『GIFT』を予約してくれており、私の心は一気に高鳴る。
― あれ?この人、お店選びのセンスいいんだ…。
こうしてお店へ到着し、デートが始まった。しかも1対1のデートだと、大人数の時のようなチャラさがなく、そのギャップもまた良い。
「あゆみちゃんって、どんな企業の受付をしているの?」
「私はデベロッパーの会社の受付だよ。あのビル知ってる?」
私が勤めている会社が手がける商業施設名を出すと、智樹はとても驚いている。
「そうなの?すごい大手じゃん。良い会社だよね」
「ありがとう。私はただの受付だけど。智樹くんは?お仕事、何をしているの?」
「僕は自分で医療系の会社をやっていて。まだまだ小規模だけど」
「そうなんだ。すごいね」
“医療系の会社”がざっくり過ぎてわからないけれど、将来性もある。これは期待大だ。
シグネチャーでもある30品目の美しい前菜を食べながら、私は勝手に未来を想像してしまった。
「あゆみちゃんって、普段は何をしているの?本当に可愛いよね」
「本当に?ありがとう」
「今彼氏とかいるの?」
「もちろんいないよ!」
初デートで、彼氏の有無を聞いてくる…。これは相当、私に興味を持っていると思ってよいだろう。
「智樹くんは?」
「僕もいないよ。彼女募集中」
この会話の流れがきたら、もう後にくる言葉は決まっている。
大人になって、何度デートを繰り返してきただろう。数をこなせばこなすほど、必勝パターンは見えてくる。そして男性がどう出てくるか、次の一手までわかるようになる。
「え、本当にあゆみちゃん彼氏いないの?長い彼氏とかいそうだけど」
「本当にいないよ」
「俺、立候補しちゃおうかな」
「本当に?」
こんな会話を繰り返し、私たちはお店を後にした。そしてお酒も入りほろ酔いで、石畳の商店街を歩く。
「もう1軒行く?」
「うん、行く」
2軒目へ移動する際、さりげなく智樹が手を握ってきたので、私もそっと握り返す。
楽しくて、幸せな時間だった。
Q2:女が本命になれない理由は?
そこから、毎日連絡をくれた智樹。「おはよう」とか「おやすみ」とか。内容なんて、どうでもいい。こうやって、毎日連絡をくれることがとにかく嬉しい。
そしてすぐに二度目のデートもやってきた。
「今日も本当に可愛い」
待ち合わせ場所へ行くと、満面の笑顔で迎えてくれた智樹。その笑顔を見て、私の胸はキューっと締め付けられる。
― やばい。好きかも。
そう思いながら、私も笑顔を返す。そしてこの日のデートも、とにかく楽しかった。
最初はまた智樹が予約してくれた素敵なお店へ行き。そして2軒目は、西麻布にある会員制の高級バーで、ワイングラスを二人で傾ける。
「智樹くんって、センスまでいいんだね」
「そう言ってもらえると、嬉しい。あゆみちゃんを楽しませたくて」
「今日も本当に楽しいよ♡」
座っていたのがソファ席だったため、二人の距離はグッと近くなる。ワインが回っていたせいなのか、ソファのせいなのか…。
お互いの顔が近くなり、見つめ合った瞬間。気がついた時には、私たちはキスをしていた。
「やべ、まじで可愛いね」
「まだそんなこと言っているの?でも嬉しい、ありがとう」
気分が高揚するとは、まさにこういうことを言うと思う。私も智樹もかなり盛り上がっており、もうこれは「付き合う」確定だと思っていた。
熱い思いを抱えたまま外に出ると、一気に冷たい風が吹いてきて、現実に引き戻されそうになった。
でも私はまだふわふわとしており、体は火照っている。それは智樹も同じだったようで、私の手を引きながらもちろん、お決まりのセリフを言ってきた。
「もう帰っちゃう…?良ければ、この後うちに来ない?」
もちろん、行きたい気持ちはある。まだ、一緒にいたい。お互いの気持ちも確認済みだし、離れたくない。
でもここでホイホイと家へ行ったら、ただの軽い女とみられるだろう。
― ここは我慢、我慢…。
そう自分に言い聞かせ、私は断腸の思いで、笑顔で首を横に振る。
「まだ一緒にいたいけど…。今日は帰ろうかな」
「帰っちゃう?」
「うん、ごめんね。でもまたすぐに」
「わかった。またすぐにね」
こうして、それぞれのタクシーに乗り込んだ。「次はいつかな」と楽しみにしながら…。
しかしここから、予想外のことが起こる。
それから何度か智樹から連絡が来たものの、待てど暮らせど、次のデートがやってこない。
― 待って。あんなに盛り上がっていたよね?
体を許してしまったとかならば、まだわかる。でも許してもいないし、良い感じのところで終わっているはず。
それなのに、どうして彼は追いかけてこないのだろうか…?
▶前回:交際3年、32歳の結婚願望強めの彼女にプロポーズをしたのに、男が振られたワケとは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:12月8日 日曜更新予定
男が本命に見てくれない理由は…